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異世界召還のリスク  作者: ボナパルト
第一章 異世界と勇者
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04 情報のリスク その1

新キャラが登場します。

R-15、残酷な描写等はまだ発生しません。もう少しお待ち下さい。


お気に入り登録をして下さった方がいたようです。

本当にありがとうございます。とても励みになります。

頑張って続けたいとおもいます。

 自ら扉を開けてマイヤを歓待する姿勢を見せる。

 ネフルティスの服は変わっていないが、マイヤの衣装は見事なドレスになっていた。


 基本の色は鮮やかな青。その上から透き通る白地のケープを纏い、金に宝石を散りばめたカチューシャを付けていた。

 今は昼過ぎというあたりだが、話が長くなることを踏まえた上で、夕陽の強さにも負けない美しさになっている。


 ネフルティスは、美しい第二王女を部屋に招き入れテーブルまで案内する。


『お待ちしていました。どうぞ』


 ありがとうございます、と礼を言いながらネフルティスのエスコートを受けるマイヤ。

 椅子に腰掛け、ネフルティスが席に付くなり口を開いた。


「早速お話をさせていただきたいのですが、構いませんでしょうか?」

『もちろんです。ですがその前に、そちらのお二人のことは伺ってもよろしいですか?』


 ネフルティスがマイヤの後ろに目を向けた。

 そこには背筋をぴしゃりと伸ばし、執事服を見事に着こなした老紳士と、ローブに身を包み眉をひそめ顰め面をしている巨漢の老人が居た。

 老人の方は、頭の周囲を旋回するように菱形の結晶が三つほど浮いている。それぞれ色が違う。恐らくは魔道具なのだろう。


「こちらは執事長のブルーメ」


 スッと頭を下げ完璧な礼を見せる執事。本来ならばテーブルの椅子を引いてマイヤを腰掛けさせるのだろうが、今回はネフルティスがエスコートしているため影に徹していた。

 

「お初にお目にかかります勇者様。御用がございましたら、いつでもお呼び立てください」

『こちらこそよろしくお願いします。執事長直々とはありがたい』


 名前を呼ばず“勇者”と呼んだこと、執事長という立場の人間が直接世話に当たるというのは、最高級のもてなしであると同時に、最上級の警戒を抱かれているとネフルティスは受け取った。

