表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/30

12話 『大波乱の○○』

愚姉と良弟(知らない人はブログの方へ~)の登場人物の中から登場!

そっちよりも、少し成長してますが……。

 ―――クラディ 視点――― 


 俺の平和がやってきた。

 きっと、三日前に祈ったのがよかったんだろう。


「いやだぁああ!!」

「……いや……でもですね―――」

「五月蠅いっ!クラは行かないのか?」

「一通りはできてますから」

「……じゃあ、クラに教えてもらう」

「貴族同士の交流をする……という意味でも学院はあるんじゃないですか?」

「でも……それは―――」

「行きなさい」


 初めて姫様に勝った気がする……。

 まぁ、こんな感じで俺は日常を勝ち取った。

 ルーさんとサルタの馬車で王都へ戻った俺達は最初に王様達に会った。

 見透かしているような顔が少しアレだったが、まぁ自分の子供の性格を考えたらそうなるだろう展開は読めるんだろう。


「そして、俺は自由を満喫する……と」


 今までの生活では有り得ないような部屋に通された俺は、自由気侭に過ごしている。

 かと言えばそうでもない。

 俺の知識が及ばない範囲、つまり政治方面の勉強をしている。

 学院では教わらない事なので、学院に行く必要もなく、静かに勉強を教えてもらっているヒゲ老人先生とボフストと俺だけが居る部屋でこつこつ覚えていっている。


 フーは、姫様を守る為学院に行っているので自由は自由だ。

 今は、休憩時間。


「そういえば、シアは……図書室とか行ってそうだな……」


 錬金術を使う人間はあまり居ないので知識がものを言う世界なのだ。

 だから、少しでも知識を集めたいんだろう。


「……何か不吉な予感だな……」


 こんなに平和なんて有り得ない。

 何処かの誰かの陰謀であれば、そっちの方が楽だ。

 だが、陰謀なら感付いて防げば終わり、それだけでいい。

 しかし、姫様の突発的行動は防ぎようが無い。

 いきなり来られてはこっちの身がもたない……。


「では、始めますよ……」


 ヒゲ老人先生が言う。

 この先生は、姫様にも勉強を教えていたらしいので今回で三度目だそうだ。

 姫様の父親にあたるオリエルさんにも教えたらしい。

 年は聞かないで欲しいそうだ。


「では復習です。税収の制度を言ってください」

「え~と、確か市民が月に一度城に入れる日で、城から少し離れた所には小隊が、もっと遠ければ中隊か大隊が徴収に行く制度ですね。子供は払う必要は無く、一般的に成人と言われる十五才から税を納めなければいけません。で、土地税だけは例外として年に一度払わなければいけません。王国に仕える兵士と貴族、王族は払う義務が無く集めたそれを有効活用します。俺の主観からすると、危険地帯に住む人は王国に守られない代わりに税を納めなくていいと言われているのと同じですね。国が攻められれば真っ先に苦しむ人々が住む場所です」


 少し、言い過ぎたか……と、反省していると、一つ咳をしてヒゲ老人先生は話し始める。


「大体は合っています。ですが、私の主観からして……有効活用はおかしいと思いますよ?勝手に使う泥棒さんもいるようですしね」


 ニヤリと笑いかけるヒゲ老人先生。

 この人とは気が合いそうだ。


「では、次に兵の動かし方ですね。大きな、そう、国の運命を左右するような戦争が起きたときなどは王族が指揮をして兵を操ります。そんな時はどうすればいいか……わかりますか?」

「クラの場合は来ないな……。一筆で終わらせる」

「ボフスト……どういう意味?」

「ほう……一筆で……。面白いですな」

「え?え?何?」


 一筆で終わる戦争……平和条約でも結ぶんだろうか?

