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2話 『モノカキの才能』

まじめなのか……、不真面目なのか……。

それは主人公の性格で決まる……。

 ―――クラディ 視点―――

 

 ここは、城の……中じゃないね。

 なにやら塔の中にいる。

 魔物が巣食っているらしく、ここの魔物を全滅しろらしい。

 ……こんなやり取りを前にもしたような気がする。

 まぁ、複雑な構造ではないので、時間を掛ければできるだろう……普通の武器があれば。

 

 ここで、俺の装備を紹介する。

 

 武器(ぶき)  執筆用(しっぴつよう)黒曜石通魔筆(こくようせきつうまふで)

 

 補助(ほじょ) 高級用紙

 魔力充電式黒曜石

 

 防具(ぼうぐ) 農家の服

 

 よし、一つ一つ解説していこう。

 

 

 No.1  執筆用黒曜石通魔筆×2  ※一本は換え用

 

 解説 考古学者愛用の筆、魔力さえあれば壊れない限り何回でも使いまわしできる。だが、今は黒曜石が指定の場所に填まってないのでこっちの魔力充電式黒曜石と一緒に使うんだろう。

 

 No.2  高級用紙×500  ※一枚厚さ5mm、縦10㎝、横10㎝の正方形

 

 解説 とある樹木から作った紙。高価で、庶民では絶対に手が出ない品物。その書きやすさは、世界的絵描きのコッホンも賞賛している。

 

 No.3  魔力充電式黒曜石  ※嵌め込み式

 

 解説 魔力の残留体によって字を書くための装置のような物。消すことができない。一本の値段は俺が何年稼いだって買えない値段。

 

 No.4  農家の服  ※冒険者には絶対に防具として扱われない

 

 解説 俺も、防具じゃないと思う。布切れでできていて、防御力は低の低の低の……と、すごく低い。

 

 

 一通り解説したが……これは机に向かう時の装備じゃないのかな?

 まぁ、俺は字がかけないからいいけどさ。

 

 ―――カサッ

 

 早速、出てきたようだ。

 逃げる準備をしなければいけない。

 

「おい―――」

「退散!」

「ちょ、逃げるなって!」

 

 俺の足ってこんなに速かったんだ!?と驚く速度で走る俺は、魔物達を撥ね飛ばして一気に塔の最上階の一歩手前まで辿り着いた。

 奥に今まで塔の中で見てきた魔物よりも強そうな奴がいる。

 

「クッ、挟まれたか……」

「どう見たって、俺は魔物の仲間じゃないだろっ!」

「え?……本当だ……」

「今気づきましたって顔すんじゃ……まさか……お前……」

「ゴメン、今気づいた」

「……うわぁああ……」

 

 すごく緊張していたから、確認なんてしてなかった。

 だから、この人……人?

 

「人なの?」

「失礼な!!俺は誇り高き蛮族の貴族、クリシェル・ボフストだ。ここに来てからよく間違えられるが、名前が後ろだ。ボフストって呼んでくれ。お前は?」

「俺は、クラディ・ネクスト。……成り行きでここに……」

 

 ボフストが俺の装備に目を向ける。

 そして、俺に向かって哀れみの目を向けてくれた。

 

「お前も仲間だな」

 

 ここで、ボフストの装備を紹介しよう。

 まぁ、ボフストは未開の地の民族なので、安直に考えた名前を言っていこう。

 価値などは一切不明だ。

 

 武器  折り畳み式棍棒(こんぼう)

 

 補助  石砥(いしと)ぎナイフ

 膝当て

 

 防具  腕に備え付け皮の盾

 

 

 俺ほどじゃないけど、酷い装備だと思う。

 まぁ、強さは未知数だ。

 もしかしたら、軽さを重視しているのかも知れないし!

 俺の方はわかりきってるけど……。

 

「よし、ここで提案がある」

「俺は戦力外だぞ?」

「……囮ぐらいできるはずだ」

「まぁ、それぐらいなら……」

 

 剣の使い方とかは少ししか習わなかったけど、昔から足だけは速かった。あ、それと本を読むのも。

 これなら、囮はできるだろう。

 

「よし、この紙を丸めて……」

 

 投げつける……気を逸らせることはできないと思うけど、気を散らせることならできそうだ。

 

「いっせ~の、で行くよ?」

「よし、こっちはまだ気づかれていないだろうからな」

 

 向こうの狐のような体を持った魔物が僕達とは反対方向を向いて、屈伸している。

 今だ!

