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4話 『仲裁の傷跡』

ルールルールルルルルー。

ルルルルルー。


最高です。

 ―――クラディ 視点―――

 

 いつ見ても大きな城だ。

 そして、俺はそのど真ん中をぶち抜いたような中庭に立っている。

 今の時期、少し肌寒いぐらいなのだが、もっと薄いドレスを着ている姫様は大丈夫なのだろうか?

 

「試験の準備をするからな、おっとクラは怪我人だ、早く部屋へ運んでやってくれ。それから―――」

 

 王の才能……というやつだろうか?

 姫様は場所を空けさせ、木でできた武器を用意させ、俺を病室に運ばせ、その後も色々やっていたらしい。

 

 俺の傷は、骨折などではないので、大きな設備が無くても上級の塗り薬で直すことができる。

 だから、本人も言っていたが、将来専属のメイドとなる人に付きっ切りで看病してもらうこととなる。

 

「覚えなくても、よいのですが、一様紹介させていただきます。私の名前は、ルーファン・ミーナスです。よろしくお願いします」

「あ、よろしく」

 

 

 解説

 

 金持ちの商人、または貴族、王族などは、『(めい)幼名(ようめい)姓名(せいめい)』となる。

 それ以外(いがい)は、『(めい)姓名(せいめい)』だけとなる。

 

 例((いま)『シタル・メーグル・トルト』⇒幼少期(ようしょうき)『メーグル・トルト』)

 

 

「旅でお疲れでしょうから、睡眠されてはどうですか?」

「え、あ、うん」

 

 敬語を使われるのに慣れていないと、なんだかむず痒いというか……。

 寝れば気にならないだろうと思い、ベットにもたれかかる。

 

 ―――ボフンッ

 

 やわらかい布団が俺を迎えてくれる。

 だが、一向に睡魔は襲ってこない。

 こっちも、慣れてないからだろう。

 

「眠れませんか?」

「あぁ、はい。すいません」

「いえ、謝る必要なんてありませんよ」

「え、あ、はい。そうですか」

「少し散歩でもしてみては如何ですか?一通り治療もしたようですし」

「そういえば、試験をするとか言ってましたね」

「それでは、見に行きましょうか。肩に凭れ掛ってください」

「え、あ、その……」

 

 俺は、小さな村にいて、ろくに女性と話したことすらない。

 村の中で女性と話した記憶があるのは、村に住んでいるおばさん達か女性の旅人しかない。

 俺って、結構男臭い人生を送っていると思う。

 

「遠慮なさらずに、本音を言うと、貴方ならいいかもっって思ったんですよ」

「え?」

「いいですから」

 

 そう言って、笑うと俺の腕を持って無理矢理肩に回させ、ゆっくりと歩き出した。

 その間、俺がやっていることといえば、顔を赤くしてそっぽを向くことぐらいだ。

 

「どんな戦いをするのか……楽しみですね」

「そうですね」

 

 この人も信頼できる人だと思う。

 まぁ、口は軽そうだけど……。

 

 

 ―――姫君 視点―――

 

「では、私が立会人だ。騎士道精神に乗っ取り、卑劣な行為が無いように」

「お願いします」

「よろしく」

 

 そう言って、両者は舞台の端まで下がる。

 ボフストの方は、短い棍棒のような物を持っている。

 対する、フィーカは槍を持っている。

 どちらも、木製だが、攻撃範囲からするとフィーカが有利に見える。

 

「それでは……」

 

 場が静まる。

 静寂の中、私は心を沈めまっすぐ前を向く。

 

「始め!」

「たぁああ!!」

「はっ!」

 

 いきなり突っ込むフィーカ。カシロアがフーと呼んでいたので次からはそう呼ばせてもらおう。

 ボフストは、身を屈め、同じように前に出る。

 

「なっ!」

 

 突きを避けられ、懐に入られたフーはボフストの棍棒で殴られ舞台の端まで吹き飛ぶ。

 この勝負が終わるのは、相手が降参した、もしくは相手が場外に行った場合のみ終了する。

 勿論、相手を殺してはいけない。

 

「攻撃は最大の防御……というが、攻撃に集中しすぎている。相手の動きを見ろ。目を見ればどんな行動をするかわかる」

 

 いいことを言う。

 私も、本で読んだことがある。

 私の剣術はほとんど本で読んだ知識になっているのだが、色々な本を読み漁った分、色々な流派が交じり合って一つの流派となっている。

 それを使えるのは、この国内では私だけだろう。

 