 俺は、人に恩を売れるような人間じゃないのだけれども……。


「まぁ、覚えておくに越したことはありません。そんな時は―――」


 勉強は段々と戦争についての話に変わっていく。

 平和な話から段々と戦争に変わっていって覚えさせる、何か汚いやり方だ。


「まぁ、戦争なんてやらない方がいいんですけどもね」


 最後にそう締めて部屋を出て行くヒゲ老人先生。勉強の前に名前を教えてくれないだろうか。


「ああいう奴は恐いぞ?」

「でも、気は合いそうだね」


 そう言って、俺も席を立つ。

 ボフストも着いてくるようで、ベッドから立つ。


「何処行くんだ?」

「少し、町にでも……。初めて来る町だし楽しみたいからね」

「たぶん……いや、確実に見つかった時、問題が起きるな」

「表には出てないから大丈夫だよ」

「いや、今朝シタ姫が町でクラのことを話してたぞ……。すごい美化されていたが、特徴を言われているから見つかるな……」

「な、何て事をしてくれたんだ……」


 これじゃあ、発表会みたいなことをするときに石を投げられてしまうじゃないか。


「まぁ、噂は所詮噂だ」

「いや、身内になるかも知れない人からその噂が流れているんですけども……」

「……イルシアに頼んで少しずつ噂を訂正してもらえばいいんじゃないか?」

「そうだ、庶民的かつ平凡なあの子なら―――」



 ☆



「無理だった……」

「すごいなアレは……」


『恩人さんの悪口を流すなんてできません!!それに、恩人さんはカッコいいですよ』と、言われて断られてしまった。

 とりあえず、後半だけ覚えておこう。一週間は心の支えになる。


 その瞬間、寒気が俺を襲う。


「うひっ……変な声でたな……」

「……何か嫌な予感がするんだが……」

「俺も……」


 この時は、知らなかった……。

 あんな事になるなんて……。



 ☆



 ―――魅化流(みける) 視点―――


 僕、それを一言で表すのは簡単。

 社会的立場から見て弱者。

 つまり、多人数に苛められている方の人間だ。

 そんな僕の唯一の慰めが姉さんだ。苛められているのがバレた時は親に伝わり教師に伝わって大事にならないかひやひやしていた。

 だけど、しなかった。

 いつでも、姉さんは僕を慰めてくれた。


「はぁ……」


 机に平伏(ひれふ)しながら溜息をつく。

 学校とは、僕が嫌いな場所の一つだ。


 僕が、苛められてるのには原因がある。

 小学校五年の頃に、一度先生に怒られた事があった。

 原因は、僕が漫画を学校へ持っていったこと。

 それについては、反省している。だが、怒られる筋合いは無いと思う。

 だって、それは僕自身が描いた漫画なのだから。

 父さんがイラストレーター母さんが漫画家。この間に産まれた僕は絵を描くのが好きだった。

 夢中で描いていた。

 だが、母さんと言うのは女性がなるものだ。

 描いていたのは少女漫画というもので、僕もその影響が大きかった。

 学校で絵を見られたときに、周りから声が上がった。

 勿論、その時から苛めが始まったのだ。

 そして、訳のわからないままそれが広まり今でも苛めを受け続けている。

 当然、秘密と言うのは隠しきれないものだと思うが、教師側が苛めなんかあるわけないと思っているうちは全て容認され、放置される。

 そんな中で僕は生きている。

 自覚している。親を怨んだ事などない。悪いのは僕。それで納得すればいい。

 そんな考えをもって、生きてきた。まさか、漫画や小説のように苛められっ子が異世界に飛ばされ、周囲が変わっていくと言うことも無く、ただ暮らしていた。


 背中が突かれる。

 後ろを見ると、同じ少数派(苛められっ子)の笹野君が否目(いやめ)でこちらを見ていた。


堀駄(ほりだ)君が呼んでるよ……」

「ふぅ……わかった。今から行くよ」


 教室の前にいる数人のグループに向かって歩く。

 少しでも、殴られるまで時間を稼ぎたかった。それだけだ。


「ちょっとこいよ」

「……うん」


 ニヤニヤとしている顔が気持ち悪い。

 弱い立場の人間と言うのはこんな事をいつも考えているんだろう。

 僕は、それが嫌いだ。

 暗い話なんて嫌い。清々しいほど明るい話は好き。

 悪のほうの感情を溜め込んでいても何も動き(アクション)は起きないと思う。

 だから、前向きに生きていく。

 簡単な事だ、感情をコントロールするなんて苛められている方には簡単。


 何度目か、屋上へ連れて行かれた。

 勿論、殴られ、蹴られ、殴られの繰り返し。

 苛める側の人間は何を目的としてやっているんだろう?

 目的を忘れるほど殴ったのに、まだ償いきれていないと言うのか。

 ただ単に、一時の感情を忘れるために暴れたいだけじゃないのか?

