表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/30

6話 『色々とあるが聖剣優先』

復讐の為、牙を砥ぐ者。

羽がない小鳥はどうやって翼を手に入れる?

 ―――姫君 視点―――

 

 私が、この城に入れるのは明後日まで、それからは王都の学院に帰ることになってしまう。

 約束だったので、仕方がないが少し名残惜しい。

 そこに、一通の手紙が来た。

 

『シタよ。聖剣とその他王家の秘宝を回収後、王都へ帰還せよ』

 

 私は、思った。

 蝋燭の明かり一つで、クラと地下を探検する。

 いい案だ。

 思い出にも残る品。

 私は、席を立ちクラを連れに走っていった。

 

 

 ☆

 

 

 ―――??? 視点―――

 

 ルティア城。そこに今回の獲物が居る。

 いくつかの王家の宝と共に、姫君の暗殺。たしか侯爵の息子、サルタとか言う餓鬼も居たな。

 報酬を二割り増しにしてもらおうか。

 

「しかし、兄貴はいいよな。これで、貴族の仲間入りだろ?ふざけてるよ」

「クフフ、言うな。面白いじゃないか。あの王は何を考えてるのかもわからないからな……」

「そう?」

 

 落ちぶれた、人形を拾った王は、それを再利用しようと考えた。

 そして、作り直した人形に命令した。

 

 姫君暗殺を……。

 

「さて、城の地下だっけ?一人で行くなんてアホだね」

「いや、クラディとか言う貧弱な平民を連れて行くようだよ」

「ん?平民?」

 

 王族が平民と二人きりなんてありえないことだ。

 何か情報を集めた方がよさようだ。

 だが、今はまだ……。

 

「表舞台に立つのは苦手だよ」

「裏で仕事するのが性に合ってるか」

「取り合えず人数は?」

「多すぎると怪しまれるな……俺達を含めず5人くらいかね?」

「用意しておくよ。呪術師は?」

「一人でいい。あまり使えないだろ?」

「そうだったね。魔法使いがいたらいいのにな~」

「滅んだ連中か。神が奪った魔力。取り戻すのが最終目的にしておくか?」

「兄貴の言う事は偶に度肝を抜くよ」

「冗談だよ。行くぞ」

 

 力を奪われた人形は、仕返しをする為牙を研ぐ。

 人間を立たせるのは狂気と嫉妬心だけだ。

 俺の力を強くするためなら何でもやろう。

 力を求める人形を人間に戻す為に……。

 

 

 ☆

 

 

 ―――クラディ 視点―――

 

 暗い通路に、少ししかない灯り。

 じめじめしていて、湿っぽい道がただただ続いている。

 その中で、温度を感じさせているのは、俺の右腕だけだ。

 

「姫様、離れてくれませんか?」

「夫婦」

「………」

 

 さっきからこの調子で、目的地に辿り着けるのだろうか。

 安全だと言われて姫様や俺、後ろにボフストとフーが居るが、全員武装をしていない。

 しかし、何故か俺は紙と筆を持たされている。

 何故だろう。

 聖剣の回収が目的だと言っていたので、報告書でも書くのだろうか。

 だが、俺だけの敵がここに居た。

 後ろから感じる殺気……だろうか。

 それがグサグサと俺の体内の内臓部分に突き刺さるように痛む。

 フィーカだろうが、ここは話さない方が身の為だろう。

 肩が叩かれる。

 

「ん、何?」

「……そのまま歩け」

 

 小さな声で言われる。

 できるだけ、声を小さくして前を向きながら話す。

 

「……何か気配がする」

「……本当?」

「……私も感じるな」

「……武装をしてきませんでしたが……」

「……人数は?」

 

 一人や二人だったら、姫様の侍女の可能性だってあるし、ルーさんも最初誘っていたのでその可能性もある。

 

「……3~5人だな……。残念ながら敵のようだ」

「え、本当!」

 

 思わず大きな声がでてしまった。

 ボフストに口を押さえられ、何とか落ち着く。

 

「……本当なの?」

「……あぁ、もうすぐ来るな」

 

 どうしよう。

 走って逃げたって行き止まりだ。

 

「……走るぞ」

「……え?」

「……行き止まりだぞ?」

「……姫様、ここは私に任せて―――」

「……私に策がある。任せろ」

 

