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7話 『森のお友達』

きっと君は悲しみを背負う。

それを無にできるのなら、ぼくは戦おう。

 ―――クラディ 視点―――

 

 聖剣騒ぎとは関係なく、荷物を準備している途中に足の小指を打ったところが紫色に変わってきた頃、俺達は馬車の中に居た。

 さすがと言うべきか、中々広く子供だとしたら8人は座れるぐらいの大きさだ。

 だが、ここには俺と姫様とルーさんとフィーカしか居ない。

 護衛一人に侍女一人。そして何故か護衛対象になっている俺と姫様。

 俺達は、前方でも後方でもなく、その真ん中を馬車で走っていた。

 

「暇だ……キスするぞ」

「その発想が可笑しい」

「何だ、嫌か?」

「いや、まだ結婚してないし」

「そうだったな。結婚はまだお預けだったな」

「え、そうだったの?」

 

 てっきり、学院を中退して結婚するとか言い出しそうだと思っていたので少し意外だった。

 

「学院は10歳から入り、20歳まで勉学を受けられる。私は丁度中間なのだ。ここからが醍醐味(だいごみ)の勉学と言える時期なのでな。まだ少し先になるな……」

「襲われたってことは、何処かの国と戦争が起きるかも知れないんだろ?だったら、まだ先になるんじゃないか?」

「……まぁ、大丈夫だろう。なんたってこっちには聖剣とクラがいるからな」

 

 俺は、いつから聖剣と同等になったんだろう……。

 まぁ、心強いと言う事なのだろう。

 

「ありがとう。そういえばボフストは?」

 

 サルタも一様護衛対象なのでそっちだろうか?

 

「いや、少しな……」

「ん?どうしたの?」

「……実はな……」

 

 なんだろう。

 もしかして怪我でもしたんだろうか……。

 

「動物を使って馬車を引くなんていけないことだ!と、言っていたからな……。少し鳩尾に一発……」

「それって、本当に一発?」

「……気絶するまで」

「かわいそうだ……」

 

 悲惨だ……。

 でも、忘れてたけど動物を崇めてたんだったよな。

 動物が敵の時は言い方は悪いけど役に立たないと言う事か。

 

「もう少しで、駐留所に着きます。そこでお昼にしましょう」

「聞いたか、フー。やっと外へ出られるぞ!」

「……むにゃ……はぃ?」

 

 そういえば、口数が少ないと思ったら暇すぎて寝ていたようだ。

 気づかなかった。

 

「何だ、寝ていたのか。すまなかったな」

「い、いぃいい、いえ。滅相もございません。姫様にあんな返事をしてしまうなど……切腹いたします……」

「いいから、槍をしまえ。ここではでかすぎる」

「は、はい。すいません」

 

 この人は意外に天然なのだろうか。

 いや、絶対に寝ぼけているだけだ。

 

 少しすると、駐留所に着いた。

 行商人の馬車もいくつかあり、その中でももっとも派手だったのがフィーカのところの馬車だった。

 フィーカのお父さんのカシロアさんは乗っていないようだったが、色々な話を聞くことができた。

 

「いい人だったな」

「あぁ、裏で取引をしている奴等もいるが、お前のところは心配要らないな。今度行って見るとしよう」

「ひ、姫様……」

 

 やっぱり恥ずかしいのだろうか。

 しかし、その考えを右斜めの物凄く上のほうへ飛んでいった。

 

「親に顔を見せに行く、だなんて……」

 

 さっきの言葉がどんな風に脳内変換されたか見てみたい。

 

「そろそろ昼だ。行くぞ」

 

 三日の旅なので、少し日持ちする食材ばかりの料理だった。

 だが、一流の料理人が作る料理はいつ食べてもおいしいものだ。

 いつかお礼を言わなければと思いながらも、パンやスープを食べていった。

 

 そして、時は訪れた。

 俺は、巻き込まれるのが確定している。

 この時そう思った。

 

「魚が食べたい!」

「ッ!!」

「!?」

「なっ!」

 

