11話 『~聖剣伝説~ きっと恥ずかしさからくるものだと思う』④
今回で一章みたいなの終わり。
フーがすごい事します。
―――クラディ 視点―――
俺が起きると、おかしな事態になっていた。
フィーカが姫様に告白するというシーンだ。
それを、姫様が勝負で決着をつけようと言っていた。
……とりあえず、俺は退避しようか。
いや、待ってくれここは中庭だ。すっごく広い中庭だ。隠れる場所なんて無い中庭だ。
「やられる!!」
すぐに察知した俺は、兎に角さっきお兄さんが走って行った方へ逃げる。
「ん?お前は……」
「お、サル!!」
「おサルではない!!私はここに姫様を連れ帰るように命令された―――」
「おサルガード!!」
「クラぁああ!!」
君の事は忘れない……。
先頭に俺、次に姫様、最後にフィーカの順番で追いかけられる。
何をしたと言うわけでもないのに理不尽だと思うが、あの姫様の考えは俺の理解を超えているのであまり考えないようにする。
ただ、身の危険を感じたから逃げればいいのだ。
「あ、ふぅ……」
行き止まりに来てしまった。
一回、息を整える。
後ろには壁、前からは敵が……。
ならば、やることは一つだろう。
「突撃!!」
俺が突っ込む速さと姫様がこっちに突っ込んでくる速さ分の頭突きが何処かに入る。
あぁ、入ったはずだ。
「クラ、軟いな」
「打撃が通じないだとっ!?」
フィーカの装備は槍と重いのでここまで来るのが遅い。
まだ、時間はある。考えるんだ。
……そうだ、せめて楽に死のう……。
いや、違う。そういうことじゃない。
「ひ、姫様!!クッ……てりゃぁあ!!」
素早い動きで突きを繰り出すフィーカ。
俺は、姫様に片腕で抱えられる。少し、男としてのプライドが傷ついた……。
「欲しい物は自力で奪う。基本だぞ!!」
そういいながら、さっきまで居た行き止まりとは逆方向へ俺を抱えながら走っていく。
言っている言葉に色々矛盾があるが、この際気にしない。姫様に連れられて何処へでも行こうじゃないか。と、覚悟を決めていると後ろから何かが飛んでくる。
「ん?ナイフか」
飛んで来た一つを受け止めて吐くように言う。
もうちょっと、焦ってください。
俺の命が亡くなります。
「姫様から離れろぉお!!」
「ふっふっふっ……クラは私の物なのだ」
いつから俺は物になったんだろう。
……姫様のという部分が否定できない自分を怨む……。
「き、君達……あぶないじゃぁっ!?」
―――バキボッ
きっと、今のは骨の折れた音だろう。
幸い、天才薬師のお兄さんが居るから三日もすれば直るだろう。
どうやら、俺は怪我のしすぎで特殊な免疫力のような物を手に入れてしまったらしい。
俺としては、旅をしている頃に入った遺跡で何か治癒力を上げる細菌を体に取り込んだんじゃないかと思っている。
決して、怪我のしすぎと認めたくないわけではない。
「ひ、姫様っ……はぁ……はぁ……」
重いであろう装備に舌打ちしつつ追いかけてくるフィーカ。
―――ボリッ
今、サルタから聞こえた音はなんだろう?
