8話 『~聖剣伝説~ 姫君とモノカキは少女を救う』①
君のイライラ。
直るの?
―――クラディ 視点―――
数時間前の話をしよう。
シアと別れ、俺は城へ行った。
さすがは姫というだけあって、町民が馬車を見て頭を下げていた。
俺はこんな気分を味わったのは初めてだったので少し浮かれていたが、シアの話が心に残っていて少し口数が少なかった。
城は豪華の極みといった感じで、色々と光っていた。
姫様が、趣味ではないが王としての威厳とかで色々と豪華な方がいいらしい。
これも権力の一部になるのだろう。慣れていない俺は、扉の細かい彫刻の一つにまで目を見張るような感じになっていたと思う。
そして、一つの扉の前に来た。
一番豪華なそれは、横に佇んでいた兵にゆっくりと開けられる。
そして、二人の美形な男女が現れた。
一人は知っている顔。つまり、姫様のお父さん。オリエルさんである。
そして、隣の美人の女の人。つまり姫様のお母さん。名前だけは聞いたことがあるマリア・シャラ・トルト様である。
名高い方は、何故かマリア様のほうである。恐いのか心配だったが、迎えてくれた時の笑顔を見てほっとした。
つまり、今現在。王様と対面中なのである。
「早速結婚式を―――」
王妃様はもう承諾しているのか……。
俺は、話についていけないので少し考え事をしている。
シアは、一人で村の為に働いていた。
それも、取得が難しい技を学んで。
「ほぉ、狙われたね。旅の途中に何かあったかい?」
「大丈夫ったぞ。あ、大丈夫でした……」
さすがの、姫様も自分の母親には勝てないようだ。
だが、俺はシアの事を考えていたからか、口が滑ってこんな事を言ってしまった。
「イルシアって子が居るんですけど、その子の村、色々と危険があって旅をしながらお金を稼いでいるみたいなんです」
言ってから気づいた。
何でこんな話をしたんだろう。
周りに居る三人は、驚いた顔をしている。
「村か……、国境沿いの村かね?」
「え、えぇと、確かそうだったと思います……」
「そうか……、私も悩まされ―――」
そこまで、言ったときだった……。
「何故、言わなかった!!今から、行くぞ。父上も早く言ってくれれば私が行ったものを……」
父親、母親の言葉も聞かず、俺の手をとって、部屋から出てしまう姫様。
外で、待機していたフーとボフストが驚いた顔をしていたが、納得したように付いてくる。
失言だったとさっきは思ったが、俺は今はこれでいいと思っている。
俺には、助けに行く勇気がなかったんだ。
だから、俺は姫様に頼った……。
心の隅では思っていたんだろう。
そんな事を考えているうちに、門のところまで来てしまった。
「本当に行くの?」
「あぁ、紙と筆、防具は軽い物でいいな。お前らはそれでいいか?」
「できれば、新調したいのですが……」
「では、フーの槍を買いに武具屋に行く。それから、ボフスト、お前も酷い装備だ。買うぞ」
「俺は、強制的か……。故郷の思い出が詰まっているんだが……」
「とっておけばいいだろう。行くぞ」
俺の武器はどうなっているんだろう。
俺は、戦わなくてもいいのだろうか?