 考える。

 そして、わかる。

 人間の考える事なんて全て一緒だ。

 当たっている。当たっているんだ。

 だが、それを言って何か変わるわけじゃない。

 変わるとしたら僕の傷の数か。


「ケッ、コレじゃ人形だな。お喋りできんのか?」


 顔を近づけてくる……名前も知れない同級生に殴られる。

 人形。

 その表現は合っている。

 人に愛情をもらえない為、愛情に飢えた人間が頼る道具。

 人形遊びなんかがその例だろう。

 だから、苛めなんてまだ表向きに入る。

 裏向きは、誰かに愛情が欲しい、誰かと一緒にいたいと言う気持ちだ。

 だから、群れを作る。

 そして、一人の人形を殴る。


 屋上のドアが閉められる。

 今は、昼放課、鐘は少し前に鳴った。


「まだ、動かせる……」


 手は無事だったようだ。

 目も大丈夫。


 絵のことを考えていると楽しい。

 自分で自分の記憶を形として描いて残したり、自分の空想から生まれた人物を描いたり。

 そこから、物語を作ったり。

 全てが楽しい。

 そこに失敗が含まれたとしても、それは変わらないだろう。


「偶然があったらいいのに……。そうすれば、きっと僕は選ばれるだろう。……神様に今までの分の幸福をもらわなきゃ」


 呟く。

 確か、昼放課の次は移動教室だったはず。

 なら、教室に行って準備をしたら帰ろう。

 今日なら親は居ない。


「ゲームでもして姉さんと遊ぼう。きっとネタに飢えてるからね」


 そういいながら、僕はドアの取ってを掴む。

 その瞬間。


 僕の右手はドアノブに食われた。


「は?」


 たった一瞬だった。

 重力とか無視して体がドアに吸い込まれる。


「え、えっと?」


「ふふふ、来たか。皆見ろ。これがクラの力だ。古代魔法など朝飯前なのだ」


 声のしたほうを見る。

 綺麗なドレスを着た金髪の女性が高らかに笑っている。

 その後ろにはポカンとした顔で筆と紙を持った黒髪の男性が女性を見ている。


 周りには大勢の豪華な服を着た人間が集まっていた。


「ど、どうなってるの?」

「ククク、理解できてないようだから教えてやる。クラが使った、次元転移の魔法によってお前はここに召喚された。これだけだ!」

「はい?」


 十数分前、僕は異世界なんて無いと思った。

 そして、一分くらい前、僕は幸福が欲しいと言った。


 ……神様は、僕の事が嫌いらしい。


 ☆



 ―――クラディ 視点―――


 ことの始まりは昼だった。

 いきなり、現れたルーさんに連れられ着てみれば学院で、姫様が高らかに笑いながら「これが私の良人だ!!」と言っていた。

 反応がいまいちだったようで、丁度手に持っていた本を見てニヤリと笑った。


 そして、今現在何故か文字を書かされている。


「な、なんて書けば?」

「このサルタの馬鹿が見つけた一つだけの魔法は、異界より特殊な力をもった人間を呼び出す、つまり召喚する魔法だと。そう、クラは魔法を使えるのだ!!」

「そ、そうだったの?」

「姫様、微妙に違うと思いますが……」

「ん?まぁいいのだ。見ろ。これが私の良人の真の力だ!!」


 もう、学院中の人間が俺と、その魔法とやらを見ようと円を作って見守っている。

 一回俺の脳内を探索してみる。

 結果、魔法を使った事など一度も無いということが判明した。


「よし、今から言う言葉を古代文字で書け。内容は簡単。異界の住民召喚!!とかで」

「とかって……」


 まぁ、書けばいいんだろう。

 コレで本当に召喚できたらきっと、神様にこう聞くだろう。


『俺は、何か世界にとってよいことをしましたか?』


 きっと、していないと思う。

 俺がいいことをしたと言うより、姫様がいいことをしている。そんな感じの出来事の方が多かった。


「えぇ~と、異界の住民……召喚……書けま―――」


『ま』の口の開いた状態で姫様を見る。

 何故なら、姫様の目の前に黒い何かが現れたからだ。

 それは、弾けると人間を吐き出した。

 そして、混乱しているような可哀想な人に姫様がニヤリと笑って言った。


「ふふふ、来たか。皆見ろ。これがクラの力だ。古代の魔法など朝飯前なのだ」


 俺は、どう突っ込めばいいのか考えていた。

 どういう原理かは知らないが、見たこともない人が姫様の目の前にいるのだ。

 フィーカが殺気立っていると言う事は、姫様の知り合いではない。


「ど、どうなってるの?」


 可哀想な人が言う。


