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第拾弐話 血統

協会の医務室には診察スペースや寝台が設置されており、隣接した扉を開けると別室に繋がっている。

その部屋には冷凍保存された血液が保管されており、各々名前の書かれた試験管を確認する愛の姿があった。

初嶺も助手に就き、機材の起動やセッティングを手早く行っている。


「この中で共通の祖先がいる三人の女性を見つけるとなると富士宮家を軸にするか?朝風家を軸にするのか?で話が違ってくる。前者であれば、望海さんと光莉さん。後者であれば節子お嬢様と瑞稀さん。だとしても、もう一人足りないのか」


「我々が探しているのはあくまでも“三姉妹”一体どなたがその条件を満たすのでしょうね。そもそも、愛さんにこのメッセージが届いた時点で医学的素養が必要な事は私にも理解出来ますが」


今回の舞手に相応しい人物を探る為、反射的に未婚女性の中から選び抜いた数名の血液を専用の機械に投入していく。

結果が出るまでの間、愛は意見が聞きたいとまだ会議室にいた朝風と富士宮に声をかけ部屋に招き入れた。


「今、検査機器にそれぞれの遺伝子データを作成してもらっている所です。夕刻には候補者のデータが出揃うと思います。健康診断ではあくまで貧血や糖尿病などの疾病を検査するものなので、そこまで視野に入っていませんでした」


「いいや、それが君達の本来の仕事なのだから気を落とさないで欲しい。寧ろ、今日一日で結果が出るのなら技術者も機械も優秀だな。医学は日々進歩しているという事か」


富士宮の言葉に愛は照れくさそうな表情をしながらもそれと同時に朝風の方へと頭を下げた。


「朝風名誉会長には感謝しかありません。私はあくまで医者なので機械工学には疎いですし、最新の医療機器についてまだまだ知らない事が沢山あるんです。黄泉先生は多忙な人なので、教えてもらう時間も取れないし。そんな中で手を差し伸べていただいて、こうして設備を整えていただいてありがとうございます」


「まぁ、女子とは仲良くしておくものじゃからな。ワシの考えとしては新たに運び屋として就く者にはこうした遺伝子検査をする事を義務付け出来れば良いと考えちょる。そうすれば、自他共に運び屋である事もどの家系から来た物なのかも可視化できるしな」


二人共、彼の言葉に感心し頷いているようだがその後富士宮の態度が変わり物思いにふけているようだ。


「...少し宜しいでしょうか?私の中で気になる人物がいまして。答えを既に知っているような素振りをしている者がいましてそれが隼なのです。小町に対して何かを期待するような素振りを見せていて。私を小さくしたような容姿をしていると以前、帝国で過ごしていた時に言われた事があります。もしかしたらと思いまして」


自分でも半信半疑なのか?弱々しく言葉を発する彼女の声を愛は聞き逃す事はなかった。

まだ、検査にかけていない小町の血液が入った試験管を手に持ち凝視した後、試験管立てに再度戻した。


「小町さんですか。他にも何か手がかりはありませんか?もしかしたら意外な人物がという事もあり得ますし」


「富士宮、他にもおらんかったか?何か変に納得しとった奴じゃ。隼と同じく涼しい顔をしとった者は?」


「そう言われましても...そうですね。子供の声というのは良く通るもので零央が「リンリンだね、パパ」と口にしているのを聞いた事があります。確か、阿闍梨のカードの時だったと思いますが。その時に旭もポツリと「金箔」と呟いていたのを覚えています」


“金箔”という言葉に愛と朝風はそれぞれ頭にあるイメージが思い浮かんだようだ。


「金箔というと、尾山の名産品ですよね?恐らく、大和のツアーで皆さんが見た神楽鈴に塗装されているからそう言ったのではありませんか?...いや、違うな。もしかして、旭さんが言いたいのって逆の事なのかも」


「金箔は尾山にあり、それに関連する女子と言えば希輝じゃからな。あの二人は親しい間柄じゃろう?旭は何か勘付いたのやもしれん。それに、そのメッキが剥がれればその正体を暴けると思っておるのやもしれんな」


「殿、物騒な事を仰るのはおやめください。彼女本人でさえ、自覚出来ていない事も沢山あると思います。無意識に隠し事をしてしまう事もあるでしょう。しかし、年頃の女性ですから華美な衣服を身に纏い。髪を染める事もあるでしょう。実際、光莉のような少女もいますから。しかし、そうか。恐れながら見てみたいな、彼女の本当の姿を。出来るだけ彼女を傷つけない方法で。...あっ!?」


次の瞬間、富士宮は何か閃いたのか?

突然、朝風のコートを脱がし奪おうとする。

その様子に彼は赤面し、わざと照れたような仕草をした。


「なんじゃ富士宮!日も落ちておらんというのに積極的じゃのぅ。そこまでしてワシの心と身体を奪いたいんか!?」


「殿、私が貴方から奪いたいのは花紋鏡です!あの、真実を照らす鏡があれば彼女の本来の姿も見えるのではないか?と。まだ、会議室に滞在していると思いますし確かめてみるべきでは?」


愛は検査の結果を見守る為、此処から出る事は遠慮し朝風は富士宮の言う通り鏡を手に持ち彼女と共に再び会議室へと向かった。

扉の隙間から鏡を当てがい、希輝がその中に入るように動きを合わせている。

しかし、その中にはまるで別人と言えるような姿があった。


「...ん?望海?いや、違うな。癖毛だし、メガネをかけているみたいだ。頬に雀斑(そばかす)もあるみたいだし。ガリ勉と言えばいいのだろうか?真面目な少女のように見えますね」


「女子とは恐ろしいのぉ。これだけ変われるとは。しかし、人間はそんな簡単に変われるものではない。その根幹というものは変わらんのかもしれんな。それ以上に血統は嘘をつかん。これは結果が楽しみじゃな」


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