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希望の光、未完のメッセージ

# 朝の丘、手がかりと決意


早朝の丘は静かだった。風が草をなで、虫の声が穏やかに響く。私は草むらに座り、小石を手で転がしながら、頭の中を埋め尽くしていた疑問を一つずつ整理していく。

1年前、ルークがこの村に来ていたという事実。そして今、私がここにいるこの時間。

「ルークはなぜ1年前にここに来たんだろう?まさか私だけが遅れてこの世界に来たの?それとも、この異世界の時間自体が現実と違う流れなのかな?」

不安と期待、そして漠然とした恐れが心をよぎる。

私はしばらく目を閉じて深呼吸した。

「今の私にできるのは、焦らずに手がかりを集めて、ルークやアルカの仲間たちの痕跡をたどることだけ。」

私にできることは単純だった。焦らず、異世界の時間と現実の時間、そのどこかに残っているかもしれない仲間たちの痕跡を一つずつ探していくこと。

もしかしたら、すでにこのどこかに、あるいは全く違う時間軸に、私たちみんなが散らばっているのかもしれない。

私は静かに決意を固めた。

「諦めないで。この場所で私にできること、私がやるべきことを一つずつやっていこう。いつか必ず、アルカのメンバーたちにまた会えるはず。」

丘の上から見下ろす村は昨日と変わらぬ平和な風景だった。でも、私の心には昨日とは違う覚悟が芽生えていた。

私はゆっくり立ち上がり、丘を下り始めた。

今日も手がかりを探して一歩ずつ進もう。

まだ全てのピースは揃っていないけれど、

かすかでも「希望の光」が私の前を照らしていると信じて。


# リトとの会話、ルークの痕跡


村へ向かう丘道、早朝の空気の中で私はリトを見つけた。

「リト、ちょっと待って」

私の声にリトが驚いたように振り返った。

「お姉ちゃん、おはよう!」

私は少し呼吸を整えて、慎重に本題を切り出した。

「リト、1年前くらいにこの村に来ていたよそ者のこと、聞いたことある?背が高くて、髪が暗くて、ちょっと静かな人だったと思うんだけど。」

リトはしばらく考えて首をかしげた。

「うーん…1年前のお祭りの時、そんな人が一人いた気がする。村に少しだけいたけど、あまり話さないで一人で行動してた。名前はよく覚えてないけど…」

私の心臓が静かに高鳴った。

「その人、ルークって名前じゃなかった?それか、村の人たちが何か言ってたのを覚えてる?」

リトは記憶をたどるように目を細めた。

「名前は分からないな。お祭りが終わったらすぐにいなくなったし、村の人ともほとんど話してなかったよ。」

リトは私の顔をじっと見つめて、ふと。

「今思えば、なんだかお姉ちゃんに似てる気がする。理由は分からないけど、なんとなく。」

私は軽く息を吐いた。

「そう…ありがとう、リト。覚えててくれただけでも大きな助けだよ。」

リトは明るく笑って言った。

「その人、お姉ちゃんが探してる人なの?」

私は静かにうなずいた。

「うん、とても大切な友達なんだ。もしその人のことを思い出したら、必ず教えてね。」

リトは両手をぎゅっと握りしめて言った。

「分かった!村の人にももう一度聞いてみるよ。お姉ちゃんが探してる人なら、僕も絶対に手伝いたい!」

私はその純粋な決意に心が温かくなった。

リトを見つめながら、この子がどれほど優しくて頼りになる存在か、改めて感じた。

この見知らぬ世界で一人だと思っていた私に、リトの真っ直ぐな応援と約束は何よりも大きな力になっていた。

「本当にありがとう、リト。君がそばにいてくれるから、私はもう一度勇気を出せる。」


# 図書館、記録の絵と異世界の繋がり


ルナはリトの案内で村の小さな図書館に入った。お祭りの余韻がまだ村に残っていたが、朝の図書館は静かだった。窓から差し込む陽射しが、埃をかぶった記録帳の上に柔らかく降り注いでいた。

エミリオは机に座り、分厚い書類を広げていた。私の足音に顔を上げた彼は、少し驚いたように微笑んだ。

「こんな朝早くにどうしたんですか、ルナさん?」

私は少し迷いながらも慎重に切り出した。

「実は…気になることがあって。エミリオさん、1年前にこの村に来ていたよそ者のことを知っていますか?背が高くて、髪が暗くて、少し静かな人だったかもしれません。ルークという名前だったかも…」

エミリオはしばらく考えてから首を振った。

「すみません。私は去年のお祭りが終わった後にこの村に来たので、1年前のことは記録でしか知りません。直接見たことはないんです。」

私は残念そうにうなずいた。

「エミリオさん、ところで…前回の実験の時みたいに、今も能力が強くなった感じは残っていますか?」

エミリオは少し考えてから首を振った。

「いえ、今は全くありません。その時は確かに普段より力が強くなった気がしましたが…一日経ったら元に戻りました。一時的なバフみたいな現象だったと思います。」

ルナはうなずき、リトにも同じ質問をした。

「リト、君もあの時みたいに特別な力が残っていたり、体が違う感じはしない?」

リトは胸に手を当てて答えた。

「うん、今はいつも通りだよ。あの日のステージだけ、胸がドキドキして力が湧いてくる感じがしたけど、今は前と同じ。」

短い会話の中で、ルナはあの時の特別な力が一時的な現象だったことを確認した。

「ところで、エミリオさんは何をしていたんですか?」

エミリオは手に持っていた書類を軽く掲げた。

「今日は村のお祭りに関する記録を整理していたんです。昔の祭事や特別な瞬間をまとめる作業ですね。村に来てからこうした記録を任されているんです。これらの記録はすべて中央に報告されます。」