 沈黙が訪れる。

 俺の足は治っている、だから全速力で走れば奥に着くまでは走りきれるだろう。

 この通路は狭いので突っ込んで押し倒すという方法も使えない。

 ましてや、相手が武器を持っていたらお手上げだ。

 

「行くぞ!!」

 

 声にあわせて、走る。

 敵の方も少し遅れて走るような足音が聞こえる。

 

「前よりも早く着いたな。クラ、その紙に『王家に眠る聖剣の封印を解く』と書け」

「それが作戦!?」

「いいから!」

「は、はぃいい」

 

 本当に恐かった。

 角でも生えていると思った。

 それよりも、俺は紙に文字を書かなくてはいけない。

 チラッと、聖剣らしき剣が見えたのだが、硝子のように透き通っていて、色は無く封印されていることがわかる。

 

「え~と、『王家に眠る聖剣の封印を解く』書けたよ!」

 

 現代文字は、すでに覚えた。

 文字同士を組み合わせていき言葉が完成するという物なので覚えるのはそう難しくなかった。

 

「……外れないな……。いや、待てよ……」

 

 なにやら小さな声で話し始める。

 失敗したのだろうか?

 いや、俺が紙に文字を書いただけで作戦とはいえないだろう。

 この紙をどうにかするのだろうか。

 

「……そうか。……古代文字だ。古代文字で書け。もう一度だ」

「え、えぇ!?」

 

 古代文字は複雑なものが多く覚えにくい。

 いや、何処かで見た事があるかもしれない。

 

「大丈夫なのかよ?」

「姫様……」

「私ではなく今はクラを信じる事だな」

「お、俺!?」

 

 分からないが、やる事ができたのならやるしかない。

 そう思いながらも、手は震える。

 書きにくいが、書けないほどじゃない。

 

『王家に眠る聖剣の封印を解く』

 

 できた。

 足音が聞こえてくる。

 黒い装束に身を包み、所々に刃のように尖った防具を付け両刃の剣を持っている。

 

「でかしたぞ!」

「え、うわっ!?」

 

 最初に入ってきた相手が構えた瞬間に光が広がる。

 目の前には白い空間が広がっているように見えるだけで、何も無い。

 

「勝てるぞ」

「はぃ?」

 

 俺の目の前に世界が戻った時には先頭に居た黒の装束を着た男が倒れていた。

 

「聖剣か」

「まさに、戦女神です……」

「え、え?どうなってるの?」

 

 まさか、聖剣が悪しき心に反応して封印を解いたのだろうか。

 そうなると、意思を持つ剣ということになるが、喋る気配は無い。

 何か特別な条件が揃ったのだろうか。

 と言う事は、俺の書いた紙も条件の一部ということか。

 まぁ、大半は姫様の能力だろうけど。

 

「剣術は幼いときからやっているからな。相手をしてやる。掛かって来い」

 

 新たに、4人の男が出てくる。

 一人は露出が所々ある黒服。

 そしてその隣に居る人物は身軽な服装をしている。

 後は呪術師の服を着た男が一人と、さっき倒れた奴と同じ服の男が一人だ。

 

「ほぉ、聖剣まであるのか。王家ってのは恐ろしいね。だが、俺が強くなるための足場となってもらうよ」

「何だ。強くなりたいのか?ならここで逃げた方がいい。強くなる前に死ぬからな」

 

 聖剣は、両刃なのだが、血は付いていない。

 さっき人を斬ったはずなのにだ。

 

「下がってたほうがいいのかな……」

「私も槍さえあれば……」

「いいから下がっていろ。呪術師は危険だ。呪いなんて使われたら厄介だからな」

 

 呪術師は、魔法使いが滅んだ後、トルト国の隣のノーベ国が魔法研究をしてできたものだ。

 だが、魔法のように自然を司ることなはく、闇に染まった魔法と言われている。

 

「こないのか?」

「いや、違うよ」

 

 それを最後の言葉に男達と姫様の周りに黒い円が描かれていき、ドーム状になる。

 

「手出しはできないね」

「何で冷静になれるんだ!」

「やめろ。クラはクラなりにできる事をやっているだけだ」

 

 たぶん、あの中には入れないだろう。

 だとしたら、あの中に居る姫様に希望を託すしかない。

 なら、祈っていればいいだけの話だ。

 