だが、俺は言い出した本人だ。一人だけ逃げているなんて無理だ。
「俺も戦う!」
「あぁ、その力、十分……いや、十二分使わせてもらうぞ。父上も人が悪いな」
「って、うわぁっ!」
馬車に乗せられ急発進したので、俺は変な声をあげてしまった。
もう少し、落ち着きのある人を目指した方がいいかも……いや、目指して欲しい。
「あそこでいいな?」
走る馬車を止めて、武具屋の中に入って行く。
俺は、何故か中へ入れてもらえなく、仕方がないので字のでも書くことにした。
それから、十分ぐらいで、戻ってくる。
交渉など一切せず、質の良い物を金貨をたくさん出して買ったんだろう。
光っている武器と防具が眩しい。
「かなり丈夫だな……、この国の技術はすげぇな」
「ボフストは違う国から来たんだったね」
「あぁ、これなら龍でも倒せそうだ」
「無理だよ」
二人して笑う。
だが、隣に居る姫様が気が動転したんじゃないかと言うおかしなことを言った。
「クラが居れば勝てるぞ。なんたって最強だからな」
「俺?」
「あぁ、クラだ」
確認すると、ボフストの笑いが硬いものになる。
フィーカも目を瞑っているから分からないが、冷や汗を掻いているように見える。
俺なんか、知識だけの役に立たない奴なのに、何で俺が居れば勝てるんだろう。
それだけ信頼していると言う事だろうか。
「ありがとう」
少し、驚いた顔をして、向こうも返して来てくれた。
「どういたしまして……だな」
それから、少しすると城下町を出て草原のようなところに出た。
そして、あることに気づいた。
「村の場所は?」
「知らない」
「知らない……が……」
「知りません」
「私も知らんぞ」
風に揺られてさらさらと草が靡いている中、考えても埒が明かないので取り合えず進む事になった。
ティルア城方向から来たということは、そっち方向の村かも知れないので、そっちに進む事になる。
この時点で、姫様の脳内には戻ると言う選択肢が無いようだ。
「三日したらティルア城へ着く。食い物などを補充したら、また進むぞ」
「はぁ……、いいんですか?」
「何がだ?」
「……もういいです」
親が心配していると言う事がわからないのだろうか……。
兵も出せないところに自分の娘を送るなんて……。
まぁ、聖剣も持った……。
「あれぇえ!!聖剣は!?」
「勿論、置いてきた。必要ないからな。それに、一度王家へ預けないといけないのだ……。全くめんどくさいことこの上ない」
「じゃ、じゃぁ何を使うんで?」
「昔から使っていた剣だ。切れ味はいいぞ……」
不敵な笑いが、今は恐い……。
まぁ、それが頼もしいものに変わる時が来ると信じていよう。
☆
あの時の川だ。
魚が時々跳ね、小さな水の流れる音が聞こえる。
「振り回されてばかり……でも満足……。う~ん……自分から行動できるようになった方が……いいんだよな……」
自分の不甲斐なさに、少し落ち込むが、姫様の行動力がありすぎると言う事でまとめた。
実際、そうなのだから誰も文句は言わないだろう。
「……地図を買えばよかった……」
昔は旅をしていたので、ここらへんの地形は頭に入っているのだが、今から行く国境近くの地形は頭に入っていない。
ギルドに行ったら、確認しておく必要がありそうだ。幸い、ティルア城に着いたら近くに町があるのでそこで見よう。
そう決め、俺は馬車のある所へ戻り、眠りについた。
☆
―――姫君 視点―――
私が起きるとそこには、クラの寝顔があった……。
ならば、やる事は一つだろう。
……おはようのキス……と言ったところか……。
クラも喜んでくれるはずだ……たぶん。
「起きるなよ~」
失敗フラグだぞ~と言う言葉が頭の中に響いているが、そんな事はどうでもいい。
今しかない!