「ククク、理解できてないようだから教えてやる。クラが使った、次元転移の魔法によってお前はここに召喚された。これだけだ!」

「はい?」


 素っ頓狂な声をあげる人の弁護に回ろうと俺は姫様に文句を言う。


「な、どっからこの人を連れてきたんですか!可哀想じゃないですか」

「まず、連れてきたのはお前、我が良人でありながら優秀な魔法使いのクラだ。そして、可哀想ではない。異界へ行くのは誰もが夢に見ることだろう?」

「え、えっと、理解が及ばない範囲にあるので、僕のわかるような説明が欲しいのですが?」

「ルー、説明してやれ」


 何処からとも無く現れたルーさんが現在の可哀想な男性の立場を教える。


「え、えっと、異世界。魔法。召喚。思いっきりファンタジー」

「ふぁんたじー?それは異界の言葉か?そうなんだろ?ふふふ、やはり成功だろう?」

「色々と言いたいけど、我慢しておこう。そして、俺は帰っていい?」


 好奇心と疑いの目、二つに挟まれている俺の精神状態を考えて欲しい。

 俺は、決して王の器を持った人間ではないのだから。


『ま、魔法はあったんだ……』

『しかも成功させて……』

『弟子にしてください!!』


 俺も、私も、と次々に猿の如く飛び掛ってくる人をボフストが抑える。


「人間の力とは時に恐ろしいな……」

「ボフスト、今(さと)らなくてもいいよ」

「あぁ、俺も今悟りたくなかったよ……」


 所詮、俺達も可哀想な人なんだろう……。


「何か危ない事になってるんですけど!?」

「安心しろ。これはクラの人気によるものだ。キサマに被害は無い」


 俺の被害はあるんですか!!


 ちょ、危ないよ?

 危険とは今現在の状況を表す言葉だよ?


 必死に考える。


「無理だ……」

「ボフスト、頑張るんだ」

「この体勢を見て言うか……」


 ボフストの体勢は、鉄がグニャリと曲がったようなものだった。


「姫様、その人を安全な場所へ!!俺は……俺は……ボフスト……君の事は忘れない」


 それと同時に逃げる。


「薄々感付いてたぞ!!」


 ―――ダダダダダダダ


 俺の脳内に響くその音は、決して偽りではなく、まやかしでもなく、ただ、俺を危険に晒すためにある音なんだろう。



 ☆



 ―――姫君 視点―――


 今回に確認したかったことは四つ。


 まずは、私の良人に対して悪口を言う奴をどれだけ減らせるか。

 フーに聞いたらわんさか居たようだ。

 次に、授業の中の異界の住民と言う奴を見てみたかった。

 良人が魔法使い。私の理想だ。

 三つ目は、クラをこの学院に引きずり込みたかったからだ。

 私と離れ離れでは、クラも可哀想だしな。

 そして、最後。これが大事だ。

 クラの力は異界にも通じるのか。

 これだ。

 結果、全てが私の考えどおり。

 今度、異界へ出かけようか……いや、クラに頼ってばかりではいかんな。


「と、言うわけだ」


 夜。城の一室である、私の部屋にてこの件にかかわりをもっている奴に全てを話す。


「さ、さすが姫様……」


 尊敬の眼差しなのだと思うが、一部別の感情が混ざっている気がする。

 何か寒気がするのはそれが未知の感情だからだろうか?


「呆れるな。周りもだが、シタ姫の思考にもだ」

「一国の姫に向かって……と、普通は怒るものか?」

「それ表面上だけだろ?」

「ボフストは、どっかの国の貴族なんでしょ?」

「ん?初耳だが?」


 何だ、なら客人としての立場も用意したのに。


「な、何気に僕はのけ者ですか……」

「えぇと……ミケとやら。お前は幸運だったな。全人類がたぶん思っているだろう夢を叶えたんだから」

「僕は、異世界になんか来たくありませんでした……」

「フー、コイツを打ち首にしろ」

「はい」


 クラが止めに入りながら、何とか最初の位置へ戻る。


「と、言うわけでだ。クラはこの中で最強ということがわかった」

「俺が最強!?」

「同意」

「……まぁ……そうだろうな」

「私も、そう思います」


 ……多人数が勝つ世の中なのだ。

 まぁ、聞いた話によると絶対王権とか言うふざけた制度もあるらしい。


「よし、ミケとやら―――」

「ちょっと待ってください」

「ん?何だ?」

「僕の名前は風鹿(ふうか)魅化流(みける)……覚えましたか?」

「長い。そして、難しい。親はもっと注意すべきだった。さて、ミケよ―――」

「いや、話は元に戻りませんからね!!」

「何だ?」


 まだ、あるのか?

