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第肆話 傀儡

ホワイトボードに引き続き書き込んでいく亘だが残りのカードは十枚と言いたい所だが、それと人数が噛み合っていない事に気付き何か特殊な法則が紛れ込んでいるんのではないか?と思ったようだ。


「亘も気づいたか。本来であれば全二十二枚と同じ人数になる所じゃがそうではない。此処にいるのは二十五名、しかし皆カードが届いたと言っている。まずは最後まで話を聞こうか」


「勿論です。では次の方と言いたい所だが、僕は事前に仲間達の物を把握している。「壱拾肆番:節制」は海鴎、君だな?」


そう言われた本人はニコリと笑みを浮かべ立ち上がるのと同時にカードの中身を読み上げる。


「七星様の仰る通り、私が次のカードの持ち主です。神からのご神託ですが「秘密の花園、隠し事を暴き天罰を下すその場所へ向かえ」との事です。えぇ、勿論存じております。いつも訪れている教会、そこに隣接する場所ですね」


亘は何度か彼が祈りを捧げる教会に訪れた事がある。

その通りがかりに花園へ通じる門を見た事があるのを思い出した。


「なるほど、あの場所か!瑞穂も検討が付いているようだし、実際にある場所を言い換えていると言う事か。比良坂町を隅から隅まで探せば、文字通りの場所に辿り着けるのかも」


淡い希望を持つ亘だったが、それとは逆の反応を示す者がいた。

その正体は燕であり、眉を顰め申し訳無さそうな。

か弱い声で自身のカードを皆に見せる。

それが「壱拾伍番:悪魔」のガードだった。


「なんで燕がこのカードなの?何か怖いイメージあったかな?仲の良い玉ちゃんの司祭長と対になってるからって事?ご依頼なんだけど、自分にはさっぱりなんだよね。「貴女の始まりの場所、夜空を見るに相応しい場所で星を囲う箱を見つけよ」だって。これって、自分で見つけないとダメなのかな?咲羅に手伝ってもらうのはダメ?」


「構わないと思うけど、燕の始まりの場所という事は何か思い入れのある場所な可能性が高い。是非、思い出してみて欲しい。しかし、不吉なカードが続くな。では次に「壱拾陸話:塔」を所持している方は?」


すると、皆ピタリと声を発するのをやめ沈黙が訪れる。

しかし「カツンッ」と何やらステッキの鳴る音がし、亘と朝風が其方に目を向けると小さく笑みを溢した。


「逢磨元会長、失礼致しました。ですが、貴方のような方が今回の調査に加わって頂けるとは大変心強い」


「なんじゃ、お前さんだったか。塔とはまた不吉なカードを引き当てたな。崩壊や悲劇を象徴する物ではないか。まさか試練までそのような事は書いてないだろうな?」


「構わん。不吉な黄昏時に佇む私には丁度良い。悲劇とまではいかんが、禁忌を犯すという事が今回の私の使命のようだ。「成人の儀を行う橋、そこで禁忌を犯せ」との事だ。心得ている。瑞稀と共に訪れた事のある場所だ」


運び屋の中には数名、行き先への検討が付いている者がいるようだ。

自身のこれまでの行動の中に、ヒントがあるのではないか?と勘ぐり始め記憶を辿ろうとする者もいる。

しかし、珍しく頭が冴えないのか?首を傾げ考え込む人物がいた。それが希輝であった。


「今まで、暗いカードが続いてたから明るい話題に戻すよ。「壱拾漆番:星」を持っているのはアタシ、成瀬希輝ね。正直、望海が持ってると思ってた。希望とかチャンスって意味合いがあるから。でも、嬉しいかな。自分が選ばれて。だけど、課題が不明確で「古の生物が愛を誓う場所へむかえ」ってなってるんだけど古の動物って何?愛を誓うもそうだけど、教会とか神社とかそう言う場所?結婚式に乱入しろとか?」


「あぁ、分かった。希輝、文章読解だよ。前に同じ事を話してる人いたでしょう?その人が何を言いたかったのか?何を指し示していたのか思い出してご覧。そしたら答えが見えてくると思うよ?」


