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8.時計台のベル

 西階段で3階に登ると、3階から時計台に上がる梯子がある。

「梯子…ジムが先に昇ってよ」

「ベティが先に昇れ。大人達が来たら俺が足で蹴っ飛ばすから、俺が下の方が良い」

「私、スカート履いてるんだよ?」

「暗くて見えない。見せたくない物を無理に見たりしない。俺だって紳士だ」

「ジョンブルだもんね。信じるよ。じゃあ、先に行くから」

「慌てて落ちるなよ?支えてやるけど」

「そんなにあわてんぼうじゃないよ」


 梯子を上ると、時計台の中のベルがぶら下がっている空間に辿り着いた。少し狭いが、子供なら二人が立つ空間はある。

「これ、今は動かないんだよね?」

「昔は機械式の時計が上にあってベルを叩いてたらしいけど、古くなって電気式の時計になってるから、もうベルを叩くものはないぞ」

「今回は何で叩くの?」

「だから、木槌を持ち込んでい良いって言ったろ?こいつで叩くんだ」


 ジムは背負ったザックを下して、木槌を取り出した。

「ほら、これで叩け」

「良いよ、ジムが叩いて」

「良いからやれよ。俺が誘ったんだから、ベルくらい叩かせてやるさ」

ジムは昔からこういうところがある。頼んでもいない事をしてくれるんだ…でも、今回は久しぶりに二人でいられて楽しかった。じゃあ、お望み通りに叩いてやるか。


 ジムから木槌を受け取って、ベルを叩いてみた。

「こ~ん」

小さな音が鳴った。

「もっと強く叩けよ!校庭の端まで届くくらい!」

「は~い」

私はかなり強めに2回叩いた。

「ご~ん、ご~ん」

やはり微妙な音が鳴った。


 ジムはイラッとしたらしい。

「貸してみろ!」

ジムは木槌を奪って、思いっきり強く叩いた。

「ゴ~ン」


 その音を聞いて、実はすでに屋根から垂らしてあったロープを伝って若い男が登って来た。このイベントの立会人は消防局の若者が担当すると決まっていたんだ。

「おめでとう、今年の偉業を達成したのは二人かな?放送するから名前を聞かせてくれ」

それにジムが答えた。

「ありがとう。エリザベス・カーターとジミー・クラークです」

消防士はスマホを取り出し、連絡した。


 校内放送の開始を告げる電子音が鳴り、アナウンスが続いた。

「今年のイベントを終了します。今年のBell Ringerはエリザベス・カーターとジミー・クラークです」

校内のそこら中から拍手や歓声が聞こえた。一方、校庭からは悔しがる声や悲鳴も上がった。


 階段を下りて正面玄関を出た二人を、大人も子供も拍手で迎えてくれた。サムもアルもエドも悔しそうな顔をしながらハイタッチをしてくれた。正面玄関の両側に生えている木は電飾で飾られ、チカチカ輝いていた。

「電飾なんてあるんだ?初めて見たよ」

「23日から25日の夕方だけ点けるんだと。クリスマス休暇中の夕方に学校に来る奴なんていないから、このイベントに参加しない奴は見ないだろうな」


 両家の父親がやって来ていて、二人は親に連れられて家に帰った。


 実はこのイベントは、6年生の親全員の連名で学校の使用許可を得ている行事だった。6年生にもなると、子供は『サンタの正体を見極めてやる』と24日の晩には夜更かしをしがちだ。だから、その前日に夜更かしをさせて、イブ当日の晩にはぐっすり寝かせてやろうと言う意図で行われていた。


 つまり、もう1年ぐらいは夢見る子供でいて欲しい、そんな親の気持ちから行われているイベントだった。

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