第弐拾伍話 星の舞台
七星邸を離れ、薩摩へと向かった燕と咲羅だったが次に彼女らのいたのは何故か観覧車の中だった。
「燕、良いのか?こんな所で油を売って。下の景色を見ても何も分かる事はないぞ?」
「そんな事ないよ、あっ彼処3人で行った水族館だよね?ジンベイザメ大きかったな。ちゃんと咲羅も探して。星が見られるって事はきっと高い場所にあるって事なんだよ」
「しかし、箱とも同時に書いてあるぞ。室内の可能性もある。一度降りて、探索をした方がいい。後悔しない為にな」
「咲羅は厳しいな。でも、言う通りかも。分かった、周辺に詳しい人がいないかどうか聞き込みをしないとね」
観覧車を降り、街中へ戻ってくると俥夫の姿を2人は視界に納める。
好奇心のまま、燕は彼に話しかけた。
「ねぇ、そこのお兄さん。燕、星が見える場所に行きたいんだけど有名な所。何処か知らない?プラネタリウムみたいな場所ないかな?」
「プラネタリウムじゃないけど、明時館ならあるど。昔、星を観測してた場所で。今は繁華街になってる」
「そう、それ!燕が行きたかったのはそこだよ。燕達をその明時館に連れてって」
しかし、咲羅の体格が大きい為か。2人乗りの人力車が狭くなり、小柄な燕は1人苦しい思いをしていた。
「うぐぐっ!狭い!ダメだよ、咲羅此処で降りたら。燕と一緒に折角来たんだし一緒に目的まで来てもらうからね。ねぇ、俥夫さん。もうちょっと早くつかないの?燕より遅いよ!」
「無茶言うなって、自分より体格の良い男を乗せてるんだからさ。これが限界だよ。そういえば、立派な庭園と水族館は良いのかい?そっちの方が有名だと思うけどね」
「仕事の都合でな、此方に足を運ばなければならないんだ。俥夫、箱と聞いて何か思い浮かぶ事は?」
「さぁ、箱庭がある訳でもあるまいし。でも、舞台の事を箱って言ったりするよな?枠とか、言わん?」
それを聞いた瞬間、燕は星のように目を輝かせ何度も頷いている。
彼女の中でしっくりくるような答えが手に張ったようだ。
「それだ!映画館か劇場かは分からないけど、全部回ったら何か分かるかも!」
しかし、その言葉に咲羅は嫌な予感がし彼女からは目を逸らしていた。
その2時間後には、地図を片手に周辺を歩き回る燕と咲羅の姿があった。
「燕、もう夕方になる。調査はまた明日にしよう。こんなにも数が多いとは思わなかった。鑑賞すれば時間が幾らあっても足りないぞ。どうするつもりだ?」
「そんなの気合いでどうにかするんだよ!大丈夫、映画館は深夜もやってるし。此処からなら最悪、歩いて帰れるよ。日付が変わる前に移動出来れば良いんでしょ?」
こんなにものめり込む性格だと咲羅は思っていなかったようだ。
負けず嫌いなのか?訪問した場所にバツ印を付けて、次へのルートを考えようとする彼女に彼は感心すると同時に項垂れていた。
「燕、少し休憩をしよう。此処の劇場で時代劇をやってるのをポスターで確認した。千秋楽だし、見納めだ。内容が気になるから確認しておきたい」
「おぉ!咲羅が自分からリクエストするなんて珍しい。咲羅が選ぶ物はいつも正解なんだよね。イチゴブッフェも当たりが多いし。じゃあ、気の変わらない内に行こう。チケット残ってるかな?」
そのまま、チケットを手に入れて夜まで劇場に滞在し。
鑑賞後、背伸びをする燕の様子を咲羅は見守っていた。
「殺陣のシーン、迫力があって良かったな」
「うん!燕も時代劇好きだし、結構楽しめたよ。テレビの前と実際に見るのとじゃ全然違うんだね。また、来ようよ。今度は瑞穂や海鴎君を誘ってさ。…あれ、忘れもの?あの箱なんだろう?」
階段か?と思い無視をしようとしたが、それにしては段差が低く足も揃えて昇降する事は難しいだろう。
違和感を覚えた燕は客席から階段を駆け寄りステージ前に向かった。
異変気づいた咲羅も彼女の後を追う。
「燕、どうした?」
「これ、階段じゃない。独立した箱だよ。なんで今まで気付かなかったんだろう。蓋はどっち?何かの切れ目があるって事は開けられるって事だよ」
そう言われれば咲羅は自身の怪力を活かし、箱の中身を開けて見せた。
中身は勿論。神楽舞に関わる巻き物である。
「良し!探し回った甲斐があったね。協力してくれてありがとう、燕のミッションはこれでおしまい」
「…いや、そうとも言い切れない。神楽舞は実行して初めて整理する。最後まで気を抜くな。乙黒家の次期当主であるお前なら分かるだろう?」
「分かったよ。咲羅の言う事は正解だからね、素直に言う事を聞く。じゃあ、亘君に見つかったよって報告しないとね。夜になる前に帰ろうか?」




