許せない過去①
中学校バスケットボール北海道大会。
「胆振二位・城西中学校!」
何度も頭の中に流れるアナウンス。勝つと誓ったはずなのに。
手のひらにあった勝利は自分ではなく相手の元へ
何度も何度も思い出してしまう自分たちの最後の試合。
「城西中と和洋中の試合を始めます。礼!」
その一言で始まった、自分たちのすべてをかけたものが。
さまざまなシーンが頭をよぎる。味方は全員完璧のコンディションだった。
なのに、なのに!
・・・ライバル校は先に試合を終えていた。勝ったらしい。
三年間、ずっと対決してたやつが俺にむかって「まってる」と小言で近くを通ったときに話してきた。
そのとき、点差は二十三点で自分たちが勝っていた。残り時間3クォーターの半分と4クォーターのみ。
『逆転は不可能』この試合を見ていた人が思ったことだろう。
監督も一安心で俺と他のメンバーを交代させた。でも、それがミスだった。
そいつは出場してすぐミスを犯し流れが崩れた。バスケの試合でもっとも重要な流れが変わった。
すぐに俺がフィールドに戻り、流れを変えようとした・・・でも
相手は予選一位通過の学校。流れを変えさせるミスを犯さなかった。
徐々に徐々に点差はつまり、ついに逆転。しかし、残り五秒で相手がファウルトラブルをおこし
こちらのフリースロー。点差は二点、二本決めればおそらく延長戦だがそんな体力はチームに残っていなかった。
スタメンの体力は底をつき、ベンチメンバーには相手に対抗できるメンバーはいなかった。
しかし監督の指示は延長。正直予想外だった。だから俺は・・・フリースローを打つやつに静かに告げた。
「二本目を外せ。一本目は必ず入れろ。二本目は俺とアイツのどっちが必ずリバウンドをとって決める。」
「監督の指示は?」「無視だ。延長ならどっちみち負ける。なら俺らのリバウンドに賭けるべきだ。」
「・・・わかった。」
この試合のリバウンド率はマネージャーのスコアでさっき確認したが、相手が三割。こっちは七割と完璧だ。
どの試合でもそうだった。うちのチームはリバウンドで負けたことがない。
うちは平均身長が小さいチームで、最長175だ。さらにそいつはベンチ。スタメンのセンターである俺は
170にもみたない。それでも、3年間で身に着けたリバウンドやボックスアウトのかけ方は
どのチームのリバウンダーよりも上だ。それは、自他ともに認めていたくらいだ。
一本目が決まった。なめらかなシュートで、シューターの緊張が見えない。
全員が祈った。シュートが入ることを。祈らないのはフィールドメンバーのみ。
入ることのないシュートではなく信じるのは己のリバウンドのみ。
目を閉じた。何千と見た味方のシュートの弾道は理解している。
『シュッ』1、2、3。相手を押さえつけ思いっきり飛び上がる。
「リバウンド!!!!」今までにない跳躍だった。しかし、手のひらにあった
勝利というボールは取ったはずの俺の手からすべり落ちていった。汗だった。
「ピーーーーーーーー!!!試合終了」
「和洋中の勝ち。礼!」
拍手喝采。相手は優勝した時のごとく喜んでいる。
こっちはベンチメンバーはスタメンに声をかけられずにいるし
キャプテンは泣いている。ほかのやつらも何人か涙が見える。
なにも感じていないものなどいない。いつもチャラついてるやつだって、動揺を隠せない。
「最後の試合になっちまったな。」
誰も、俺のことを責めない。むしろよくやったという顔をしている。
それでも、俺は自分のことが許せなかった。