まさか、姫様と同じ部分を踏んで骨がさらにぼろぼろになった音じゃないだろう。
……いや、あの重装備だ、何処を踏んでも砕けるだろう。
「ダメだ……最悪の想像しか浮かばない……」
何故、俺の想像の中の俺は頭から血を流しているんだろう……。
「ん~、今ここで追いかけっこしてても埒が明かないな。ここは、じっくりと二人きりになった時に……ふふふ」
最近、姫様が危ないような気がする。でも、しっかりと守ってくれているので一応は感謝している。
姫様から、解放され、食料も積み込んで夕食を食べ終わった後、俺は前にも泊まった一室へきていた。
清潔で、真っ白で、豪華な部屋には、さまざまな宝飾がされている。
「……寝れないな……」
なんなら、病室のベッドでもいいのだが……。
「床で寝ようかな……」
「いけませんよ」
声のしたほうこうを見る。
そこにはメイド服姿のルーさんが居た。
「お久しぶりです」
「はい。一日だけでしたが休暇をありがとうございました」
「いえいえ」
ルーさんにはこれからもお世話になるので、疲れているだろうから休暇にしてもらった。
もう少し、休んでいてもいいと言ったのだけれども、職業柄か他人の面倒を見ていた方が安心するらしい。
いい人だ。
「だが、いい人止まりという非情に悲しいお知らせが……」
「何の話ですか?」
おうっ!?限界をぶち壊したよ?
その小首を傾げる動作がステキだ……。
「あぁ、そうだ。あのベッドじゃ豪華すぎて寝れないよ」
「それは慣れていただくしか……」
「国の経済が傾いた時王様が不眠症が困るでしょ?」
「その、後ろ向き発言をする王様だからこそ大丈夫でしょう」
褒められているのか微妙だ。
俺は、病室の質素なベッドで寝ることにした。
最後に、ルーさんに少し頼みごとをしておいたのでたぶん今日の夜は襲われないだろう。
☆
―――姫君 視点―――
チェスのクイーンはほぼ最強と言ってもいい。
そう、今はクイーンも動く時代なのだ。
「のんきに寝ているクラを……」
そんな事をしている間に、時間が経ってしまう。
如何せんクラにベタ惚れというやつだろう。
「やはり、行動あるのみだな」
大丈夫、フーはしっかりと動けないように縛ってきた。
クラには何もしてない。だからこそ警戒を解いている今頃を……。
―――コトッ
「ッ!」
危ない。見回りの兵士に見つかるところだった……。
これは、かなり難しい任務だろう……。
「ふふ、帯剣しておいてよかったな……」
服装はアレだが、腰に剣をつけておけば見回りと言い繕える。
完璧だ。
「ぬぁっ!ひ、姫様……。そのような格好で……」
「気にするな、見回りだ」
動きやすいように、少し透けている夜着を着ているだけだ。気にするほどの事でもない。
しかし、冬というのは気にしていた方がよかったな……。
「ひゃ、ひゃい!!見回りご苦労様でありますです!!はい」
「ん、よろしい」
うまく誤魔化す事ができた。
案外簡単にクラの部屋に着く事ができるではないか。
☆
ここだ。ルーには聞いた。合っているはず。
少しずつ扉を開けていくと、ベッドに潜り込んで寝息を立てているクラを見つけた。
もはや、ここで理性という物は崩壊した。
ここからは、迅速かつ、瞬間的な速さを求められるのだ。
「くらぁ……」
耳元で囁く。
暗くてよく分からないが、寝返りをうっただけで終わった……。
「くぅらっ!!」
布団を取る。
「な、何だ!!」
……こいつ誰だ?
おい、何だコイツ?
……サルタか。何故先客が居る。おい、誰か反応しろ。
「ふふふ、夜に私の元へ来るとは……やはり、私のことが好きぎゃぁっ!!」
「黙っておれ。妾の作戦に気づかれただと……。ふふ、やはり我が良人……やるな」
だが、甘い。
妾にはクラの居場所など丸分かりだ。
☆
―――クラディ 視点―――
「―――うぎゃぁっ!!」
遠くから聞こえてきた声で目が覚める。
姫様は罠に掛かったみたいだ。
ルーさんに頼んだ事は二つ。
・サルタをあそこへ誘導
・姫様にわざとらしく俺の部屋を教える
この二つだ。
だが、勘のいい姫様の事だ、俺が他に来る場所であるここはバレていると考えていいだろう。
王都までは守りきってやろうじゃないか。
「クラッ!!見つけたぞ!!」
「ぬあぁっ!」
俺は、ここに姫様が来ることはわかっていた。
だが、驚いたのはその格好だ。
「え、えぇと、その格好は?」
「クラの好―――」
「違いますから」
「……じゃあ何が―――」
「普通でいいんです。あ、いや、ここで着替えないで。普通に寝れればそれでいいって意味だから」
「注文が多い」
「一つだけだからね!?」
流れ星に平和をお願いするのを馬鹿にする奴いるけど、馬鹿にしちゃダメだよ?