 

「いっせ~の!」

「てりゃぁあ!!」

 

 ボフストと同時に最上階の部屋へ入る。

 だが、そこに広がるのは思いもよらぬ光景だった。

 

 ☆

 

 

 ―――姫君 視点―――

 

 私は見た。それは、間違えではない。

 

「……地下が……できてる……」

 

 私の近衛兵の一人が言う。

 他の兵達は口を開けている。よほど驚いているんだろう。

 

「行くぞ」

「……」

 

 ―――ゴクリ

 

 いつの間にか私が先頭になっている。

 本当に情けない兵士達だ。基礎からやり直す必要があるだろう。

 

「……二つに分かれてる……」

「ちょっと待っていろ」

 

 私の能力。

 そう、クラに能力があるのには驚いたが、私にだって能力はあるのだ。

 それに、詳しい名前は無いが、私はこう呼んでいる。

 

空間手中(くうかんしゅちゅう)

 

 本当に、空間が手の中にあるようにわかる。

 一握りで人を殺せるし、遠くにある物を取ることだってできる。

 瞬間移動だってできるし、時を歪めることだってできる。

 

「……クラと私は似ているのやも知れん……」

 

 そう呟いて、目を開ける。

 

「こっちだ。付いて来い」

 

 近衛兵長が声をかけて今度は私を守るようにしながら歩く。

 最初からこうすればいいのだ。

 

 少しすると、大きな空間が姿を現した。

 そして、そこには一本の剣が封具で封印されている。

 

「完全なる封印……」

 

 いくら空間を操っても寄せ付けない。

 最強の鎧、それを相手にしているようだった。

 最強の剣は最強の鎧に守られ、それを解くことのできるのは封印した本人……。

 

「クラは私より強い……ふ、ふはは……ただの平民だった男が私より強いとは……欲しいな……」

 

 この国の王。それはあの男のことを指し示し、私はあいつを王にする為に生まれたのかも知れぬ……。

 だが、私はそれで満足している。

 何故だろうな……。

 

 

 ☆

 

 

 ―――クラディ 視点―――

 

 俺達が見た光景。

 それは、一匹の狐が大きな魔物に立ち向かっているというものだった。

 それは、迫力があり、俺の知っている中で一番綺麗な光景だった。

 

「と、止めるぞ」

「でも……俺達にできるのか?」

 

 足捌きで相手を翻弄し、一撃一退で攻撃をしている。

 だが、相手も素早い。大きな体の癖に、素早い動きで狐が攻撃をしたと同時に一歩遅れて攻撃する。

 なんとか避けているようだが、疲労が大きいようだ。

 傷の数だけなら相手の魔物の方が多いが、蓄積された疲労という面では狐の方が疲れている。

 

「俺の国では……動物を傷つけるのはダメだったんだ!!」

 

 そう言って、ボフストが狐を守るように前にでる。

 俺は見守るしかない……。

 だが、そこに後悔もある……。

 どうやら動けないらしい狐はボフストの陰になるように隠れ、攻撃を防いでいる。

 なんだろう。

 何処かにこの気持ちをぶつけたい。

 俺の手の中にあるのは、筆と紙。

 ……書く……。

 

「ぐぁぁ……」

 

 その体は悲鳴をあげ、息が荒くなり、血で目が使えなくなる。

 だが、俺はそれに不満だ。

 助けなきゃいけない。

 なのに、俺は力がないから……。

 俺はその気持ちをぶつけてやった。

 この塔に移動する間に文字を少し覚えてよかった……。

 

『俺は力が欲しい……。友人を守る力……』

 

 細々とした文字で書かれた紙。

 だが、まだ足りない……。

 もっと書きたい……。

 もっとぶちまけたい……。

 もっと……もっと……。

 

『力を……』

 

 体の奥からはち切れんばかりに、衝動が襲ってくる……。

 俺はそれを受け入れた……。

 

 

 

 ―――ボフスト 視点―――

 

 目が霞み、前が見えない。

 だが、何度も衝撃が襲う。

 その度に舞う俺の血が、俺の体を濡らし、赤く染める。

 俺は特殊なんだろうか?