「ん、あれは……」

 

 地面から何かがでてくる。

 それは、俺に一つの伝言を残した。

 

 

 ―――姫君 視点―――

 

「おい、怖気づいたのか?」

 

 私は、敵の方を向く。正確には睨むような感じだ。

 私の右手には、淡い白色に光った剣がある。

 クラが生み出し、クラが封印を解いた剣だ。

 自分自身、この剣を持ってみて思ったのが一つだ。

 普通の剣の数倍以上の切れ味だ。

 人を斬ってわかった。

 これは、人を殺すための剣ではないと。

 

「ならば、人を守る剣だ。私は背負っている仲間が居るのでな。……ついでに良人も」

 

 訝しげにこちらを見ている身軽そうな服を着た男。

 だが、呪術師の方を向くと腰の剣を抜き、斬る。

 

「クハハハ、そりゃぁ本物の聖剣らしいな。だが―――」

 

 剣を振り上げる。

 

「こっちの剣は魔剣だ。また血を吸って強くなった。クハハハ」

「なっ!」

 

 上から振り下ろすと同時に、衝撃が放たれる。

 右に避ける。

 

「お前の仲間ではないのか?」

「いや……俺が強くなるための足場だ」

「兄貴、恐くなってるよ」

「いいじゃねぇか。楽しくて仕方がねぇんだ」

「うわぁ~~、久しぶりだね……」

「あぁ、誰にも邪魔されず戦おうじゃないか」

 

 すると、もう一人の仲間らしき男を斬る。

 そして残ったのは、私と狂っている男、その男を兄貴と呼ぶ男だけになった。

 しかし思ったのだが、何故呪術師が殺されたのにこの結界は残る。

 

「お前が作っていたのか?」

「クハハ、馬鹿を言うな。俺はあんな下等なものに手を出したりしない。これは俺の魔剣の能力だ。血を吸い、強くなる魔剣だ!」

 

 そのまま、突っ込んでくる。

 呪術を下等と言うということは、あの剣の能力か。

 推測するに、殺した奴の能力を吸い取る能力……ということか。。

 こっちは、聖剣を持って戦うのが始めてなんだ。

 少しは手加減をして欲しいものだ。

 

「チィッ!」

「ほぉ、弾いたか。だが……」

 

 上に剣を弾くが、一瞬。

 それだけで、聖剣に向かって剣戟が打ち出される。

 それを受け止め、ギリギリの体勢のところから後ろへ飛ぶ。

 

「やるな。だが、こっちが有利すぎるな……。俺も強くなったものだ」

 

 何故だ。

 何故私は勝てない……。

 戦争の最前線だって出たことがあるのに……。

 人だって殺した事があるのに……。

 何故だ。

 

「勝てない……か?そこまで諦めたのなら潔く死んで俺の強さの一部になってくれ」

「このゴミ(死体)はどうしますか?」

「他っておけ。姫様はここで散るんだ。仲間は多い方がいいだろ?」

「さすがだね」

 

 何故笑顔で会話できる……。

 何故仲間を殺せる……。

 何故……。

 

「俺は羽を奪われた天使だ」

「……何?」

「俺は、神へ復讐する為に生きているんだ」

「どういう意味だ……」

「過去、神と言う奴は人間へ一つの力を与えた」

「………」

「それは魔法だ。それを使って人々の暮らしは断然質の良いものとなった。魔物と言う原因不明の生命体が生まれたのもその頃だ」

「お前は……」

「俺は、魔法使いだ。あの頃から永遠を刻むな……」

「ありえない……。不老不死だと言いたいのか?」

「あぁ、何でもやったさ。そして、俺の体は永遠となったんだ」

 

 魔法使いの生き残り……。

 不老不死……。

 どれもこれも信じられない事ばかりだ。

 

「だが……俺はまだ力を十分に溜めれていない。魔法を奪われた俺は魔法の復活を望む者を集め集団を作った。そして王国に目を付けられたんだが……」

 

 何が言いたい……。

 はっきり言え……。

 私は……。

 私は、何を見ているんだ……。

 

「あろうことか、俺達を王国の騎士にするんだとよ。そして一番最初の仕事がこれだ。姫君暗殺。ついでに宝も頂きにな」

「………」

「ん?何だ?」

「……ふざけているぞ」

「……何処が?」

 