 これに反応したのは三人。

 上からフィーカ、サルタ、俺だ。

 そして、全員で近くの川に行く事になった。

 気絶から目覚めたボフストを洗脳するように護衛として川に連れて行った。

 勿論、ルーさんも一緒に来ている。

 

「では、釣りを始める」

「じゃあ、頑張ってください」

「おぉ、釣竿は3本か。私とサルタ、ボフストは?」

「俺は、護衛だ」

 

 ニヤニヤしながら言う。

 

「ルーは?」

「私は侍女ですので……」

 

 少し口元が釣りあがっている。

 

「フーは……寝ているな」

 

 そして、必然的に俺が最後の一本を握る事となった。

 

 そして、10分が経った頃だろうか?

 姫様はとんでもない事を言い出した。

 

「暇つぶしにならない……」

「……本気で言ってるんですか?」

 

 釣りとはこののほほんとした時間を楽しむものではないのだろうか?

 少なくとも、俺はそう思っている。

 

「……クラに頼るのもな……。餌を変えてみるか」

 

 今までは、何故か用意されていた高級餌だったのだが、もっといいものがあるのだろうか?

 

「って、それ魚をそのままつけてますよね!?」

「いや、これは餌だ」

 

 本心がすけすけだ。

 

「おぉ、きたぞ!」

 

 サルタの竿に魚が食いついたらしい。

 

「帰るぞ。もう、飽きた」

「やった~、解放だ」

「それでは、片付けも整いましたし帰らせていただきます」

「……おっと、姫様。大丈夫ですか?」

 

 起きたらしいフィーカが言う。

 今日はぽかぽかしているので寒い毎日が続く時期では珍しいことなので昼寝をついついしたくなってしまうんだろう。

 野狐などが寝ている姿は愛らしい。

 

「あぁ、大丈夫だ。ボフスト、竿を持ってくれ」

「あいよ。さて、帰るぞ」

 

 そういえば、あの化け狐は何をしているだろうか。

 また、魔物に襲われてなければいいんだが……。

 

 ☆

 

 ―――フィーカ 視点―――

 

「すいません、少し眠ります……」

「お前には、私の衣類などの準備までさせていたからな。こっちこそすまない。休んでくれていいぞ」

「ありがとうございます」

 

 私達は、駐留所からまた走り出し、現在は魔物に出会(でくわ)すこともなく、順調に進んでいた。

 少しの振動を感じながら私は目を瞑る。

 さっきは、姫様が出てきて……あぁ……。

 

 少しすると、私の思考にもやが掛かってくる。

 そろそろ眠る頃だろうか……。

 

『助けてくれる?』

 

 ッ!?

 確かに聞こえた。

 だが、目を開けて周りを見る事はできない。

 

『もう少しすると大きな橋があるの。その下に居るから』

 

 なんだろう。

 言った方がいいのだろうか……。

 そこで、緊張の糸が切れたように目を開けた。

 

「ん、起きたか。一時間くらいだったな」

「姫様……実は―――」

 

 全てを話そう。

 

 

 ☆

 

 

 ―――イルシア 視点―――

 

「私の名前はイルシア……って、繋がってないね……」

 

 さっきまで、繋がってたんだけどな……。

 まぁ、救援信号完了?

 

「……眠っている人にしか効かないという粗悪品……。まぁ、魔法道具(マジックアイテム)だし……、魔法みたいにはいかないか……」

 

 最後に、本物は知らないけどね、と付け足しておく。

 いつか来るであろう命の恩人を、待ちながらメイト(れんきん)する。

 川の水を、綺麗に変えて……、王都の近くには川が少ないから結構高く売れたり売れなかったり……。

 

「はぁ~~、どうしよう……。来なかったら一生ここで水だけの暮らし……、うぅ……」

 

 村の皆の期待を背負った私。

 でも、こんなところで朽ちるのは嫌だ。

 

 目の前の川は魚が自由に泳いでいる。

 それを、私は見る事しかできない。

 少し、水の中に入ってみることにした。

 きっと、水の中は気持ちいいと思うから。

 

 

 ―――クラディ 視点―――

 

