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第参拾参話 家族

「そう言えば、初嶺君はまだ手がかりを見つけてないよね?今日探しに行くの?」


愛のアトリエで武器の整備をしている初嶺の元へ彼女が時計を見て、ふと思い出したのか?

確認の為に彼に確認している。

しかし、作業の手を止める事は無く。

口だけで応対しているようだ。


「そのつもりではいますが、先ほど山岸さんにお会いした時に良からぬ噂を聞きまして。あの神楽舞、降霊術の要素が入り混じっているようですね」


愛はコーヒーの飲みながら彼らしくない発言を聞いて、驚くのと同時に咽せてしまったのか?

ゴホゴホと咳を漏らしている。

彼は慌てて、彼女の背中を摩り労わっているようだ。


「ありがとう。貴方からオカルト話が飛んでくるとは思わなくて。私達はあくまでも医者で研究者でもあるし、非科学的な事は黄泉先生も含めて視野に入っていないだろうなと感じていたから」


「勿論、そのつもりで言ったのではありません。しかし、火のない所に煙は立たないと言いますか。謎というのは人がいる限り増える物だなと感心していたのです」


「成る程、確かに場所じゃなく。何かを作って隠すのは人間がする行為だからって事ですね。改めて、比良坂町の歴史を知る事は重要かも。民俗学に関わりそうな場所に行ってみるのはどうですか?何かの記念館とか?」


初嶺はふと上を見上げ、考える仕草をする。

自分のこれからのスケジュールを考えて空白のある時間を探しているようだ。

しかし、逆算すると時間がない事に気付き立ち上がる。

そして愛に一緒に玄関へ向かうようにと其方を指差す。


「愛さん、一緒に行きましょう。元々、旭さんの協力もあり行き場所に検討はついていました。恐らく、荏原(エバラ)に私の探してるものがあると思われます」


「荏原って住宅街が多い所ですよね?そんな所に施設なんてありましたっけ?」


疑問を浮かべながらも愛は彼についていくと、とある出来事を話し始めた。


「あのカードが届いた後、旭さんが新聞を私に見せてくれた事がありまして。何かのメーセージだろうと思っていましたが、その中に漫画が掲載されていたんですね。その作品を保存、展示している場所が荏原にあるそうなんです」


「博物館という事ですか?でも、私達そこまで行けませんよね?詳しい場所も知らないし。あぁ、成る程。それで噂に聞く馬車や人力車を利用するんですね」


その言葉に彼は頷き、目的地まで足を伸ばした。


御者「まいど、ご利用ありがとうございます。此処が最寄りで少し歩くと美術館がありますよ」


初嶺はその言葉に従い、周囲を見渡しながら神楽舞に関する手がかりを探す。

今回は巻物か?立札か?或いはそれ以外の形状か?考えを膨らませながら歩いているとある事に彼が気づいたようだ。一度足を止めるのを見て、愛は首を傾げる。


「初嶺君、どうしました?何か見つけましたか?」


「いいえ、恐らく絵の類いだろうなと思いまして。こういう場所をしてしてくるのなら何か理由があるのだろうと。とりあえず、中に入って調べてみましょうか?」


美術館の中に入り、作品の歴史や内容を深く知る事は出来たもののそれ以上の情報は出て来なかった。

今度は周辺を隈なく探索してみようと、近くの商店街に出向く事になる。


「凄いですね。此処にも美術館関係の銅像がある。きっと縁のある場所なんでしょうね。作者が暮らしていた場所とか。...あっ、あの銅像の側面を見て!土台の部分!」


愛が指差す先にあるのは何かの文字だった。

最初、落書きかと思ったがよく目を凝らしてみると古い字体で書かれており文章として成立するようだ。

これを写真に収め、協会の医務室に居る黄泉の元へと訪れた。


「今度はまた別のパターンできたね。落書きか。ただ、相変わらず実態になって姿を現す事はないようだね」


「Dr.黄泉その点についてですが。犯人はそもそも現実にいないのでは?幽霊に似た存在なのではないか?と私は思うのです」


突然の発言に側にいた愛は動揺を隠せずにいた。

理由を聞けば、思っている以上に論理的な答えが返ってきた。


「そもそも、この神楽舞をして。一番得をするのは犯人ですからね。私達に見つけさせて降霊術に誘導する。それに加えて相手は出てこない。この論理を正す一つの方法は、それしかないと思いますが」


「...幽霊ね。ただ、どうやって可視化するつもりだい?僕達は霊感がないんだよ?それを確かめる術を持ち合わせていないんだ」


「鏡はどうでしょう?いつも亘さんや朝風会長が所持している花紋鏡。あれなら幽霊も可視化出来るのでは?」


どうやら、何かの手がかりを3人は掴んだようだ。

もうすぐ夕刻となる。本日中に神楽舞の手がかりを全て揃える事は出来るのだろうか?


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