第弐拾漆話 バラの知らせ
翌日となり、場所は朱鷺田達の暮らす家の中である出来事が起こった。
いつも通り朝食を作るため、割烹着を見に纏い支度をする朱鷺田の元へ旭が声を掛け近寄ってきた。
「トッキー、今日。水族館に行かないか?時間があったらで良いんだ。協力して欲しい」
「な、なんだよ朝から急に!デートのお誘いなら前日に言ってもらわないと困る。それに今日も仕事だろう?いつ行く暇があるんだ?」
すると逆に旭の方が困ってしまったようで、眉間に皺を寄せながら首を傾げている。
そんな時、助言をするように谷川の声が響いた。
「みどり君、旭はデートじゃなくて調査に行きたいんだよ。ほら、昨日行く暇がなかったでしょ?昨日、角筈で聞き込みして丸池に行けば良いって教えてもらったんだよ。割と近くだから明日行こうって話になってさ」
「そうそう、トッキーは良いよな。鞠理に頼んで解決してもらったし。宿題だって直ぐ終わらせるだろう?俺に協力してくれよ、神楽舞の事知ってる奴がそこにいるかもしれないんだ。行ってみようぜ」
「なんだ、そう言う事か。それなら早く言ってくれれば良いのに。分かった、昼間に集合して旭のカードの言う通り運び屋を探してみよう」
その日の昼間、丸池の水族館に旭と朱鷺田の姿があり2人は何故か飼育されているペンギンを見ていた。
「可愛いな、ほら卵を温めてる。いつ生まれるんだろうな。旭、次はクラゲを見に行こうか?癒されるだろう?」
「...いないな。有名なスポットだからいると思ったんだけど違うのか?桜と銀杏だろう?名所にでも行ってみるか?」
更に場所を移動し、南下して学生街の方へと足を進めたが此処にも2人の探す運び屋が見つからないようだ。
困り果てた旭は足を止めてしまう。
「旭、ちょっと休憩しよう。一度考え直してみる事も大事だぞ。こう言う時こそ焦らない」
「そうだな。あまりエリアを移動してる訳じゃないし、だけどしらみ潰しに向かうのも良くないよな。法則性を見つけないと。植物の名所で調べてみるか?椿とか」
「でも椿は冬の花だろう?桜もそうだ、今の季節に相応しくない。一度、花屋に行ってざっと何があるのか見た方が良い。何かのヒントが得られるかもしれないしな」
近場の花屋に二人で行き、花を眺めているとふと目に止まるものがあった。
旭が一輪手にとり、それを眺めている。
「バラか、珍しいな旭が別の花を気にいるなんて。誰かにプレゼントする予定でもあるのか?」
「まぁ、日頃の感謝を込めて贈りたい相手はいるかな。あっ、トッキー。バラだよ、バラ!ほら、これを買って直ぐに向かうぞ。入間なら確か見れたはずだ」
「えっ!?なんだよ急に。ちょ、ちょっと旭!バラ一輪って俺を一途に愛してくれるって事で良いんだよな!」
急な旭のひらめきに振り回される朱鷺田だったが、共に入間に向かうとバラを眺める人物がいる事に気づき声をかけた。
「いた、お前だろう?桜と銀杏に当てはまる運び屋って。丸池にいると思って尋ねたらいないんだ。何処にいるのかと思ったらバラを眺めてるとは」
「良く言われます。桜じゃなくてバラだろう?って角筈で活躍されてる方達ですよね?噂は聞いております。私になんのご用でしょう?」
「俺達、神楽舞に関わる文献や立札を探し回っているんだ。出来れば調査に協力して欲しい。カードの書かれたメッセージからして貴女に関係があるのが明白だからな」
すると彼女は考えこみ、答えを口にするが言われた二人は呆気に取られてしまった。
「なら、水族館に行きましょうか?彼処は展望台でも有名ですけど、上ばかり見ていては仕方がないでしょう?時には地面を見ることも大事ですよ」
三人で施設の下にあるビルの出入り口付近を眺めていると地面のタイルに何か書かれているのを旭が発見した。
「これか!全然気がつかなかった。てっきり水族館に行けば中に何かあるのかと思って勘違いしてた」
「誤解は人に不幸を招きます。それでは私はこれで、あとはお二人にお任せします」
「ありがとう。これで旭のミッションもクリアだな。やっと一息つけそうだ。所で旭、このバラはなんだ?俺にそのプレゼントと言う事でいいのか?キチンと言わないと勘違いしちゃうぞ」
「良いんじゃないか?トッキーなら前向きに受け止めてくれるだろう?ある意味信頼してるんだよ。じゃあ、俺達の持ち場に戻ろう」
「そうだな。その前にこの気持ちとバラだけは大事にしまったおくよ。ふふっ、旭もロマンティックな事をするんだな。...って、いない!相変わらず仕事人間だな。そう言う所が好きなんだけど」