 本当に居た。

 一人の少女……だが、俺の経験と知識からして、アレは危険人物だ。

 まず、熊と戦っている。

 鮭の取り合いは凄まじいものだ。

 そして、川岸に置いてある道具。これは、錬金術の道具だろう。

 

「そして、あの格好。ほとんど裸だね」

 

 まぁ、水の中に入るのだから、わかるのだが、人を呼びつけておいてその格好はないと思う。

 

「フィーカ、この子?」

「いや、私も姿までは……。声を聞けばわかる」

「じゃあ、呼びかけてみてよ」

「……いや、気づいたみたいだぞ?」

「ひ、姫様……。その格好は……」

「私も水遊びがしたいのでな」

 

 自分勝手とはこの事だろう。

 はしゃぐ姫様を見ながら思う。

 ボフストは気絶させられたままなのだろうか。

 この光景を見られなくて残念……もとい、体は大丈夫なのだろうか。

 

「クラ、行くぞ」

「え、ちょっと、俺は服着たままだかっぁあ!?」

 

 ―――バシャーン

 

 

 全身水だらけだ。

 後で、ルーさんに頼んで変えの服をもらおう。

 だから、今は遊んで―――。

 

「誰ですか?」

 

 俺達の方向を見ている少女は、不思議そうに見ている。

 飛び込んだとき、こっちに気づいたんだろう。

 

「えぇと、君が呼んだの?」

 

 周りでフィーカと姫様が遊んでいる。

 呼ばれたのはフィーカなのに……。

 

「はぁああ~~」

 

 すごく、幸せそうな顔で見ている。

 俺は、何かしたんだろうか?

 

「命の恩人さんですね!」

「え、えっと……」

 

 見ているだけで暇が潰せそうな少女だ。

 俺は、どうすればいいんだろう。

 

「あ、私の名前は、イルシア・アルーです。シアって呼んでくださいね。恩人さん♪」

「あ、あぁ、恩人様……ね」

 

 すごく厚かましい……のか……いや、素なのだろう。

 まぁ、恥じらいのない乙女は俺の周りにたくさん居るから問題はないが。

 

「おいクラ。その子は?」

 

 それは、良人に対する口の利き方なのだろうか。

 時々思う。

 

「あぁ、この子が―――」

「どうも、えっと命の恩人さんの……」

「奥様だ」

「奥様♪」

 

 ……俺は何も聞いていないし見ていない。

 そして、できることなら関わりたくない。

 

「クラ……浮気か……」

「なにっ!?」

 

 クッ、フィーカの策略か!

 

「逃げ―――」

 

 

 ―――ドバシャァァアー

 

 

 本日二回目のダイビングをしてしまった俺は、すぐさま姫様に縛り付けられ怪我している小指を夜まで弄くられた。

 感覚がないのだが、どうしようか。

 

「クラ、飯だ」

 

 これは、一国の姫君としてどうなのだろうか。

 時々思う……。

 

「今いい。小指が大変な事になってるから」

 

 紫を通り越して青色になっている俺の小指は、今日はもう歩かないよね?と聞いているようだった。

 聞いている辺り、俺の小指らしいだろう。

 

「今日はもう寝るか……」

 

 目を……瞑れなかった。

 

「目蓋を放してくれるかな?眠りたいんだけど」

「いえ、恩人さんの為に一つ錬金(メイト)してみたいと思います」

「しなくていいです」

 

 もう一つ、俺は眠たいんです、と付け加え眠りに付く。

 はずが、小指に断続的に走る激痛が心地悪く俺を起こしてくれた。

 

「さて、広いところでやりましょうか」

「そうだね。完成品を持ってきて」

「酷いです……」

 

 たしか、錬金(メイト)は体力を使うから錬金術師(アイテムメーカー)の人たちは特別な時か自分の都合の時にしか錬金(れんきん)をしないと聞いたことがあるんだけど……。

 まぁ、俺の周りの連中にそんな物(じょうしき)など求めてはいけないと思い直し、しょうがなく付いてくことにした。

 小指が泣いていたが、シアの顔を見ていたらどうでもよくなった。

 

「と言うわけで、この川の水を純粋に変えます」

「分かりにくいね」

 