「えっ!?なに、白鷹急に!?アタシ、理系だし国語はちょっと。しょうがない、剣城にもアドバイスをもらうか」


彼女が途方に暮れていると何故か側にいた浅間と白鷹が目を合わせお互いクスリと微笑んでいる。

どうやら、希輝よりも先に答えに辿り着いたようだ。


「白鷹君、私分かりました。その時、皆んなの事を側で見守っていたから思い出せたの。ほら、希輝ちゃん。珍しく四人で揃った時の事、覚えてる?」


「えっ?いつも拠点で一緒にいるじゃないですか?そうじゃないって事?別の場所?」


そうすると何故か別のグループから声が聞こえて来た、その正体は児玉だった。


「あー、俺も思い出した。あの時か。お前達が大活躍した時の事。今でも覚えてるぞ。結構な人数がいたと思うし、聞いてる人も割といたと思うけどな」


「ちょっと待って!そしたら思い出せないアタシが変みたいじゃん!...しょうがない。後で思い出してみます。でも、なんか怖いな。自分達の人柄とか会話内容が見透かされてるなんて。まるで監視されてるみたい」


怯え、動揺する希輝に釣られ焦ったようにカードを手に取る者もいるがそんな中で嬉しそうにそれを眺める者も存在する。

その正体が阿闍梨であり、楽しげな様子で周囲を見守っている。


「今までの自分の行いに手がかりがあると言うのであれば、これほどまでに容易な事はありませんね。物事は見方次第なのですよ、試練と取るか好機と取るかは己次第な所がありますからね。お隣の旭さんが待ちくたびれたそうなので手早く済ませましょう。「壱拾捌番:月」の手札を持っているのは私です。幻影や不透明さを意味しますね。幻の運び屋に相応しいと言えましょう。お題ですが「答えは既にこの手の中に、乙女の声色を持参せよ」との事です。詩的な表現ですね」


「録音機ならいつでも貸すぞと言いたい所だが、暗喩なんだろうな。俺はカードも依頼もそのまんまだけど。と言う訳で「壱拾仇番:太陽」を持ってるのは本間旭だ。「銀杏(いちょう)と桜の花を咲せる運び屋を見つけよ」だから人探しをすればいいのは分かる。後はこの花達がどう言う風に当てはまるか?だな。名前か、何かの特徴をもじってる可能性が高いか」


此処までカードの紹介を終え、残り僅かとなり亘や朝風は勿論の事、望海や富士宮、愛なども未だに紹介が出来ていない状態だ。


「残りの三名は何か特殊なカードを送られた可能性が高いね。聞いた事がある。タロットカードには付属のカードが存在するとね。僕に送られてきた「弐拾番:審判」にはこう書かれている。「現世と霊界を結ぶ神器を二つ用意し、永遠の舞台を用意せよ」これは自分にしか出来ない事と言いたい所だが、今日皆んなに集まってもらって正解だったかもしれない。答えに辿り着くが出来たのだから」


そう言いながら朝風の方を見張ると彼もまた同じようにコートの中からカードを取り出した。


「先程も見せたがワシの持つカードは「弐拾壱番:世界」じゃ完全無欠、これ以上ない物じゃな。しかしまぁ、色男とは大変でな。外回りになりそうじゃ「恋多き男を書き留めた女流作家にゆかりのある寺を訪問せよ」はて、ワシでも知っとる女子じゃろうな?


そのあと、お互いに目を合わせ譲り合うような仕草をする三人だったがキリがないと望海が先陣を切る事にしたようだ。


「私達の持つカードには番号が振られていないようです。仰る通り、特殊なカードみたいですね。「希望」のカードなんですが「戦火の希望と共に水面に浮かぶ鳥居を目指せ」と書かれていました。何となく、夢の世界を彷彿とさせますね」


「では、次は私。最後は愛にしようか?富士宮咲耶の手持ちのカードは「信念」意味合いとしては司祭長と類似しているな。これがまた厄介でな「南風に乗り、泣き虫な英雄の住処を探せ」とのお達しだ。しかし好都合だった。同じような文章を持つ者に会えたからな。是非参考にさせてもらう」


「皆さんのカードを拝見させて頂いて、ようやくこの意味が理解できました。そのままなんですけど私、東出愛は「慈愛」を手にしています。「舞手となる三姉妹を揃えよ」これが本当に可能性なのか?どうやったら正解に導き出せるのか?是非、ご意見を伺いたいです」


これにて、長いカードの紹介は終える。

しかし、一難去ってまた一難。運び屋達は各々の試練に身を投じる事になる。

その前に朱鷺田の提案通り更なる話し合いに発展していくようだった。

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