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生徒会と愉快な仲間たち  作者:
余興その3
25/44

テストの解き方:生徒会編

20話いったので、ここでいったん余興…みたいなもの。

今回はタイトル通り、学生ならば必ずぶち当たる宿命ともいうべき行事・テストをテーマにした小話です。

 中間テスト初日、生徒会三人が所属するクラスにて。

「それでは、始めてください」

 チャイムが鳴ったのを確認した教師が号令を発すれば、生徒たちがそれぞれ裏面になったテスト用紙を裏返す。直後、カリカリ、というシャーペンの音がそれぞれの机からいくつも響いた。


 ――さて。

 ここで生徒会に所属する三人それぞれの、テストの解き方を覗いてみましょう。


<中村鈴奈の場合>

 パラリ、と裏面になったテスト用紙を裏返した鈴奈は、何枚か存在する用紙にざっと目を通す。その時間、およそ十秒。

 それから机に置かれたシャーペンを手に取ると、まず名前を書きこんだ。時間にして、およそ五秒。

「……このあたりかな」

 自分にしか聞こえないくらいの声で低く呟くと、鈴奈はカリカリとシャーペンを動かした。比較的簡単な個別問題を、淡々と埋めていく。

 ペラリ。

 手を止めることなく、短時間で一枚目をほとんど埋め終えると、捲って隅に置いた。二枚目は六割から七割程度書き込み、再び隅に置く。

 三枚目以降は応用問題が多いらしく、ほとんど埋めることなく捲り、隅に置いてしまった。

 ここまでの時間、およそ十五分。

 ひと通りテスト用紙を網羅すると、鈴奈はためらいなくシャーペンを置いた。全てをまとめて二つ折りにし、机の隅へと置く。

 そして、その上に筆記用具を乗せ――そのまま、机に突っ伏した。


<藤山暖香の場合>

 パラリ、と裏面になったテスト用紙を裏返し、まず暖香はすべての問題にざっと目を通した。ここまでは、鈴奈と同じだ。

 それから机に置かれたシャーペンを片手に持ち、綺麗な字でサッと名前を書き込み……パラパラと何枚か用紙を捲ると、後ろの方にある難しそうな応用問題から解き始めた。

 時間のかかりそうな難しい問題――今回は、三問ほどあった――を二十分ほどかけて先に解いてしまうと、次に十分ほどかけてそこそこ時間のかかる中級問題を解く。なかなか手ごたえがあるようで、彼女の表情は終始緩みっぱなしだ。

 その後、余った時間を利用して、先ほど後回しにした簡単な個別問題の答えをよどみなく書き込んでいった。ふんふん、という小さな鼻歌が漏れているが、もしかしたら無意識なのかもしれない。


 途中で質問受け付けにやってきた教師をとっ捕まえ、厳しい問答でたじたじさせたりしながらも、時間いっぱい使って、暖香はテスト用紙のすべての空欄を完璧に埋める。

 チャイムが鳴るほんの少し前にシャーペンを置いた彼女は、心の底から満足げな表情をした。


<早川杏里の場合>

 パラリ、と裏面になったテスト用紙を裏返し、杏里は早速シャーペンを手に取った。名前を書き込み、一問めから順番に解く。

 途中まではスラスラと解いていたのだが、中盤あたりで分からない問題にあたったらしく、途端に手を止め首を傾げた。

「んー……」

 小さな唸り声を上げること、およそ一分。「いいや」と呟いて、その下の問題文へと目をやった。どうやら飛ばして、次の問題へ行くらしい。

 そんなことを幾度か繰り返した杏里は、三十五分ほどで最後の問題まで到達した。この時点で、すでに半分以上は埋まっている。

 テスト時間は五十分なので、残り十五分時間が余っている。その時間を利用して、杏里はこれまで解いた問題をしっかり見直した。

「……よし、こんなもんかな」

 時計を見ると、残り十分。

 何枚かテスト用紙を捲ると、杏里は先ほど飛ばした問題へと意識を戻した。どうやら、もう一度考えてみるらしい。

「あ、なるほど。ここはこうなるから、こうやって……」

 周りの邪魔にならない程度の声でぶつぶつと独り言を漏らしながら、杏里は時間をかけて難問を少しずつ解いていく。時折不満そうに顔をしかめるものの、疑問が解決した時はとたんに花開くような笑顔になる。

 そうやって時間ぎりぎりまで、彼女はテスト問題と真面目に向き合っていた。「お昼何食べようかな」と、頭の隅っこで考えながら。


    ◆◆◆


「鈴奈ー、暖香ー。こないだの中間さぁ、結果どうだった?」

「んー? いつも通りだよ」

「私も、いつも通りね」

「見して見して。……すごーい、暖香ってば今回も学年一位じゃん!」

「当然でしょ」

「杏里はどうだったの?」

「あたし? あたしは……見て見て。前回より結構上がったの!」

「ホントだ。頑張ったじゃん」

「生徒会室で勉強会した甲斐があったわね」

「うんっ。ありがとね、二人とも!」

「どーいたしまして」

「ほとんど私が教えたようなもんじゃない……鈴奈は寝そべったまま、たまに口挟んでくるだけで」

「まぁまぁ、気にしなーい」

「まったく……あら。杏里、家庭科はやっぱり一位なのね」

「今回の範囲は、特に食がメインだったからね。さすが杏里」

「へへんっ」

「鈴奈は……」

「……すごい、オン・ザ平均」

「留年しなきゃいいんだよ」

「……」

「暖香、超不機嫌そうな顔だね」

「……当たり前でしょ。あんた、テスト時間はほとんど寝て過ごしてるような子なのに」

「確かにねぇ。開始十五分くらいしかペン動かしてないのに、よく平均点取れるよね」

「しかも、書いてるとこは全部合ってるときた」

「テスト勉強してるの?」

「してないよ。授業聞いてれば十分じゃん」

「ほとんど寝てるくせに」

「睡眠学習だよ」

「……」

「暖香、顔怖い」

「……いたっ! 暖香、何で叩くのよぉ」

「気に食わないのっ」

「そんなこと言われても、知らないよ……」

「まぁまぁ、二人とも。それより、さっきコンビニに買い出し行ってきたんだ。食べよ?」

「中間テストお疲れ記念だね」

「暖香の好きなクッキーも買ってきたから、ね?」

「……まったく、しょうがないわね。今日のところは杏里に免じて許してあげるわ」

「うーん、何か釈然としない……まぁ、いいか」

「へへっ。そうと決まれば、早速机に広げちゃおう!」

「暖香ぁ、お茶淹れて。わたしミルクティーね」

「あたしココア!」

「はいはい」

ここで言う平均とは、とりあえずおよそ60点くらいのことだと思ってください。

一応生徒会メンバーは全員、それなりの頭脳を持ってるという設定で…順位で言うと暖香>杏里≧鈴奈、本当のところは鈴奈>暖香>杏里ってところでしょうか。


暖香は全教科をそつなくこなす完璧主義者。杏里は全体的には平均かそれ以上だけど、家庭科のみ好成績。

鈴奈はおそらく初めに難易度をざっとチェックして、その時点で平均はこれくらいかなとある程度計算してからテストを解き始めてるのではないかと思われます…。


新聞部メンバーのテストの解き方についても、そのうち書いてみようかなと思います。

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