「クッ……つつ……、まだまだ!!」

 

 猪突猛進というか、馬鹿の一つ覚えというか……薙ぎ払いの攻撃を時折混ぜて誘わせているが、やはりボフストのほうが上手なのか完全に見切っている。

 

「カシロアの娘がこんなものか!」

「うる……さいっ!!」

 

 ほとんどやけくそだ。

 これでは、当たる攻撃も当たらなくなってしまう。

 

「ちょ、何だこれ!?」

「ん?クラか」

 

 私は、メイドの肩に手を回しているクラに目をやる。

 少し、もやもやした気持ちが燻っているが、今は立会人の仕事をしなければいけない。

 

「ボフストとえっと、カシロアさんの娘が勝負するなんて聞いてないよ!」

「そうだな、私が教えたのは試験があるということと、それが実践ということだけだ。それと、あの娘の名前はフィーカという。将来私の近衛兵になるかも知れんのだ、覚えておくといい」

「……まぁ、俺……いや、僕が口出ししてもやめないだろうからね」

「……前から言いたかったのだが……」

「何だ?いや、何ですか?」

「素の喋り方でよい。聞いているこっちがイライラする。敬語には慣れていないんだろ?それに、お前の立場は私より上になったと何回も言っただろう」

 

 こういう分野に関してはまるっきりダメだな。

 メイドが笑っているが、笑い事ではない。これは王族として、家族として大切なことなのだ。

 

「まぁ、いい。おっ、フーが反撃を開始したぞ」

「フー……ね」

 

 槍を地面に刺して、思いっきり高く飛ぶ。

 ボフストの短い武器では届かない高さだ。

 考えたものだ。

 

「やぁっ!」

「クッ!」

 

 届かないと見るや、体勢を低くし、できるだけ相手の攻撃に注意しながら後ろへ飛ぶ。

 どうやら、フーが着地したと同時に一発いれてやるつもりらしい。

 

「あっ!」

 

 気づいたのか、フーが声を出す。

 だが、次の行動は予想外だった。

 

「てやあっ!!」

 

 両手を使って、槍を回転させる。

 攻撃する隙を与えさせない防御となって、二人とも体勢を整えるために下がった。

 

「チッ……」

「あんな無理な着地をしたんだ、痛めて当然だ」

 

 高く飛んだ後、一気に降下したんだ。足に負担が掛かって当然だろう。

 

「そこまでの方がいいんじゃない?」

「……試験は最後まで行う」

「それって、どちらかが怪我をしたら……」

「二人とも承知の上でだ」

 

 見ていないが、悔しいのだろう。

 怪我が無ければすぐに助けていただろう。

 だが、クラには頼みたいこともある。まぁ、良人に無理をさせるわけにもいかないが……。

 

「てやぁああ!!」

 

 波状攻撃だ。

 何度も繰り返される攻撃は、フーの体力を奪うが、その分ボフストにも有効な戦術になったようだ。

 

「さっきとは、違うな……言わなきゃよかったか……」

 

 だが、その顔は笑顔だ。

 フーが飲み込みが早いのはその才能だろう。

 

「決めたぞ……近衛兵にする」

 

 誰にも聞かれないように呟いた。

 だが、一人の少年には聞かれていたようだ。

 

「それなら、もう終わりでいいだろ?」

「周りの奴等が納得せん。終わるまで待て」

 

 何故、そんなに戦いを拒む。

 私は思う。

 戦いというものは、人の本質を(あらわ)にする行為だと。

 どんなに人を頼っても、どんなに自分のことを他人に話しても、拳を交えなければ分からないことはあると私は思う。

 

「どうして止めようとする?」

「だって、傷つけ合うなんて可笑しいだろ?」

 

 可笑しい?

 可笑しいのか?

 時々、この男がわからなくなる。

 

「そう……か」

「それ以上のなんでもないよ」

 

 人それぞれ、違う考えを持っているものだ。

 それは、私達にとっても例外ではないんだろう。

 

 

 ―――クラディ 視点―――

 

 俺は、姫様から変な質問をされた後、ずっと考え事をしていた。

 人は戦うのが普通?

 ふざけてるだろ。

 そんなのはお偉いさんだからだろ?

 自分に裏と表を作って、その中で戦っている。

 馬鹿じゃないか?