目が見開かれる。
……クラの……。
「ひやぁっ!」
「まてぃっ!」
肩を掴み……キスする……。
「チッ、頬っぺたか……」
「あ、危なかった……」
「夫婦なのだ、気にするな。では、もう一回……」
「い、いやぁ、それは……」
「男だろう!」
「その前に人間でありまするで!」
「……雰囲気ぶち壊しだな……」
語尾が可笑しくなっているしな……。
ここで、緊張しすぎるのもいかんか……。
逆効果とはこの事……しかし、何故こんなに拒絶するのだ……。
考えてもわからない。
今日の寝込みを襲おうか。
そう決め、フーとボフストを持ち、馬車に乗せる。
「行くぞ!」
「ち、力持ち……なんですね……」
何故敬語……。まぁ、気にしないでおこう。
馬車の運転の仕方は少ししか教わっていないので、不安だったが、何とか感じをつかむ事ができた。
山道も終わり、また草原に戻る。
その間、フーが一度起きた。
ボフストは、二度起き、二度気絶した。
「姫様……」
「ん?」
耳を傾けてみると、魔物が居るらしい。
嬉しい事だ、少しイライラしてきたところだからな。
☆
「弱い……」
血の付いた剣を一振りし、血を飛ばす。
布で拭き取り鞘に仕舞う。
「私の出る必要などありませんでしたね。さすが姫様です」
「あ、あぁ」
何か、寒気がするのだが、気のせいだろう。
死骸は……まぁ、放って置いても大丈夫だろう。
「ここら辺の魔物は弱いですからね。もう少しでかい森などに行ったら強い魔物もいるでしょう。この国は戦争など一切起こしませんから、魔物討伐に力を入れることができますからね」
「平和なのはいいことだ。しかしな……」
この国だって、全く利益が無いわけではないのだがな……。
私も、人々の戦いが無いのはいい事だとわかってはいるが、この欲求はどうしたものか……。
もやもや、した気持ちのまま、馬車を走らせる。
その内、昼になって馬車を止める。
さて……どうしたもの……ん?
「そうだ。フー、私と戦え」
「ひ、姫様?」
「体を動かすに申し分ない相手だからな」
「ひ、ひめさまぁ……私嬉しいです!」
また、寒気だ。
少し暖かい季節になってきたと思ったのだが……風が吹くと寒さを感じるな。
「では、行きますよ……」
「あぁ、こい。思いっきりだ。ボフスト、危なくなったら止めてくれ」
「それはいいんだが……大丈夫か?」
「食後の運動程度で済ます」
「姫様も仰っています!」
また、寒気だ……。
なんだろうな……。
「では、開始」
「はあっ!」
「ふっ」
―――ガキンッ
振られた槍を避け、剣を槍にぶつける。
そのまま、蹴りを放つ。
「なっ!」
蹴りは空を切る。
体勢を低くして避けたようだ。そのまま、後ろへ下がって槍を引き抜く。
「はあっ!」
空間を捻り、空中を浮かぶ。
「本気ですか……、ならっ!」
手元を狙って、槍を突く。
それを、避ける……が。
「はあっ!」
空を切った槍は、そのまま地面に突き刺さりフーが飛ぶ。
そのまま、蹴りを入れるのか……。
「だが、素直に入れさせん!」
体全体を浮かせていると、使い勝手が悪いのだが、後ろへ下がるぐらいはできる。
しかし、それも予測されていたようだ、前転の要領で槍を地面から引き抜き放つ。
「クッ」
剣で弾くが、地面に落ち、腰を打つ。
「そこまでだ」
槍が喉元に突きつけられている。
「フーの勝ち……か」
「そんな……ありえない……」
「いや、運動ぐらいにはなったぞ」
「……まさか、本気を出して……いなかったんですか?」
「まぁ……その、アレだ。その……だな……」
言い訳は見苦しい。
言ってしまおう。
「全力は出していなかった!」
「ま、眩しいです!」
「時々、お前は変な世界へ行ってるな……」
さて、出発する……クラの昼寝か……。
「さぁ、姫様出発しましょう!!」
「あ、ちょっと待て。クラ!おいクラ!」
「あう?んぅ~、あぁ、寝てたみたいだ」
しまった!
しょうがない……寝込みまで待つことにするか……。
フーの尊敬の眼差しのような物を受けながら、馬車を出発させた。
『後書きと言うの雑談会』
作『忘れてた……』
シタ『少し、待っていてくれ。一度殺してくる』
クラ『あぁ、俺もだ』
ボフ『俺も行くぞ』
フー『賛同する……』
作『まぁ、落ち着け。雑談はざつだんと読み、ぎゃくさつとは読まなギャァアア!!』
シタ『すっきりしたな』
フー『馬鹿ですね』
クラ『アホは始末した。俺からも謝っておく』
ボフ『すまなかったな』
作『(次回予告~)』
作『(次回!不意打ち?ダメ押し?『~聖剣伝説~ ファーストの相手』②です)』
クラ『まだ、息があるぞ!』
シタ『殺れ』
フー『了解!!』