私は彼の答えを聞きながら、なんとなくエミリオが広げていたページを見つめた。

その瞬間、私の視線は一枚の絵に留まった。

絵の中には、ステージに立つ五人の男性がいた。

彼らはそれぞれ違う方向を見つめ、きびきびと腕を伸ばし、一人はステージ中央で手を高く掲げていた。

その構図、動き、人物の配置…

あまりにも見覚えがあった。私は息を止めて絵をじっと見つめた。

指先が痺れるような感覚、古い紙から微かに震えるエネルギーが伝わってくるようだった。

「これは…アルカの振り付け、その場面だ。」

異世界に来る直前まで、私は何度も練習室でこの場面を見ていた。

アルカのメンバーたちがステージで見せるシグネチャーポーズ、その動きと完全に一致する瞬間だった。

絵の中の人物の顔や髪型、衣装は確かにこの世界の人々だった。

でも、彼らが作り出すステージの雰囲気、動きの角度、視線の交差まで…

現実で私が何度も見守ってきたアルカの公演の一場面と全く同じだった。

私はすぐにエミリオに尋ねた。

「エミリオさん、この絵…何か意味があるんですか?この動き、この構図…すごく特別に見えて。」

エミリオはもう一度絵を見て首をかしげた。

「実は私もよく分かりません。古い記録の中で一番目立つ場面なので、特別に保管しているんです。

この絵を見ていると、不思議と胸が高鳴って、何かエネルギーを感じる気がします。

村の年配の方々の中にもこの絵を特別視する人がいますが、正確な意味を知っている人はいません。」

私は再び絵を見つめた。

外見も服装も違うけれど、この五人の男性が作り出すステージの瞬間は

確かに私が現実世界で何度も見てきたアルカの公演、その一場面と重なっていた。

その瞬間、頭の中に短い回想がよぎった。

ステージ裏から見ていたアルカのメンバーたちの姿。

レオンがステージ中央で手を挙げた瞬間、ミンの明るい笑顔、エイデンの真剣な表情、ジェイの反抗的な眼差し、そしてルークの静かな瞳。

みんながそれぞれの位置で輝いていたあの場面が、今この絵とぴったり重なった。

「アルカ…みんな、この世界のどこかに本当に来ているのかな?それとも、このステージの記憶がここにも残っているのかな?」

気づけば、私は自然と顔が明るくなっていた。

その様子を見たエミリオが慎重に尋ねた。

「ルナさん、この絵が何か特別に感じられますか?表情が…何か期待に満ちているようで。」

リトも目を輝かせて尋ねた。

「お姉ちゃん、何かいいアイデアでも浮かんだ?なんだか急に嬉しそうに見える!」

私は二人を交互に見て微笑んだ。

「うん、なんだか…本当に大事な手がかりを見つけた気がする。うまく説明できないけど、この絵は私にとってすごく意味があるんだ。」

記録の調査と儀式の発見、そして異世界と現実をつなぐ不思議な接点。

私はますますこの場所の秘密に近づいていると感じた。

そして、もしかしたらこの手がかりがルークやアルカのメンバーの痕跡を探す決定的な鍵になるかもしれないという希望が心に芽生えた。

その時、誰かが窓の外からこちらをこっそり見ているような微妙な気配を感じた。

私は無意識に窓の外を見たが、何もなかった。

「気のせい…かな?」

リトとエミリオは何も感じていない様子だった。

混乱と不安、好奇心と期待が入り混じった感情の嵐が胸の中で渦巻いていた。




こんにちは、ルナの旅路を共に歩んでくださる読者の皆さま!


本日は第4話「希望の光、未完のメッセージ」を公開し、このようにあとがきを残します。


今回のお話では、ルナが異世界で本格的な“手がかり探し”に動き出す姿を描きました。


1年前この村を訪れていたルークの痕跡、そして彼やアルカのメンバーたちの行方に繋がる糸口が少しずつ明らかになり始めました。


村の静かな朝、丘の上で決意を新たにするルナの心情。


そしてリトとの会話から伝わる温かさと寂しさ。


図書館で見つけた“異世界版アルカ”の絵と、未完のメッセージまで――


いよいよ「異世界と現実がどう繋がっているのか?」というミステリーが本格的に動き出した気がします。


今回の執筆中は、「現実と異世界、そして音楽と人の心はどう響き合うのか?」「馴染みあるものと未知のもの、その間で私たちが掴むべき希望とは?」といった問いがずっと頭を離れませんでした。


特にルナとリトの会話、そして図書館でアルカの振付とそっくりな古代の絵を見つけるシーンは、書きながら私自身も胸が高鳴る瞬間でした。


これからもこうした「現実と異世界の交差点」で小さな伏線やサプライズ、そして温かな感情の流れを積み重ねていくことになると思います。


今回の話を読んで、「ああ、いよいよ大きな流れが始まるんだな」「ルナはもうひとりじゃないんだな」と感じていただけたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。


皆さまのコメントやおすすめが大きな励みになります。次回もまたお会いしましょう!

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