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ヴィーナスに抱きしめられて(後編)





「軍令部より先発部隊へ指示」

「ランドミール隊、正面02の方向、斜面岩肌に強い菌糸反応を確認」

「イアン1等兵は、これを正面に捉えて前進」

「ラミー伍長、ダリル1等兵は、2マンセルにてバックアップ」

「ジャックス上等兵は、エダ1等兵、フロスティ1等兵を指揮し、左側面よりこれを迎撃」

「後続隊は散開、接敵に備えよ」


「射撃用意ッ」


 ド クッゥ ド クッゥ ド クッゥ ド クッゥ ド クッゥ

 外音マイクがオレの心音を拾ってヘルメット内で鼓動する

 トリガーを引く、トリガーを引く、あと4歩で絶対トリガーを引け

 3歩

 2歩

 1


「エダ回避しろッ、22時の方向‼︎ 射撃ーーッ」

 

 ドダダダダダダダーッ


「ジャックスが捕まったッ」

「エダ、フロスティ 退がれッ、イアンは2名の後退をバックアップ」

「甲殻化してやがる」

「フロスティ何をやっている‼︎  探査モードから戦術モードに切り替えろ‼︎」


 ドダダダダダダダーッ

 バッスッ、バッスッ、バッスッ

 ダンッ、ダンッ、ダンッ、ダンッ


「更に右斜面に1体を確認」

「イアン右だッ、エドワード‼︎ フィクス‼︎  イアンを援護」

「なんだとッ バカヤローッ」

「フロスティーッ、味方を撃つんじゃない」

「ううわー」

「ジャックス機、機内の気圧低下を確認」

「隊長、メインハッチをこじ開けられそうですッ」

「エダ‼︎ 背板(せばん)下部を炸薬弾さくやくだんで狙撃しろ、ジャックス応答しろ‼︎」

「ジャックス応答しろ、最大出力で機内を加圧しろッ」

「隊長ーッ、加圧出来ません。 うがッ£$※£&$」

「フィクスッ、そっちはどうなっている」

「駄目です‼︎ 制圧射撃にて後退中ッ」

「隊長ッ、感染なんて嫌だーッ‼︎ 帯電微粒子ALで爆散します」

「待てッ、バカな真似は、」

「ジャックス機の点火動作を確認」


 真っ白だ もう何もない ────


「救助部隊、生存者を確認」

「爆心から近すぎて絶望的です」

「死亡者の身元を確認次第、直ちに焼却」

「至急、機体に燻蒸ガスの散布を開始」

「処置後、速やかに撤退する」




 もしオレが……。いや、()()っていうのは無い。例えあったとしても、それは次の選択肢の一つでしかない。だから伝えるのは少しだけ早かったとしても、気後れしなくたって良いんだ。今からでも遅くはない。会えるなら、いや、会って伝えるんだ、いいか分かったか?




「イアンはどうしてここに居るの?」

「オレはいつだってここに居たよ」

「そうなんだ、知らなかったなー。いつから居たのかな?」

「いつだったかもう覚えてないけど、すれ違った時かな」

「一目惚れですか? ぅふふふ」

「そんなじゃないないよ」

「ふーん、それでは何が決めてだったのでしょう」


 それは イアン が両親の死を告げられたときの事。断崖探索に派兵された母が環形性菌糸に感染し自決。他にも環形性菌糸に感染した者達が ヴィラルガ と化していた。救護隊として到着した父の部隊と交戦、父は死亡した。慰霊碑の前で泣く遺族団の中に イアン もいた。


 連隊長に連れらて来ていた女の子が イアン の傍で言った。


 お花を添えたいけど両手が使えないの

 抱きしめてあげることも出来ないから

 せめて一緒に哀しませてね



 その時ほど泣いたことはない。


「そんなこと、もう覚えていないよ」

「では、そういうことにしておきます」




 ある日、オレは アプリー にとても酷いことを言ってしまった。さっきも言った気がするけど母親に抱きしめられた事ってもう覚えてなんかないだろ? オレは母親なんて結構前からいないからな、叶うことすらない。バカなオレは アプリー に同じ想いを抱いてしまってたんだ。18のバカなんて一番酷い時だからな……、今更だけど。




「アプリー にもし腕があったら」

「あったら?」

「抱きしめて欲しかった時も、あったから」

「難しい …… ね」

「喜ばれたり、慰めて貰ったり、励まされたり、抱きしめられるって、」

「わたしも同じ想いだよ」

「オレは アプリー を抱きしめられる」

「わたしは抱きしめられているだけ?」

「そんなつもりは、オレはただ」

「わたしだけ嬉しくなってた …… だけ なのかな」

「アプリー、ごめん」




 アプリー は抱きしめることすら叶わないんだ、この先もずっと。それから何日かして、ミロ は アプリー に会わせてくれなくなったんだ。バカだったオレは、一層独りよがりの想いを募らせていったんだよ。だけどさ、今でも分からないんだよな。聞いたからって教えてくれる気もしないし……


 本当に難しかったのか? って ────




「こんくらいでいいか?」

「圧倒的な向心力……」

「すごい人だとは聞いてましたけど」

「誰に聞いたんだよ、フロスティか?」

「帰ったらたオレ、」

「おい、フラグ立てんな」

「お前ら、明日は早い。当直と交替したらもう休め」

「その後、どちらから、」

「ったく、新兵ってのは。1から10まで言わせんなよ」



 次の未踏破地域に移動する時間だ ────


「よし、ここの調査が完了すればこのルートは踏破完了だ」

「ロックミール隊、イアン隊長に続いて 前進」

『了解』



お終い



 ご愛読、ありがとうございました。


 子供と大人の狭間にいた少年イアンが抱いたアプリーへの想い、大人になったイアンがそれを恋とは言わずに語っています(笑) なんとなく過ごしてしまっていた日々に、派兵という避けて通れない岐路の訪れで焦燥し、アプリーに対する想いを詰まらせてしまって何処か切なくて可愛いですね。


 この作品は断崖ライフの前日譚的なカタチに落とし込んで締め括りました。初となる恋バナ要素を仕込んでみましたが如何でした? 少し煮込みが足りなませんか? もっと花に水をあげなきゃいけませんね。そして戦記物って難しいーーっ 語彙力の欠如が……。



流出した C.P.E.E.S.(シーピス)の設定資料

挿絵(By みてみん)



次作も何か新しい事へチャレンジしたいと思います。

皆様、応援よろしくお願いします。


その後どうなるかだって?

言わせんなよ バイバイ



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