第参拾伍話 地上の星
場所は宇須岸、地上の星の正体を探し当てた颯はそこへと向かっていた。
「此処の近くに隼といつも入ってるバーガー屋があるんだよな。まさかその近くにあるとは思わなかった。案外気付かないもんだな」
近くには50m程の展望台もあり、何度も目を引く存在だと思いながらも足を運ぶまでには至っていなかった。
桜の名所であると節子から聞いてはいたが、秋には紅葉も見頃となる。
季節毎に変わる景色を皆楽しみにしているのだろうと彼は想像を膨らませた。
気になる存在はないか?と中に入り周囲を伺っていると丁度中心部にある建物を見つけた。
昔ながらの武家屋敷のような作りに颯は目を引き近付くと外から内覧を終えた人々が出てきた。
どうやら中に入る事が出来るようであり、歴史資料を眺めると此処が元々役所の機能を持つ奉行所である事が理解出来た。
催し物の際に使用出来る、72畳にも及ぶ大広間は威厳を感じさせる。
この施設を守るために、星形の城壁が作られたという過去が直ぐに想像出来た。
「此処が重要な拠点だとしたら、同じように手がかりがありそうなのもこの施設だよな。内側が?それとも外側か?1人で見回るのも骨が折れるぞ。端から端まで歩いたら結構な時間になるし」
施設の関係上、調査出来る時間も限られている。
助けを呼ぼうかとも思ったが、隼は調査の時間が必要だと仕事を引き受けてくれている。
人手が足りないのは勿論、その好意を無碍には出来ないと颯は悶々としながらも行動を開始した。
施設内を隈なく探すもピンとくる物は無く、外に出て周囲をぐるっと見回ると丁度裏側に古びた木製の立札があるのを見つけた。
「あった、これか!写真撮って隼に報告しねぇとな。協会にも報告しないと」
時間を置いて、照明煌めく宇須岸の中。
電話越しで彼と隼の話し声が聞こえる。
「そうですが、見つかって良かった。颯先輩なら心配してませんでしたけど、体調の事もあるので日を分けて向かう方が堅実かなと思っていたので。上手く行きましたね」
「相変わらず心配ご苦労。俺も仕事が残ってるしな、直ぐに戻る。じゃあ、また後で合流しよう」
そのあと、大友で合流し夜も更ける頃報告の為に協会の会議室に向かった。
中には既に富士宮の姿もあり、一から順に神楽舞の手順を眺めているようだった。
「咲耶さん、こんばんは。良い報告がありますよ。颯先輩が宇須岸で新しい手がかりを見つけてくれました。後は、貴方だけですね」
富士宮は自身の腕時計を見ながら目を見開く、もうそんな時間かと驚いているようだった。
目を泳がせ、出入り口と机の上に並べられた資料を交互に眺めているようだった。
「済まない、もうそんな時間か。私が皆の足を引っ張ってしまっているな。安心して欲しい、今日中には全ての手がかりを揃えられるように努力するよ」
「別にそこまで焦らなくても良いと思うけどな。きな臭い噂もあるみたいだし。神楽は神に捧げる儀式みたいな物だしな。何かの意味合いがあってもおかしくないだろう?」
「詳しいですね、流石颯先輩。貴方の持ってる知識の中で何か疑問に思う事はありますか?違和感とか」
すると彼はざらっと並べられた資料を見て率直な感想を述べた。
「まず、年代が分からないな。これがいつ作られたのか?伝わった伝承なのかが不明だ。一番最初が別れば、全部分かりそうなものだけどな。富士宮の令嬢、何か家に伝わってる話とかないのかよ。名門の家なら何か知っててもおかしくないだろ?」
「それは私も思い、今何か手がかりがないかどうか考えを巡らせていたのだが検討がつかなくてな。そもそも、自凝島に移住したのが150年前。最悪、それ以降の話になれば足取りが追えなくなる。厄介だな」
「確か、大和にあった楽器の状態も古びていたんでしたよね?これは運び屋と関係のない事例なんじゃ?でもおかしいな、どうして俺たちに協力しろとカードが届いたんだ」
「何か裏が必ずあるはずだ。もしかしたら赤い血は昔は別の意味を持っていたのかもしれないな。帝国時代に何かあったのかもしれないし。これは俺の想像に過ぎねぇけど、異能力を持っているなら神聖視されていてもおかしくないしな」
「謎が深まるばかりだ。では、私はこれで失礼させてもらうよ。あと一つ、全て揃った時に何が起こるのだろうな」




