第参拾弐話 新星
「山岸先輩、俺見つかりましたよ。貴方も出来るだけ早くにお願いしますね。皆んなを待たせる訳にもいかないので」
「大丈夫、今那須野と一緒に亀ヶ岡にいるから。検討はついてるし心配しないで」
電話越しにそのような会話をする2人だが、隼は何かの違和感を感じた。周囲から食器の鳴る音や話し声が聞こえてくるのだ。
何かの飲食店ではないか?と彼は感じとった。
「山岸先輩達今何処にいるんですか?完全に検討違いな所にいるようにしか思えないんですけど」
「何処って、亀ヶ岡と言えば餃子でしょう?隼君もこっちにこれば良いのに。好き嫌いを克服出来るかもよ」
そう電話越しに意地悪な表情をしている山岸を見て、向かい側の席にいた那須野は苦笑いを浮かべた。
「あまり隼を揶揄うなよ。今、店で聞き込みをしてたんだ。ここら辺で新しく仕事を始めた運び屋がいないか?ってな。そしたら、良い情報を手に入れたからこれから向かう所だ。心配するなよ」
「別に心配はしてませんけど、早ければ早い程良いと思っただけです。じゃあ、俺はこれで。後は、お願いします」
通話を終え、2人は店を出ると周囲にも同じような店が連ねており。一種の通りを形成している。
そのまま、通りを抜けて2人は真っ直ぐある場所へと向かった。
「ここら辺、工場が多いからその従業員を運ぶのに苦労してるらしいよ。その解決策として取り入れられたらしいから歴史としては浅いみたいだね。むしろ、これからって感じ」
「黄色がトレードマークだったか。ここら辺は良く雷が落ちるって有名だからそれを模してるとは聞いた事あるけど本当なんだな。あっ、山岸。あれ!」
那須野が指差す先にいたのは、黄色の制服を着た少年だった。
遠目からでも目立つその姿は、2人だけでなく周囲の人々を惹きつける。
新しい物が好きな人々は新鮮さと利便性を求めて彼らに依頼する事も多いだろう。
しかし、山岸の目的は違う。
そんな彼らを頼りながら、古の儀式について深く知らなければならないからだ。
「ねぇ、そこの君。お兄さん達の事知ってる?此処も担当してる運び屋なんだけどさ、挨拶もそうなんだけど。教えてもらいたい事があって、今仲間達で協力して神楽舞の調査をしてるんだ。この近くに巻物や立札がある場所を知らない?俺達それを探してるんだよね」
しかし、肝心の相手はキョトンとした表情をし何も知らないと言った表情をする。
それを見た那須野が慌ててフォローを入れた。
「済まないな、山岸は悪い奴じゃないんだ。急にそんな事を言われても困るだろうが俺達も急いでいてな」
「いいや、そう言う訳じゃなくて。どうして、神楽舞って言うんだろうと思って。近くにお住まいの大学教授はこれは降霊術だって言っていましたよ」
新たなワードに二人は目を見開き、仰天する。
今まで思っていた答えや考えをひっくり返えされたような気分になったからだ。
「えっ、もしかしてまたオカルト案件!?勘弁してよ。降霊術というと、颯のお婆ちゃんがイタコなんだよな。だから彼に詳しく知る事は出来るけど。どうしてそう言う風に言われたの?」
「僕が依頼人の先生を送り迎えをした時に、偶然そんな話になって。民俗学を研究されている方なので色々と教えてもらえる事があって神楽舞には色んな意味合いがあるんです。神様への捧げ物の他にも巫女に神霊を降ろすっていう憑依型と呼ばれる物が存在するとか」
「その霊を降ろすっていう行為が本命なのだとしたら、また一悶着ありそうだな。その正体もそうだし、憑依された巫女はどうなるんだ?っていう純粋な疑問だな。この際だから、否定するなんて言わない。何があってもおかしくないしな」
そのあと、亀ヶ岡周辺を案内すると言われ周囲を散策する事になった。
この近くに大学教授の家があると紹介を受けての事だった。
「先生の所に一度行ってみると良いですよ。面白い話も沢山聞けるし。神楽舞をするのには様々な道具や場所を用意する事はご存知ですか?」
「勿論、今青葉さんに衣装を用意してもらってるしね。仮面や楽器の用意も出来てる。後は舞台だけど、他の皆んなが探しだしてくれるんじゃないかな?」
楽観的な考えに那須野は苦笑いを浮かべるが、思っている以上に事の進展が早かったのも事実だ。
丁度、家にいた教授から研究対象として補完していた巻物を手に入れ本来の目的を叶える事が出来た。
「良し、これで俺のミッション完了!隼君にも連絡しておかないとね。どうしたの那須野?そんなに深く考え込んだりして。素直に喜んでおけば良いのに」
「そう言う訳にもいかないだろう?降霊術って単語が出てきたんだ。出来るだけ早く、昔の文献を探って調べておいた方がいい。何があっても良いようにな」