 以降は、一挙手一投足に気を抜けないと思うと、少しだけ楽しくなってきた。


「こちらは宮廷魔術師の第一位、オルドール・ヴァン・ドレイク様です。オルドール様は竜人で、今回は賢者として私の理解が至らないところのフォローをお願いしています」

「初めましてじゃ若いの。儂のことは、オルドでいい」


 礼は無い。そのローブに包まれた体躯には力強さが溢れており、睨みつけるような鋭い視線の元は、縦に裂け金色に輝いていた。

 ドカッと腰掛ける椅子からは僅かに軋む音が漏れた。


『よろしくお願いします。オルド翁。この世界の基礎も知らぬ粗忽者ゆえ、常識外れのことも尋ねるかもしれません。お手柔らかに』

「まあ、それはしょうがないじゃろう」


 オルドの威圧的な視線を、するりと受け流したネフルティス。

 するとオルドから威圧感が薄れ、瞳の色も輝きを淡いものへと変化していった。口元に少し笑みが浮かんでいる。


「もう、オルドール様」

「いやぁ、スマンスマン。まあ許されよ」

『マイヤ殿。そうお気になさらず』

「……ネフルティス様がそう仰るならいいのですけれど」


 困ったような笑顔で返すネフルティスに、マイヤは不満を飲み込む。


「若いの。話がわかるではないか。助かったわ。また髭を引っ張られては敵わんからな」

「いったい幾つの頃の話をしているのですか!?」

『このように大きな方を屈服させるとは。素晴らしい女傑ですねマイヤ殿は』

「ネフルティス様までっ!?」


 歓迎の意味を込めて、会釈を一度。


『是非お近づきになりたいものですね』

「ほほう。マイヤ嬢の情報は高いぞ?」

『それは困りました。手持ちがありません』


「勝手に売らないでくださいっ」


「まあ、それはそれ。代価物などいくらでもあろうさ」

『双方にとって価値あるものならいいのですけれど』


「何、ダメだったらその時はその時。貸付で構わんよ」

『そうですか。その時は遠慮なくお借りしましょう』


 二人共いい加減にしてください! とマイヤから雷が落ちたところで話は一段落。

 マイヤを挟んではいるが、すでに交渉は開始していた。

 マイヤの部分を“価値ある情報”と置き換えれば、それは浮かび上がる。

 オルドの威圧は開始を意味し、敵意から身を逸らすことで対話を望む。

 満足したオルドは、髭へのいたずらという自らの恥部を明かすことで威圧の代価とした。

 ネフルティスはそれに応じ、本格的な交渉に入る用意がある旨を告げる。

 “価値ある情報”には代価を期待するとオルドが踏み込み、共有価値になるかわからないと予防線を張る。

 更に一歩踏み込んで貸付でよい、と言質を与え、どうやら気に入られたようだと応じるネフルティス。

 

 始めたオルド、応じたネフルティス、見守ったブルーメ。

 男達は全員が全員、厄介な相手だと共通の認識をすると同時に、頼り甲斐のある面白い相手だ、とも思っていた。




   †   †




 テーブルの上には、ゆっくりと湯気を上げるお茶が三つ。

 まずはマイヤが手に取り香りを楽しむ。微笑んでネフルティスに一つ頷き、彼もそれに習う。

 その香りの芳醇さに、今日一番の驚きを露わにするネフルティス。

 同時に飲み始め、感嘆の吐息を漏らす。

 オルドは、一気に煽っていた。


『これは素晴らしいお茶ですね。今日一番の驚きだったかもしれません』

「まあ。召喚されたことよりも驚かれたのですか?」

『召喚には確かに驚かされましたが、好奇心のようなものもありましたから。このお茶ほどの驚きではありませんよ』


「肝は座っているようだな」


 うんうんとオルドが満足気に頷いている。


「茶葉がいいだけではありませんのよ。ブルーメだからこそここまで美味しく淹れられるのです」

『なるほど。これは真似できませんね』


 ブルーメの方へネフルティスが視線を送ると、黙って一礼。だがそこには心なしか誇らしさが漂っている。


 二杯、お替りをしたところで、ネフルティスが口火を開く。


『さて、まずお聞きしたいのは召喚についてです。何の目的で、どうやって、どうして私なのか。分からないことだらけなもので』


「それは――」

「その前に若いの。ルールを決めておかんかね?」


『ルール、ですか?』


 マイヤが応じ答えようとしたところを、オルドが遮って続ける。

 尋ねる相手を限定していなかったので、貸しにもならない。マイヤは少々不機嫌そうな顔になっているが。


「そうじゃ。前提情報はもちろん出す。その後は互いに一つずつ順番を入れ替えて相手に話を聞く。時間はそうじゃな。夕食まで。まだ若いのがどういった人間かもわからんから晩餐会や歓迎会は用意できぬ。これは許されよ」


『そうですね。今日だけがお話の場という訳でも無いでしょうし。早速無知を晒して恥ずかしいのですが、私はこちらの夕食の時間を知りません。陽がしっかり落ちるまで、ではどうでしょうか?』


「ああ、それで構わん。マイヤ嬢もそれでよろしいか?」

「あ、はい。日が落ちましたらドレスを替えなければなりませんので、私としてもその時間が限界ですね」


「決まりじゃな」

『ではよろしくお願いします』


「では――」


 マイヤが語る召喚の情報に、ネフルティスは好悪の感情を同時に抱くのであった。

話の展開が遅くてすみません。

次は設定説明回になると思います。


6月23日 一部修正、一部加筆

7月01日 誤字修正

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