 あの国の中で、未開の地を見てみたいと思っていたのは俺だけだった。

 厳重な警備を突破して、貴族の誇りを持ち、逃げてきた。

 ……矛盾している……。

 俺は、何を目指して……夢見ているんだろうか……。

 

 

 ―――ブフォオー

 

 

 風で俺の血が舞う。

 ……死んだのか?

 そう思ったのは一瞬だった。

 目の前にいるのは―――

 

「クラディ……」

「友人を守る力……お前は倒される運命だ」

 

 あの魔物に言う。

 目を開けていない……なのにわかる……。

 ……痛みが消えていく……。

 死を逃れた……のか……。

 

 俺の意識はここで途切れた……。

 

 

 ―――クラディ 視点―――

 

 風が気持ちいい……。

 こんな感覚は、親父と旅していた時以来だ……。

 走った。

 それだけなのに……懐かしい……。

 

「風よ……舞い散る花となり鋭敏の呼称を! 『ウィングフラワー』」

 

 風は渦を作り、鎌鼬(かまいたち)を落とす。

 それは、吸い込まれるように魔物に触れ……切り落とされる。

 縦に、横に、斜めに……斬れている光景はいつか見た居合い切りを何度も繰り返されているようで、吐き気がする。

 首のようなところを飛ばす。

 切断されたそれは白と黒の混沌とした霧を巻き上げ消滅する。

 魔法……失われた文化だ。

 それを俺は使った。

 わからない。

 だが、守れたんだ。

 まだ触れたのは短いけど、友人を……。

 

「僕も……同じなのかも知れない……」

 

 昔会ったことのある一人の少女の顔を思い浮かべる。

 だが、所々靄で遮られている。

 思い出したくない思い出だ。

 だが、それは俺に刻まれた記憶。消すことは許されない。

 疲れが襲ってくる。

 あぁ、眠いよ……。

 

 

 ―――姫君 視点―――

 

 連絡が入った。

 塔が崩れたらしい。

 ……私は浅はかな事をした……。

 私のせいで彼を……クラを死なせてしまったら……。

 

「姫様……」

「う……なんだ?」

 

 急いで顔を拭き、声をかけられた方向を向く。

 そこには、私の父上、つまりこの国の王がいた。

 勝手に婚約者を決めたことを怒っているのだろうか?

 そうなら、早く怒って欲しい。

 私は浅はかなことをした。

 だから……。

 

「シタ……」

 

 やめろ。話しかけるな。

 そんな優しい声で話しかけるな!

 私は……。

 

「悲しいのか?」

「……」

 

 顔なんて見たくない。

 とっとと帰ってくれ。

 態々王都から来たんだろう。だが、こんな声で話しかけられるぐらいなら居ない方がマシだ。

 

「……姫としての威厳を忘れるな。今はそれだけ言っておこう」

 

 何を察したかは知らないが、それだけ言って出て行く。

 私は何がしたかったんだろう……。

 

 父上が出て行って、数分して私も頭が醒めたのか後悔してきた。

 この私が居る城に王都から来るには三日は掛かる。

 私は、その間クラのことで悩んでいた。

 なら、父上は何を悩んでいたか……。

 そんなの明白だ。

 私にどうやって話しかけるか悩んでいたんだろう。

 後悔。

 それだけが私の心の中で燻っている。

 

「……考えていてはダメだ。私はあの男には成れない……」

 

 一年前出あった男。

 サンダス。あの男の知恵があれば私はこの状態から脱出できただろうか?

 答えは否だ。

 私は、私の力でしか解決をせず、あいつも自分の責任の尻拭いしかしない。

 

「シタル・メーグル・トルトはここに誓う。何をしてでもいい。(クラ)を見つける!!」

 

 やりたいことは唯一つだ。

 彼、クラを見つけるだけだ。

 後のことなんてどうでもいい。

 その時の私の目は輝いていたと思う……。

 

 

 ―――クラディ 視点―――

 

 漆黒と言う表現が相応しいだろう。

 その男は、こう言った。

 

『自分の道は自分で決め、他人の尻拭いなど迷惑以外の何でもない』

 

 わからなかった。

 他人を助けて何が悪いんだろう?