 

「痛そうだ……」

 

 一発一発お互いの肌に触れて、嫌な音がして……。

 何でこんなことをするんだろう……。

 その言葉に返してくれたのは、唯一人、俺の隣に居る人物だった。

 

「人々が魔法を使えなくなったのは何故だか知っていますか?」

 

 知識としてなら知っているその言葉の答えを俺は言うことができなかった。

 それが、本当なのか自分で疑っているからだ。

 目の前にある光景も、本に書いてある知識も。

 

「神は、人々が魔法を使って争う光景を見て思ったそうです。魔法とは人を治したり、人々に活気を与えるものだ。しかし、道を間違えた。だから、やり直そう。力を持たぬ種族として立たせよう。考えた神は、人間から魔力を奪い、力を得ました。それに反発する人間は、考えました。……そして気づいたのです。己の非を。自分達がやっていたことを。今この光景を貴方は止められますか?」

 

 神が魔法を取り上げた。

 この話は、御伽噺とされていて、幼少の頃、俺は少し聞いたことがあるくらいだ。

 それに、嘘だとはっきり言えると思っていた。

 だが、言えない。

 

「止めれないな。俺はそこまで考えれない馬鹿だからな」

 

 力を持って、戦うのなら、その力を取り上げてしまえばいい。

 そう考えた神は、何を思っていたのだろう。

 戦うことに目的があるのなら、戦っていいとは言わないが、他人の口出しできるようなことではないことは確かだ。

 他人を傷つけるのが嫌。戯言でしかないその言葉に真実味を持たせることのできるのは力があればいい。

 

「傷を抉られた気分だ」

「けど、唯見ているだけじゃいけないときだってありますよ?きっとそういうときが来ます」

「自分から行動してみて、その結果が一番ってことですか?」

「行動と言うと違う気がしますが、この世界では目的の為に命を掛けたっていい人が多いですからね。そのくせ、自分が何故戦っているのか分からない人が大半です。知識だけを持って実践するだけの人が多いんですよ。御伽噺の勇者だって、魔王を倒せるのは君だけだと言われていても、最後には仲間と一緒に戦っています。この王は何を考えているのでしょうか?」

「自分の出来ることをやれってことだろ?」

「はい!正解です。勇者しか倒せないなんてのは仮定です。皆で戦えば勝てるかも知れません。理論から言えば、普通の魔物を倒せる人間は―――」

 

 はぁ……、つまり戯言を言うのは怪我を治してからにしろってことでしょ?

 俺は、他人に気を使っている振りをしならが、自分のことをやらない偽善者ですか……。

 目の前に広がる戦いを見ながら思ったそれは、俺に少しだけだけど勇気を与えてくれた気がした。

 

 

 

 ―――姫君 視点―――

 

 あのメイドを選んで正解だったようだ。

 馬鹿ってのは前を向かないから馬鹿なんだ。

 

「おい、クラ。自分の城で働く者達の顔ぐらい覚えろ」

「え、ちょっと、俺の城!?」

「あぁ、明日からこの城の城主はクラ。お前だ。慣れてないだろうから領主は私という例外的なことになるがな」

「威張り散らしてるだけじゃ……」

「私の仕事を観察しろと言っているんだ。お前の頭は固すぎる。知識があるのならそれを突っ撥ねるぐらいの考えで動け」

 

 どうやら決着がついたようだ。

 フーの手には槍が無い。

 ただの、先が折れた棒切れだけだ。

 

「終わりだ」

「はぁ……負けか……」

 

 一発の攻撃力なら棍棒の方が断然強い。それに、素早さでも勝るボフストが勝つのは時間の問題だったのだろう。

 

「姫……様……」

「泣くな。お前は近衛に採用だ。明日から頑張ってくれ。まだ兵舎は用意できないから客用の部屋を使ってくれ」

「あ、あびばぼうぼざびばず~~」

「お、おい、引っ付くな。離れろと言っているだろ!」

「姫様~」

 

 この光景。

 これが普通になっていくのには何か悪寒がするが、平和という点ではいいことなのだろう。

 

「怪我などもあるだろうから、治癒室へ行け。薬品を塗ってもらって直すんだ。ボフストは先に風呂へ入っていろ。外傷は少なそうだから、あまり沁みないだろう?」

「あぁ、誰か案内頼めるか?」

「それなら私が」

 

 一人の兵士が出る。

 私はそれを見送ると、クラのところへ寄る。

 

「ん?どうした?」

「ふふふ、大人になったなクラよ。お前がまずするべきことを教えてやろうか?」

「なっ、聞いてたの!」

 

