仮面が外れる夜
妖怪も幽霊も、怪人も宇宙人も、
今日は堂々とこの世界を歩ける。
普段は見つかれば悲鳴が上がり、
お祓いを受け、肩身の狭い思いをする。
けれどハロウィンだけは違う。
人々は仮面をつけ、笑い、褒める。
狼男が歩けば「いい毛並みだね」と言われ、
吸血鬼には「かっこいい牙だね」と歓声が向く。
地縛霊もエイリアングレイも、みんなべた褒めされる。最高の気分だ。
人間と肩を組み、子供たちの歓声に心が踊る。
毎日がこんなに楽しかったらいいのに。
人間たちには知ってほしい。
我々は怖がらせるつもりなど一切ないことを。
人間は差異を見つければ恐れ、排除しようとする。
だがそれは防衛本能が未知を拒むだけのこと。
なぜハロウィンの日だけはその本能が緩むのか、
我々は長年研究してきた。
三匹の妖が路地で小声で議論した。
ある者は「衣装のせいだ」と言い、
別の者は「仮面こそが安心材料だ」と反論する。
吸血鬼は居心地の良さに笑い、
地縛霊は子供の手に触れられて頰が熱くなっている。
結論を出す寸前、月明かりの下で子供が大声で笑った。
その笑いがあまりに純粋で、我々の問いはふっと軽くなった。
「今年こそは秘密を解き明かす!」と誰かが言った。
だが答えを求める熱意は、祭りの楽しさに溶けていく。
だって、こんなに楽しくて、とっても嬉しいのだから。私は頭の刺さったネジを少しだけゆるめた。
来年こそは解明しよう。
たぶん、また忘れてしまうだろうけれど。