 だが、俺は気づく。

 自分の道……あの男が進んでいる道は自分の信念を曲げないことだ。

 

「俺は……」

 

 最上階に居たはずだ。

 だが、ここは違う。

 

「小屋……か……?」

「やっと、起きたね!」

 

 笑顔で話しかけてくる少年。

 残念ながら、俺はこの少年を知らない。

 

「誰だ?俺は塔にいた筈だ」

「私が運んできたんだ。感謝しろよ」

 

 一人称が私?

 何で命令形?

 

「いや、感謝するのは私の方だね……。助けてくれてありがとう」

「はい?」

 

 よく少年を観察してみよう。

 サラッとした長い銀髪。

 鋭く、野生を思わせる目。

 顔立ちは優しく、背は俺の首辺りに頭がくる。

 ちなみに、俺の身長は176cmだ。

 あの村には俺みたいな純情少年はいなかったから、一般的なものはわからないが、高い方だと思う。

 思考が逸れた。

 だが、俺の中の知識のうち、当てはまるのは一つだ。

 

「化け狐か?」

「うん、そうだよ」

「……一部の地域では信仰されているんだろ?」

「こっちとしては助かってるんだけど、私は特殊だからね」

「特殊?」

 

 化け狐の時点で特殊だと思うが、他にも特殊なところがあるんだろうか?

 

「私は、人間を嫌っているってこと」

 

 そうか。

 狐として特殊ではなくて、化け狐として特殊なのか。

 俺は化け狐に会うのはこれで最初だが、一般的な化け狐は人間を守護しているものとされている。

 それぐらいの知識はある。

 

「何でだ?」

「……感謝しているけど、教えられない」

「そうか。ボフストは?」

「……」

 

 目線を下に向ける。

 すると、土下座の格好で止まっているボフストの姿があった。

 前にも言っていたが、これが動物を傷付けるのがダメ。だから信仰している部族なんだろう。

 

「どうした?」

「クラ、俺はこのお方に感謝している。だから頭を下げるのは当たり前だ」

「やりすぎは返って気持ち悪いぞ?」

「賛同しよう」

「なっ!?」

 

 いや、何で驚くんだろう。

 その前に、この小さな小屋で大きな仕草をしないで欲しい。

 

「……私は行く」

「ん、そうか。俺達の眠っていた時間は?」

「三日と半日。私の傷までお前は治した。感謝する」

「……俺が?」

「あぁ、知らないのなら知らない方がいい」

 

 そう言って、少年の姿から狐に戻ると玄関口から出なく窓から飛び出していった。

 

「まずは、ここが何処か調べないとな。ボフスト、もう顔を上げてくれ」

「行ったのか?」

「あぁ」

 

 埃を顔に付けてボフストが顔を上げる。

 笑顔なのが一層気持ち悪くさせている。

 

「台所、布団、食料は……二人なら五日程度なら余裕で持つ」

「ほぉ、物知りだな」

「旅をしていたことがあるからね」

「そうか。俺は旅をし始めたばかりだから不慣れでな」

「なら、覚えた方がいい」

「そうだな」

 

 三日の疲れを癒すため、取り合えず俺は料理を作ることにした。


『後書きと言う名の雑談会』


作『今回は、姫さんの変わりにボフストに来ていただいてます』

ボフスト『よろしく頼む』

クラ『剣の訓練か……小さい頃(ネタバレ注意)』

作『お前の過去をここで明かしてどうする!』

ボフ『俺は聞いて見たい気もするが……仕方ないか』

作『物分りがよくて助かる』

クラ『う~、ん~~、んんん~』

作『喚くな。それではボフスト次回予告頼んだ』


ボフ『次回!努力の少女?才能の少年?『努力と才能がぶつかる時』だ』

作『お見逃し無く~』

クラ『ん、んんんん~~』

略(え、見捨てるのか~~)

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