 王族というのは平民よりも身体能力が上なのだ。

 それに、空間を把握すればクラ達が話していることなど聞こえるわ。

 

「さぁ、行くぞ」

「ど、どこに!?」

「父上の所へだ。クフフ、許婚者(きょこんしゃ)を見せる時がこようとは……ふふふ」

「あ、危ない予感がするんだけど……」

「まぁ、居るだけでよい」

「居るだけでいいの?」

「あぁ、王族には特殊な能力が備わっているということは知っているよな?」

「まぁ……」

「父上の能力は『心情観察(しんじょうかんさつ』といって、人の心を読む力だ。だから見透かされているぞ」

「う、嘘!?」

「大丈夫。私のこと……好きだろ?」

 

 途端、顔が赤くなるクラ。

 少し刺激が強すぎたかの?でも、可愛いぞ。

 

「さぁ、一緒に行くのだ」

「ひ、姫様。傷口が開いてしまいます。傷など母上に……そういえば、母上は王都だったな……。クッ……そうだ。クラの能力で!」

「イツツ……、って俺の能力?」

「私が考えるに、お前の能力は『物書き(モノカキ)』といったところだろう。能力内容は……そうだな、最強無敵の執筆才能って所か?」

「意味わかんないし!俺は剣もろくに握ったこと無いんだから!」

「筆は握ったことあるだろ?」

「そりゃ、誰だって握ったことぐらいあるでしょ……」

「私は説明するのが苦手だ。行くぞ」

「え、ちょ、そこまで言ったのなら最後までぇえぇえ~~」

「さぁ、父上の部屋に突撃だ!」

「ひ、姫様……」

 

 メイドよ、これは愛の鞭だ。

 しかし、剣をろくに握ったことが無いのはいかんな。私が訓練をつけてやるとするか。

 我が良人に相応しくなれよクラ。

 

 

 ☆

 

 

 ―――ボフスト 視点―――

 

 風呂に案内された後、服を取ってくるといった兵士を待つこと五分ほどだろうか。

 向かい側から、クラとシタ姫とメイドが歩いてきた。

 俺の目は狂っているのか、クラの脇腹がすごく危険な状態に見える。血がだくだくと……。

 

「おい、クラ……大丈夫か?」

「俺に血を……(カクッ)」

「お、おい、私もやりすぎたとは思っている。すまなかった」

「ひ、姫様。それよりも……」

「あぁ……ん、待てよ。治癒室はフーが居るから使えないぞ?」

「……どうしましょう」

 

 二人はとても顔が青くなっている。

 メイドの方は責任問題として、シタ姫の方は本当に心配しているのだろう。

 すると、着替えを持って兵士がやってくる。丁度いい。

 

「服を貸してくれ。脇腹に当てておく。フーだったか?あいつの怪我も相当なものだと思うからな、あの戦闘狂は気絶するまで暴れ通す。今までの疲労もあわせて治癒に結構な時間がかかるだろう」

「……よし、食堂へ行く」

「何言ってるんですか!!」

「血と肉になる物を食わせるのだ!」

「は、はい!!」

 

 兵士が叫ぶように言う。

 ぞろぞろと、野次馬のような兵士が来て、シタ姫に怒られながらも食堂へ向かわせている。

 風呂よりもこっちの方が大切か。

 

「薬師を呼んで来る。手の空いている奴は水と清潔にしてあるタオルとクラのところへ持っていけ!」

 

 誰に言ったかも分からない言葉を発してから走る。シタ姫はクラを食堂へ連れて行こうとしているところだった。

 

「あぁ、あいつも不幸だな……」

 

 少しの同情と、大きな友情で、俺達は朝までクラの看病をしていた。

 

 

 ☆

 

 

 ―――クラディ 視点―――

 

 俺が起きると、姫様と、ルーさん、ボフストが三人揃って眠っていた。

 これは、何が起こった後なのだろう。

 俺は寝ぼけた頭をフル回転させてみるが、答えは見つからない。

 立ち上がると、脇腹に痛みが走る。

 

「イタッ……ツッ、血だ……。お、おぉお、思い出した!」

 

 これはもう、お婿にいけない……。

 服を脱がされて……あぁ……。

 

 なんていう、妄想に浸っていると扉が開いた。

 ノックをされたので、礼儀ある人だ。

 

「失礼する。姫様は……キサマ!!」

 

 違った。礼儀無い人だった。

 

「え、え~と、フィーカちゃん聞いて?ね?」

「ふぃ、ふぃーかちゃんだと……」

 