 態々大げさな態度を取る辺り、私をイラつかせる。

 だが、コイツの目的は魔法の復活。

 こっちには神ともいえる存在がいるんだ。

 ならば、教えてやればいい。

 やっている事の無意味さを。

 

「お前はアホだ。馬鹿だ。間抜けだ」

「な、なんだと……」

 

 急に声が低くなるが、恐くはない。

 笑いが噴出してきそうだ。

 

「こっちには魔法を復活させる事のできる人物が居る……と言ったら信じるか?」

「ハッ、居るとしたら殺して能力を奪うまでだ」

「そうだろうな。まぁ、勝てたらの話だが……」

 

 こいつ等は何をしたいのだろうか。

 本当に馬鹿だ。

 

 

 

 

 ……私の能力も知らずに……。

 

 

 

 

 その瞬間。

 黒い世界は終わり、ごつごつとした岩肌の広間が出てきた。

 

「クラ、丁度いいぞ」

「やれることをやっただけなんだけど……」

「いや、上出来だ。キスするぞ、キス」

「う、うわぁっ!」

 

 初々しいところもステキだぞ。

 

「ど、どうなっているんだ……」

「私も能力を持っていてな」

 

 種明かしをしてやろう。

 

「私は、『空間手中(くうかんしゅちゅう)』と呼んでいる。空間を操る能力だ。それを使ってクラに伝言をしたんだ。地面の中をすいすいっと」

 

 

『古代文字で『闇の結界を消滅させる』と、書け。できるだけ素早く頼む』

 

「意味がわからないんだけどさ……、まぁ本当に消えたんだよね。これも姫様の力?」

「俺は気づいていたぞ。まぁ、今回ので確信だったが……なんというか説明がしづらい能力だな……」

「え?能力?俺って能力を持ってるの?」

「……はぁ……鈍感だな。その点で言うと姫様のストレートすぎる言葉は逆に丁度いいのかも知れん」

 

 呆気に取られている男達。

 見ていて面白いな。

 

「わかったか?お前はまだ人間の領域内だ。私を倒すのは無理だと覚えておけ」

「……そうか……。だがな……俺も任務失敗しましたとは言えねぇんだな、これが」

「どういう意味だ?」

「つまりだな……、宝はもらっていくぜ」

「あ、ちょっと兄貴」

 

 今度は私達が驚かされる番だったみたいだ。

 王家の秘宝を取られたか。

 父上に怒られそうだな。

 

「だが、死ぬよりはマシだ」

「え、えっと……勝ちでいいの?」

「そうだ。勝ちだぞ」

「……まぁ……礼を言う」

「あ、どうも」

 

 クラは鈍感だな……。

 

 

 ☆

 

 

 ―――??? 視点―――

 

 あの後、荷物をまとめて姫君一向は王都へ戻るらしい。

 この時期にこの命令がくだされたのは、秘宝が遠ざかってしまうからだろう。

 

「しかし、あの王も馬鹿だな。興味をもってしまったじゃないか」

「ん?誰に?」

「あの姫君とその隣の神にだよ」

「神?」

 

 クハハハ、面白い事になりそうだ。


『後書きと言う名の雑談会』


作『なんと、クラの決意の所に伏線が!?』

兄貴『クハハハハ、ばれてんじゃねぇのか?』

子分『あにきぃ、今回上から叱られるんじゃ……』

作『まぁ、そこは模写を控えておこう』

兄貴『でも、受けているんだよな……』

作『まぁ、お前はチート剣持ってるからいいだろ?』

兄貴『クハハ、この剣は(ネタバレ注意)』

作『何故か、ここに伏線を作るところだった……』

子分『それ、物語に関係が……』

兄貴『ククク、無いな』

作『……次回予告。兄貴よろしく!!』

兄貴『次出てくるときには名前を出せよ!!』


兄貴『次回!王都へ帰る帰り道。特殊な道具で全員翻弄?『森のお友達』だぜ』

作『我が執念の魂をここに……』

子分『言うなれば、色々あるけど少し事件を起こして解決したら閑話を書こうという……』

作『軽くネタバレしたような……』

兄貴『クハハハハ、気にするな相棒』

作『相棒か……クハハハ、いいだろう。我は寛大じゃ!!』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