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第弐拾陸話 禁忌

時は戻り、協会を立ち去った逢磨は自宅に戻り瑞稀とリビングのソファに座り会話をしていた。


「では、お養父様にはこの場所の検討がついているということですね。確かに、成人した後にお祝いで洛陽に連れて行って頂いた思い出があります」


「恐らくあの橋だろうな。しかし、また西郊の方へ赴く事になるとは思わなかった。瑞稀はどうする?私と一緒に向かうか?」


彼からの誘いに彼女は少し寂しげな顔をし、首を横に振った。なにやら先約があるようだ。


「申し訳ありません。お養父様がお戻りになる前、望海から連絡が入りまして一緒に安芸に来てほしいと言われたのです。これは私にしか出来ない事ですから、貴方は貴方の使命を果たす事に専念してください。用件が終われば、そのまま洛陽に向かいます」


「分かっている。お前を縛り付けるものは何もない。風のように自由に振る舞いなさい。それでは検討を祈る」


両者別れ、瑞稀は目的地へと向かった。


「凄いですね、地元愛というか。ユニフォームやコンビニも全部真っ赤。協力して頂いてありがとうございます。このカードに書かれてある水面に浮かぶ大鳥居って風間様はご存知ですか?」


「恐らく、斎島(いつくしま)の事だろうね。でも、訪れるのは容易ではないよ。潮の満ち引きに左右されるからね。今日行ったとしても丁度迎えるかどうかは分からないんだ。現地で確認してみないとね。まずは私と一緒に行こうか?」


望海の手を取り、斎島へと到着した彼女達だったが案の定というべきか、大鳥居の下に水面が漂っておりこれ以上の進行が不可能になっていた。


「失礼、そこの俥夫。今日の干潮の時間はご存知かな?あの鳥居まで歩いて行きたいんだけど」


「失礼ながらお客さん、もう今日はならんよ。明日の朝なら行けると思うが」


「タイミングが悪かったですね。明日また出直してきます。瑞稀さんもわざわざ此方までありがとうございます。目的地は分かりましたから、あとは自分の方で解決させてください」


「分かった。望海、頼んだよ。私も洛陽に行かなければ、お養父様が待っているからね」


洛陽に到着した瑞稀は彼の跡を追うように、当時の記憶を思い出しながら西郊へと足を進めた。

下町の運び屋に驛まで案内され、馬車に乗り込む。


「もう数年前になりますか?瑞稀さんがそこに行かれたのは?今と大分印象が違いますね。凛々しくなられたんとちゃう?」


「そんな事はないよ。案外、中身は変わっていないんだ。今も泣き虫で、当時も橋の上で俯いて周囲の音も景色も入って来なかったからね。なんの為に行ったのかも理解してないんだ。でもね、その時何か言われた気がするんだよね。私は朧げだけどお養父様ならご存知かな?」


西郊に辿り着くと彼女の耳にはまず、穏やかな川のせせらぎが聞こえてくる。

真上を見れば今から色づこうとする紅葉達が見えるだろう。

確かに以前、桜や紅葉の名所とは聞いていたがこれほどまでに惹かれる場所だと彼女も思っていなかった。


周辺を見渡し、養父の居場所を探す。

そんなおり、一つの橋の上に立つ彼の姿を見つけた。


「お養父様、こちらにいらしてたんですね。何か手がかりは見つかりましたか?」


「瑞稀、私が当時言った事を覚えているか?橋を渡る前、注意をしたな」


そう、背を向けながら言われた彼女は当時の状況を思い出す。

最初の一歩を踏み出した時、彼から言われた言葉。


「“絶対に後ろを振り返ってはいけない”そうですね?成人の儀でしてはならない禁忌だ。やっと思い出す事が出来ました。では、後ろを振り向けば何かあるという事ですか?」


「恐らくな、もういいだろうか?答え合わせをしよう」


2人が後ろを振り向くと一緒何も橋に変化がないように思える。

しかし、周囲を凝視してみると橋の床板に何か違和感を感じた。

光の角度によって文字が浮かんで消えてを繰り返しているのだ。


「これは、橋全体が手がかりという事か。大仕掛けをするとは、何者だ。瑞稀、内容をメモしておきなさい。夜に協会へ出向くぞ」


「はい。これで何かの手がかりが得られるといいが」


その日の夜、2人は協会の会長室へと足を進めた。

相変わらず大祭の件で項垂れている節子だったが、瑞稀の顔をみると嬉しそうに笑みを浮かべているようだ。


「まぁ、ご機嫌よう。皆さん、仕事の片手間で各々調査をされてて立派だわ。ごめんなさい、何も力になれてなくて」


「そんな事はないよ。こう言う時こそ冷静に穏やかにいなければね。さっきも噂を聞いて、数人は神楽舞に関する手がかりが得られていると言う事で良いのか?もう夜が更ける。翌日また仕切り直して調査をすれば良い」


「そうね、活動時間も皆さんバラバラだし。颯さんや富士宮さんは夜に動きたいとおっしゃっていたから、手がかりが得られ次第行動することになるかもね」


「では、私達はこれで失礼する。大祭の事、大変だと思うが全てを背負う必要はない。用件が終われば手を貸すことも幾らでも出来るからな」


「前会長のお言葉感謝します。それではお二人ともご機嫌よう。良い夜をお過ごしください」


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