第弐話 招集
翌日、望海達と同じ封筒を手にした運び屋達が協会の会議室へと集められた。
見知った顔も多く、自身の真横を見ればいつも喫茶店で過ごしているメンバーである光莉、児玉、零央も座席におり各々カードの裏表を確認したり大事に封筒を持っている者もいる。
「昨夜パニックになって、思わず咲耶おばさまに連絡を入れたんですが。二人や零央君に打ち明けても結末は同じでしたね。まさか、律儀に二十五人の運び屋に合わせてカードを送っているなんて」
「まぁ、ファンレターは何度か貰った事はあるけど。こんなに奇妙な物は初めてだよ。どう思う、玉ちゃん?この絵柄、私に似合うと思う?」
児玉は勿論、望海も彼女が持つカードを見て思わずクスリと笑みを浮かべる。
零央は詳しい事は分からない為、三人の会話の様子を上目遣いで眺めているようだ。
「正に光莉そのものって感じだな。俺も父親としてこのカードが配られたのだとしたら人柄に合わせて選択をしているんだろうな。まるで俺たちの事を良く知っているようだ」
その言葉が終わるのと同時に二人の人物が皆の前へと出た。
それが朝風と亘であり、今回の司会進行役という事になるだろう。
「皆んな、この前のツアーの件。協力して頂いてありがとう。馴染みの無い方も多いだろうから改めて自己紹介をしよう、僕の名前は七星亘。今回、節子嬢は大祭に向けて準備を進めている関係もあって僕が進行役を務めさせてもらう。君達と同じく、手紙を受け取った身だ。解読の為にも是非、皆の力を貸して欲しい」
御三家の関係者にもこの手紙が届いた事もあり、周囲は騒然としており驚きを隠せないようだ。
そもそも、各邸宅は厳重なセキュリティーがかけられており玄関先にも防犯カメラ等があるはずなのだがそれを括り抜けてこの犯行が行われた事になる。
同じ境遇にあるのが、町長の子息である朱鷺田達三人が暮らす家だった。
この場にいた旭は苦い表情をし、朱鷺田も悲しげな表情を浮かべているのを見るに彼らも同じ被害に遭い。
尚且つ、その犯人の正体を掴めないでいるようだった。
そんな中で望海はある疑問を持つ、同棲しているにも関わらず何故か谷川の姿がその場にはなかった。
それだけでなく、身近なメンバーで言うと翼、小町、那須野、剣城、咲羅は不在となっており今回の関係者とは異なるようである。
「ワシの所にも裸の美女が送られて来たぞ。いつのまにか執務室の机の上に置かれておった。皆の者「世界」はワシの手の中にあるぞ。裏にも書かれてあるが、まずは零番から行こうか?誰じゃ、あのカードを持っているのは?」
朝風の言葉に合わせ、望海は挙手をし大声でこう言った。
それと同時に後方で扉の開く音が聞こえる。
足音が彼女の元へ近づき望海は振り返る。
目を合わせたのを合図に黒い封筒を本来の持ち主へと手渡した。
「名誉会長、その事ですが少しお待ちください。もうそろそろ...あっ、圭太!?良かった、間に合ったんですね!」
「もう始まってる?あぁ、僕が一番最初か。レディファーストとはいかないんだね。姉貴からは聞いてるけど、改めて説明するね。僕の元に送られてきたのは「零番:旅人」タロットカードの大アルカナの一つ。愚者ともいうね。裏の内容は「闇夜に出現する朝日に接近せよ」だって。何これ?謎々?」
「まぁ、謎解きは置いといて。今はカードの発表会に専念しようよ。次の人誰?」
光莉の合図に元気良く声を発したのは愛なのだが、何故か彼女は黄泉の腕を操り人形のように持ち上げ無理矢理手を挙げさせているようだ。
「はい!はい!次は黄泉先生です!才能や創造を象徴する、カードですし。正にピッタリのカードだとは思いませんか?」
「はぁ...厄介事には巻き込まれたく無いんだがね。そうだよ、僕が「壱番:奇術師」のカードを持っている。謎解きだが「太陽に照らされた美しき野菜園その中にある舞台に向かえ」だそうだ。パッと思い浮かぶ物は無さそうだが、この僕を呼ぶと言う事は行動範囲内に必ずある場所という事なのかな?」
室内にあるホワイトボードを使い、亘がカードの番号とメッセージを書き込んでいく。
彼が「次の方」と言い終わるよりも先に静かに低い位置で手を挙げたのが浅間だった。
「「弐番:女祭司長」は私です。今回は少し違う内容みたいで、協力者がいるようです。読み上げますね。「黒百合と共に無色かつ色鮮やかに輝く美術館を目指せ」と書いてありました。黒百合って恐らくあの人だと思うの。ただ、無色と色鮮やかって矛盾した言葉だし、それを同時に叶えられる施設ってあるのかしら?」
「大丈夫ですよ、浅間先輩!アタシ達も一緒に探しますから。あぁ、でも自分のミッションがあるんだった」
浅間の手伝いが出来ない事に隣の席にいた希輝は歯痒い思いをしているようだ。
そんな中で一同は恐らく、次のカードの持ち主であろう人物に目星を付ける。それが青葉だった。
「まぁ、そうね。カードに合わせて性別も合わせるなら私は「参番:女帝」でしょうね。内容が少し変わっていて「三姉妹の衣装を用意せよ」になってるの。此処一帯で有名な三姉妹なんていたかしら?それとも何かの比喩表現?衣装もどんな物なのか検討も付かないし、情報待ちかしらね?」
「多分、全部のカードが揃ってその謎が解明された時に全貌が明らかになるんじゃない?と言う事で夫婦で連番とか聞いてないよ。俺、山岸寿彦が「肆番:皇帝」だね。ただ、中身は青葉さんと連動してないみたい。「新星と共に古の儀式を探究せよ」だってさ。この新星って言うのは俺達の同業者って事でいいのかな?運び屋同士にこのカードが送られてるって事はお互いに協力し合えば謎が解けるって意味だと思うけど」
山岸の言葉にハッとした隼と颯はそれぞれ自身のカードを見ているが、首を傾げ考え混んでいるのを見るに確信に迫れるような答えを得る事が難しいようだ。
カードの紹介はまだ続く、それによって明かされる新たな試練と謎に運び屋達は翻弄されていく事になるだろう。