 どうしようか迷っている間に相手は先制に出た。

 

「クッ……ふぃ、ふぃーかちゃん……。このぉ……」

 

 ―――バシッ

 

「うぐぅ……」

 

 声と衝撃の比率が合っていない攻撃に、俺は思わず脇腹を押さえる。

 この暴力集団にいたら、治る怪我も治りそうに無い。

 その証拠に、顔を赤くしてフィーカが怒っている。

 

「失礼した。私は朝飯の時間だと伝えにきただけだ。それと姫様に礼を言っておいてくれ」

「え、あぁ、うん。わかった」

 

 そっぽを向いて、フィーカが言った言葉に、俺は少し呆気に取られながらも頷く。

 満足したのか、そのまま出て行ってしまうフィーカ。

 

「……あれ。そういえば一人で立ててる」

 

 よほど薬の効力が強力なのだろう。

 あの暴力集団の中に居て俺は立っていられるのだから。

 俺は、あの薬師のお兄さんを尊敬し、敬うことを誓う。

 

「起こした方がいいのかな……」

「いや、そのままでいい」

「ヒィッ!?」

 

 手を掛けられた左肩を見ると、皺が深い左手が乗せられている。

 薬指には結婚指輪が光っている。

 

「驚かしてしまったかな?だとしたらすまない。娘の良人になる人物はどうしても見ておきたくてね」

「えっと、確かオリエル・ダリア・トルト王でしたっけ?」

「オリエルと呼び捨てで構わないよ」

 

 聞いたとおりの優しい顔で、少しの気遣いもできるいい人だ。

 あの娘がこれということは、母親が酷いのだろうか?

 だとしたら、策略結婚とか……。

 

「オリエル……さんは、認めてくれているって本当ですか?」

「娘が決めた男だから。ここは大陸の隅にある小さな国だから他の国がここを狙う心配も無いしね。この土地を欲しがる人なんて私ぐらいだよ」

 

 王の素質というか、そんなものが溢れ出ているように見える。

 それに、優しさも持っていて、ならこっちの子は何故あんな性格になってしまったのだろうか?

 優しい親に甘えて育ったのか……いや、あの性格ならありえないな。

 

「ふふ、もうシタのことを理解してるんだね」

「え?あ、ああ!!」

 

 思い出した。この人は他人の心が読めるんだった。

 でも、俺の理解者となってくれる人になるだろう。そういう人だと思うから、こんな能力じゃなくても話していたかもしれない。

 

「いい性格してますね」

「君も、私の若い頃にそっくりだよ。何でも聞いてくれて構わないよ」

 

 やっぱり理解者となってくれる人だ。

 そんな話をしていたら、ルーさんが起きてきた。

 

「はうわっ!お、王!いえ、国王様。このような姿で―――」

「いや、私はもう帰るところだ。それでは次は結婚式か……また会おう」

 

 なんだか、見透かされているのは気分が悪いような気持ちがすっきりするような両方を持ったような感じだった。

 

「あ、朝飯は?」

「もう時間を過ぎていますし……私が軽食を作ります。一人でも大丈夫そうですし」

 

 後から、俺が尊敬するお兄さんに聞いてみたところ、姫様がすごい顔で迫ってきたので採取したばかりの薬草を使った薬を使ったらしい。

 

「二人の分もね」

「いえ、私も入れて三人ですよ」

「そうだったね」

 

 なんだかんだ言って楽しいのかも知れない。

 この生活に慣れたいとは思わないけど……。


『後書きと言う名の雑談会』


クラ「死ぬかと思った」

策「死ねば……」

クラ「続きは!?しかも、思いっきり策って書いてあるし!嵌めたな!」

シタ「五月蠅いぞ。しかし、フーよかったな」

フー「ひえざば~」

ボフ「大量の涙と鼻水が……」

作「戦闘描写が少ないけど我慢だ」

ボフ「別にうまくないけど……か?」

作「ちょっと、一緒に来てくれ」

ボフ「お、おう……」

クラ「次回予告は……?」

作「フー頼んだ」


フー『次回!朗報だ。クラのライバル?『100点を奪取(ダッシュ)せよ』だ』

クラ「ライバルなんて要らないんだが……」

作「あぁ、それなら弄られキャラを入れようと―――」

シタ「ネタバレは禁止じゃなかったのか?」

作「今日は二話更新なのです」

クラ「……あんた暇人だな」

作「取り合えず、昼頃更新です」

クラ「スルー!?」

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