 こうゆうのは相手への考慮とかが必要なのだと思う。

 俺自身、考慮のない人間は苦手だ。姫様とかは何だかんだ言って面倒見がいいからな。

 そして、ここが河原というのも問題だ。

 でこぼこした土地が俺の小指を苛めてくる。

 

「では、いきますよ」

 

 複数の魔方陣が書かれた紙と、水の入った容器を目の前に並べるシア。

 俺は取り合えずでこぼこしていないところを見つけて座った。

 

「世界の理を変える存在よ。汝の力でこれを幻影に変え新たなるぶっひゃい……に変えよ」

 

 途中で噛んだけど、大丈夫なのだろうか……。しかも、直さなかったし。

 

 だが、俺の予想に反して魔方陣が紫から青、そして緑などさまざまな色に変わっていき、一分間ぐらい続いたそれが止むと、水の入った容器を俺に見せてくる。

 残念だが、変わったようには見えない。

 

「どうですか!」

「……あぁ、すごいね。これなら武器とかも作れるんじゃないの?」

 

 わからないが褒めておく。

 行商人として致命的なミスだと思うが、褒めておく。

 

「武器は……作りたくないの……」

「え、あ、そう……なんだ」

 

 いきなり暗い雰囲気になってしまった。

 好奇心が強いのか、俺は聞いてしまった。

 

「何で作りたくないの?」

「え、えぇと……それは……その……」

 

 やっぱり、言いたくないんだろう。

 会ったばかりの人間、いくら恩人だからと言って話す訳ないだろう。

 

「実は―――」

 

 最初の反応は何だったんだろう。

 俺は、その疑問を押し殺した。

 

「私の村……盗賊とか魔物とか……色々襲ってくるんです。それも頻繁に……。国境沿いの村だから……」

 

 大きな兵を動かしたら敵意があるとみなされて戦争が起こるからか。

 仕方ないと思うが、尚更武器を作った方がいいと思う。

 

「人殺しなんて……したくないんです」

「え……」

 

 泣いていた。

 俺より小さく見える子なのに、しっかりしている。

 

「そうなんだ。偉いね……君は……」

 

 武器を作って戦った方がいいなんて考えた俺は馬鹿だろう。

 戦わないという選択肢を見ていないなんて。

 

「私……、だがら……皆のためにでぎるごどをって……うぅ……」

 

 泣いている彼女を俺は慰める事もできずに、ただ見ていることしかできなかった。

 それは、一つの選択肢になるけど、間違っているような気がしてならない。

 俺は、彼女の気持ちをわかったあげられないということだ。

 悲しいという気持ちと、後ろめたいという気持ちが俺の心の中で溢れていった。

 

 その内、泣き止むと立ち上がって一言言うとシアは走っていった。

 

「気にしないでください。村の皆で頑張って何とかする問題ですから」

 

 最後に言ったこの言葉が響く。

 俺は、ずいぶんと平和な暮らしをしていたんだな……そう思った。

 

 結局、シアは王都まで付いてきたが、それからは別に行動することになった。

 その時、記念にと硝子でできた人形をもらった。それは俺に似ていた。


『後書きと言う名の雑談会』


作『いきなりですが、お知らせです』

クラ『何だ?』

作『自分の文章力不足のせいで次の話から少し、短くなります』

シタ『この話も短いぞ……』

作『作者の文章不足を呪ってください』

ボフ『呪ったら、もっと文章力がなくなるんじゃないか?』

作『作者を誰か導いてください』

フー『いつか、私達の物語がメチャクチャになりそうですね。なる前に斬りますか?』

作『残念だが、お前の得物は槍だ。自分は全身フルアーマーだから効かない。前が見えないがな!!』

ルー『さて、次回予告です』

作『いいところもってかれた!?』


フー『次回!暴れ馬?それとも導きの光?『~聖剣伝説~ 姫君とモノカキは少女を救う』①だ。暴れ馬って何だ?』

作『それは、勿論姫さ……ふるあーまー!!』

シタ『しるかぁああ!!』


作『ほら……暴れ馬……だ……(カクッ)』

クラ『所詮お前も被害者だ』


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