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第伍話 巫女

全てのカードの説明を終え、次に皆の前へと出て来たのは朱鷺田だった。

白鷹にも協力を要請し、彼自身は亘の書いた文字達に赤と青で色分けを行う。

これから二つのグループに分け、調査を行おうという事だ。


「今、白鷹に仕分けをしてもらったがチラホラ意見が出ている通り裏に書かれた課題には三姉妹、舞手に関わる物と指定の場所に向かい何かの手がかりを掴む物に分類されているな。これらを上手く組み合わせれば真相に辿り着くと思ってる」


「良いぞ、トッキー!そのまま解決して俺をパチンコに行かせてくれ。今日は新台が入ってるんだよな」


旭の冗談に朱鷺田は嫌な記憶を思い出したのか顔を真っ青にし、首を横に振った。


「ダメだ!結局、俺を呼び出して仕事に行って来るから台を押さえて置いてくれって言うんだろ!あの後、凄い怖かったんだぞ。照明が眩しいし、音も鳴り止まなくてパチンコ玉が溢れるように出て来るし。そのあと、一緒に寿司とか焼肉を奢ってくれるから許した物を」


「大当たりしてるではないですか。それはそうと、私の考えでは舞手である三姉妹を見つけ。その衣装や仮面の用意を行うと言うのは大まかな流れだと思っているのですが皆さんのご意見を是非お聞かせ願えますか?」


阿闍梨の声に頷いたのはまず、三姉妹を見つけようと課題の出ていた愛だった。

しかし、不透明な事も多く彼女自身は首を傾げながら様々な意見を並べている。


「まず、三姉妹という時点で女性が必要という事は分かります。後は、舞という点から踊りの素養がある者である事も。ただ、これが直喩なのか?それとも比喩なのかがイマイチ掴めないんです。例えば、医学的に同じ両親から生まれた女性達なら三姉妹と言えそうですが。血の繋がりがなくとも普段から親密であったり、容姿や雰囲気が似ている者を姉妹のように言う者もいます」


「そうよね。血縁関係以上に深い繋がりを指す言葉でもあると思うし。それも含めて、話し合いをしなくてはいけない。じゃあ、此処らへんで二手に分かれましょうか?各々、調査に専念するためにも」


青葉の声かけによって、室内に二つの大きな塊が出来る。

赤に仕分けされたグループには青葉、朱鷺田、阿闍梨、亘、愛がおり各々のカードを並べている。


「少し宜しいですか?朱鷺田さんの言うように目的が大きく二つに分けられているのならば、向こう側のグループの結果も考慮する必要があります。その上で疑問点がある。舞とは一緒どう言う物なのでしょうか?単語が不明確という訳でなく」


「阿闍梨の言いたい事は分かるぞ。舞の“踊り方”が分からないんだよな。どう言う場所で、どう言う踊りをするのか?それが不明瞭って事だ」


朱鷺田の助言に彼は頷き、全体像を把握する為ホワイトボードに書いていく。

そんな中で亘も何が自分達に必要となって来るのか?改めて皆と確認しているようだ。


「僕の所にもある通り、まず舞を踊る舞台が必要で。三人の女性に衣装と仮面を身につけてもらう。後は...」


「楽器ですね。以前、神楽を行なっている神社を訪問した事がありまして。拝見させて頂いた事がありました。“乙女の声色”はその中にあると考えています。…でしたら、この舞というの物は神楽に似通った物なのでしょうか?」


「寿彦さんと一緒に行った場所よね?彼も驚いてたわ、古びた琴や神楽鈴があるって。...成る程ね、乙女の声色ってそう言う事」


青葉は何かに気付き、誰かを探すような視線をもう一つのグループに向けている。

最初に目があったのが山岸で次第に隼や颯と目が合うが彼女が首を横に振ると困った表情をしている。

そのあと、ある人物の名前を呼んだ。

それに釣られて朱鷺田も何か思い出したような、閃いたように目を見開いている。


「望海ちゃん、少し此方に来てもらえる?ちょっと確認したい事があるの。良いかしら?」


「はい。皆さん、真剣な表情でお話しされていて私達よりも先に真相に辿り着きそうで心配してしまいました。何か手がかりが掴めましたか?」


「今、掴んだ所よ。貴女って昔から色んなお稽古をしていたって周囲からも聞いてるの。和楽器も演奏出来るのよね?」


望海が笑顔で頷くよりも先に朱鷺田はジッと彼女を見つめ、何か考え事をしているようだ。

その異変に彼女も気付き、心配したのか声を掛けようとしており慌てて彼は謝罪の言葉を口にした。


「済まない、以前の事を思い出してたんだ。三姉妹ではないけど二人姉妹なら以前からいたよなと思って。望海と夢野さん、同じ血縁関係で夢の中でも姉妹のように一緒に暮らしてた。この二人を軸に舞手の候補を考えても良いんじゃないか?」


「成る程、医学的にも近親で普段から仲の良い関係。正に姉妹ですね。条件で言うと、富士宮家の血縁で普段からこの二人と接点のある人物。純粋に考えれば富士宮さんとなりそうですが」


しかし、それに待ったをかけたのが先程青葉と目を合わせていた隼と颯だった。


「巫女神楽の話だろ?そもそも、巫女って言うのは未婚の女性っていう条件があるのを忘れんな。舞は同じ動作をずっと繰り返す事になるから体力や集中力がない奴は向かないってばあちゃんが言ってたからそれも含めて人選は考えた方がいいぞ」


「それに咲耶さんには俺がいますからダメです。それにもっと相応しい人がいるのを知ってますから。以前から疑問に思っていた事がようやく解決出来そうだ。恐らく、当たってると思います」


そう言いながらも隼は中々答えを彼らに言おうとはしない。

半信半疑というより、判明していく過程を楽しんでいるようにも見える。

横槍が入ってしまったが、気を取り直し今度は愛が自身の考えを述べる。


「以前、採取させて頂いた望海さんの血液と夢から覚めた時に一斉に健康診断をさせて頂いた時の物が残っていますので遺伝子検査にかけてみます。それで何か手がかりが掴めれば良いんですが」


「じゃあ、私は衣装について良く知っておきたいし阿闍梨さんに同行させてもらおうかしら。朱鷺田さんはお任せして大丈夫なの?」


「あぁ、町役場の親父が普段から使っている執務室にお面が飾ってあるのを見た事があってな。谷川にも協力してもらおうと考えてる。流石に擬装工作も無しに借りる訳には行かないからな。器用なアイツなら良い案をくれるだろう」


初嶺は愛を連れてその場から立ち去ろうとしているのを見るに助手として検査結果を見守るようだ。

各々の次の行動も決まり、安心した亘は一息ついたように近くにあった椅子に座る事にしたようだ。

それを見た望海が彼に声をかける。


「皆さん行ってしまわれましたね。そう言えば亘さんはどうされるつもりですか?」


「僕は殿を待っているよ。では、望海。一つ、謎を出そう。一つだと一つ、二つだと無限になる物はなんだ?」


「えっ!?そんなのありましたっけ?...亘さんがいつも大事にされている物ですか?そう言えば、それも二つありましたね。成る程、それで名誉会長を待たれてるんですね。確かに剣や勾玉では意味は無さないけど鏡ならそれが出来る。でも肝心の舞台って何処にあるんでしょうね?」


「そうだな、それが問題だ」

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