第弐拾捌話 大鳥居
「良かった、今日の潮は引いてる。これなら通れそうですね」
早朝、確認へと訪れた望海の目の前には馴染みのある水面に浮かぶ鳥居とはまた別の風景が広がっていた。
地面が干からびており、地に着いたそれを彼女は見る事が出来ている。
良く目を凝らしてみると、鳥居の下に何かの木箱がある事を彼女は発見した。
余裕のあるゆっくりとした足取りで歩を進め近くまで向かいそれを手にする。
しかし、それも束の間。何かの気配を感じ振り返ると潮が先程よりも押し寄せて来るのを感じ彼女は逃げるようにその場を立ち去った。
次に彼女が向かったのは近くにある社だ。
陸地の向こう側に存在し、下を良く見ると木板との間に隙間が出来ている。
「中に海水が入っても大丈夫なように工夫されているんですかね?とても綺麗、この回廊」
紅く、神秘的で色鮮やかな景色に彼女は心を奪われたのもの波の音と帰路を思い出し望海はふと我に帰る。
「...あれ?私ってどうやったら帰れるんですか?ちょっと!箱に夢中で忘れてました、無線機で援軍を!」
あちこちに無線機を繋げ、ようやくその手段を持っている剣城の元に連絡が届いた。
翼竜を派遣してもらい、小坂で合流を果たした。
「無事で何より、安芸の社に閉じ込められたと聞いた時は何の話しかと思ったらそう言う事だったのか。それで?目的の物は見つかったのか?」
「はい、それに見合うだけの戦果をあげて来ましたとも。この木箱が大鳥居の下に落ちてまして。潮が引いた所で回収してきました」
すると剣城は彼女の言葉に疑問を持ったのか?
首を傾げ動かないでいるようだ。
その態度に逆に困惑してしまった望海は彼に対して疑問を投げかける。
「あの、私は事実を言っただけなんですけど何か変な事でも言いましたか?」
「...いや。咲羅さんからも同じような話を聞いたなと思って。燕さんと薩摩で舞台を見た後、ステージの近くに同じように置いてあったそうだ。問題なのは、誰がそんな事をしたのか?或いは出来るのか?という事だ。今回の件もそうだ。まるで忍者のようだと思わないか?」
「まぁ、確かにコソコソしてて何が目的なのかわからないですね。でも、だからこそこうして調査をして実行犯が誰なのか?を突き止めるべきじゃないですか?私はそう思いますけど」
剣城はそのあと、望海の持つカードを見せて欲しいと頼み手に取った後。凝視している。
メガネのフレーム越しでも彼の睨む瞳が見えるぐらいだ。
「特に仕掛けがあるように思えない普通に占いで使うようなタロットカードだな。筆跡も機械的で特徴も掴めないし。性格も性別も分からない。この後、希輝に頼まれて越前に戻らないといけないんだ。じゃあ、俺はこれで失礼する」
剣城が越前に戻ると、印の近くで仁王立ちをする希輝の姿があった。
機嫌が悪いのか?頬を膨らませ、腕を組んでいる。
「希輝、俺を呼んだのは君だろう?なんで不機嫌な顔をしているんだ?ソースカツ丼ならさっき食べただろう?食後のアイスクリームでも欲しいのか?」
「さっき食べた。このカードの意味、ちっとも分からなくてさ。白鷹とか浅間先輩からは文章読解がヒントだ。とか言われちゃうし。剣城、この前何か言った?アタシ、全然思い出せないんだよね」
「この前がいつかによるな。どう言う状況でそれが起きたのか?もう一度思い出してみろ。そしたら答えが出てくるかもしれない」
すると彼女は目線と顔を斜め上に向け、思い出すような仕草をする。
それを剣城は急かす事なく、見守っているようだ。
「児玉さんが側にいて、色んな人が同じ話を聞いたって言ってた。会議室みたいに皆が集まれる場所ってあるかな?」
「成る程な、俺は分かった。かなり大きな建物だったな。希輝もはしゃいでたぞ、金で囲まれた城があるって」
「あっ、小坂の城か!児玉さんが即興で作ったやつ!その時の会話...古の生物。恐竜。愛を誓う場所?」
まるで機械のようにカタコト口調で言う彼女に対して剣城は吹き出し笑いを止められずにいた。
後もう少しという彼女に対して助言をしようとこう口にした。
「心臓の形でも良いぞ。チョコレートでも良い。希輝が連想出来るもので思い出してくれ。案外、日常的に見てる場所かもしれないぞ」
「あっ!?分かった!あの首長竜のところね、了解。じゃあ、確認してくる。ありがとう、剣城」
希輝は一直線にある場所へと向かう。それは、ハートを模した恐竜のオブジェだった。
長い首で二体が協力して形を作っている。
その下に例の木箱を発見した。
「よし!これで皆んなに報告出来る。今日中に全部集まると良いな。...そのあとは神楽の練習か。一体何のためにこれがあるんだろう?」