 ミケという猫らしい名前通り、自由気侭に話題に入ってくるな……。


「仮にもお姫様だとしたら、少しはおしとやかにしたらどうですか?」

「無理だ。それは無理だ」

「ひ、姫様のいいところは、男らしい性格と、少しぺ、ペタリとした胸―――」

「俺も無理だと思う。それと、フィーカ。それはこんな少年の前では言っちゃいけない」


 もう、私が答えるまでも無いだろう。

 そして、フーに後で制裁を下そう。


「いや、僕はもう高校生ですよ……あ、ここには高校ありませんか?」

「無い!!」


 もう少し、異界と言う事を自覚しろ。

 そうだな……フーの私を敬う気持ちと、ボフストのいかにも異界の住民ですという雰囲気を併せ持った感じがいいな。


「えぇと、もう十六なんですから!!」

「年上……だと……」

「おい、嘘だろ?」

「姫様!!私はもう、姫様が居なければ生きていけません!!」

「えぇと……本当ですか?」


 最後に、ルーが聞く。

 いや、若いだろう。

 嘘を付いているようにしか見えない。


「え、えぇと、日本人は若く見られるって言われるから……かな?」

「にほんじん……人種か?」

「まぁ……」


 ふふふ、私の勘は冴えているな。


「では、問おう。お前の特技は?」


 何か特殊な力があるはずだ。

 その場合、それを言うだろう。


「えぇと……絵を描くこと……かな?」


 たぶん、クラ以外の脳内では、クラの能力の絵描き版という形で記憶されているだろう。

 絵と言うのは現在の状態を表すのに適しているが、文というのは数秒、もしくは数分の状態、つまり経過を表すのに適している。

 ……使いどころしだいで、この国は無敵になるだろう……。

 まぁ、私は戦争などという、指揮しているだけの戦いなどやりたくはないがな。

 やるとしたら……そうだな、前クラが言っていた武道大会など出たいな。


「よし、絵を書け。クラ、紙と筆だ」


 クラが紙と筆をミケに渡す。

 何をやるか皆興味を持っている。

 いや……クラだけか……。

 クラ以外おおよその予想は付いているしな……。


「何の絵を描けば?」

「そうだな……林檎でも描いてみろ」


 黙々と描き始める。

 私は見えないが、ルーが口をあけてじっと見ているのでよほどすごい林檎の絵なんだろう。

 ……私ともあろう者が緊張してきたな……。


「描けま―――」


 そこで、口が閉じる。

 いや、強制的に閉じられた。


 林檎によって……。


「いつ……っ」


 私は林檎を手に取る。


「ほう、この林檎は林檎の癖に紙から飛び出し描いた本人にそのぎっしりと実をつけた体を武器に体当たりをしたか」

「そ、そんな説明はいりまへん」


 どうやら、舌を噛んだらしい。

 ……笑いを堪えるのに必死なのだが……。


「まぁ、ここで暮らすといい。お前が、異界の事を全て話すまでの間だな」

「………」


 話し終わったら、元の世界へ帰してやろうと、付け加え、解散した。


『後書きと言う名の調査プロフィール』



クラディ・ネクスト 男 15才


説明 姫様の愛を過剰だと思いつつ、何処かへとふと外へ視線を向ける日々を続ける男。普通の日常を求めているのか、それとも癒しや和みを求めていたのか。どちらかは誰にもわからない。


人生表(じんせいひょう)


0歳~12歳


父親(サンダス)と旅。


12歳~15歳(前半)


小さな村で居候をしながら畑仕事。


15歳(後半)~現在


トルト国の姫様とつりあうように努力中。



以上』


容姿


畑仕事をしているので少し焼けているが、基本的に白に近い肌色。

不釣合いな黒目と黒髪で、本人は気に入っているらしい。


特徴


決断力の乏しいところ。

だが、一点に進むと決めたら行動が早い。


能力


『モノカキ』


概要


文字を書くことで発動する神懸り的な能力。

その上限は不明。異世界への干渉も確認済み。

何でも叶う素敵な能力。


一つ、条件があるとすれば古代文字(こだいもじ)で書かないと発動しない。

だが、クラは詳しいのであまり難にはならないだろう。


作者から


「王の器があるのか無いのか……。まぁ、一つ言えるとしたらハーレム状態はお好きですか? 姫様の暴走を―――(強制終了)」



クラ『次回予告は俺か』


クラ『次回!ミケの能力最大限に発揮?『何だ、自分の国でやればいいじゃないか』です。何か寒気とか悪寒的なものがするのは気のせい?』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