「ルーさん!!」
「ふにゃ……」
……え?
ちょっと待ってくれ。
ここで、終わり?
「ちょ、ルーさん!」
傍らにいるルーさんの肩を揺する。
「ふぁぁあ~~」
「クラ……メイドに手を出す前に私に手を出せ。いつでも声をかけてもらえば―――」
「奪取!!」
ルーさんを連れて逃げる。
うん、男はコレだね。
ルーさんが軽くてよかった。
「クラ?」
でも、肉体派のお姫様はよくなかった……。
「さぁ、いくぞ。私達の未来へ!!」
天国へ送ってあげるとしか解釈の仕様が無いな……。
ん、ちょっと待て。
発想の転換だ。
俺が姫様に襲われる。俺が不幸になる。
姫様が俺に襲われる。フィーカが不幸になる。
すっ飛んでくるだろう。
「姫様……部屋は―――」
「死にたいですか?」
夜風が気持ちいいなぁ~。
「じゃじゃあ、寝るから。さようなら」
これで、もう教われないだろう。だって、フィーカが居るから。
「ふにゅ……」
「寝起きのルーさんに癒されていよう……」
それがいい……。
―――姫君 視点―――
「な、何故邪魔をした!!」
「ふ、ふふふ……」
ぬ……なにやら危険な予感が……。
「一つ、一つだけ言わせてください」
「何だ?」
とりあえず、一夜のうちに二度帯剣しておいてよかったと思う日がくるとは思わなかった……。
「私は、あいつ……クラのことを愛してなんかいませんし、好きじゃありません」
……嘘だろう?
では、私の勘違い?
……え、えぇと?
「つまり?」
「私は、姫様一筋です」
「え、あぁ、これからもよろしく頼むぞ」
どうやら、私の勘違いだったようだな……。
なにやら嬉しいような惜しいような……。
あのままなら、既成事実を……。
―――フィーカ 視点―――
「な、何故邪魔をした!!」
「ふ、ふふふ……」
姫様が下衆に襲われる……ふふふ……。
あっ……いけない。まずは誤解を解かなくては……。
「一つ、一つだけ言わせてください」
「何だ?」
何で、剣に手を当てているんだろう?
「私は、あいつ……クラのことを愛してなんかいませんし、好きじゃありません」
言った……。きっと、誤解は解けた。
そう思っていたのは、私だけらしく、姫様が聞きかえす。
「つまり?」
も、もう一度言うのか……。
いや待て。こんな暗い場所で姫様と二人きり……。
いける!!
「私は、姫様一筋です」
告白……。
どんな答えが返ってくるんだろうか……。
「え、あぁ、これからもよろしく頼むぞ」
そういうと、姫様は身を翻して自室へと戻っていってしまう。
「あ、あれ……。姫様って……あの馬鹿並みに鈍感……なのですか?」
勿論、答えは帰ってこなかった。
『後書きと言う名の慰安』
作『とりあえず、笑わないから話してみなさい』
フー『絶対笑う……』
作『まぁ、姫さんは鈍いから……さ?』
フー『そのハテナは何だ!!』
作『鈍いとこの作者が断言してまっていいのか?ハードルが今より高くなるぞ?』
フー『うっ……』
作『危なかったな……』
フー『……どうすればいいんだ……』
作『これは神の与えた転機だ。これから男にも目が突き刺さるような痛みにぃい!!』
フー『姫様……私……頑張ります』
作『目がぁあああ!!』
フー『次回!平穏撃破!新たなる始まり?『大波乱の○○』だ!』
作『目がぁあああ!!』
フー『次は……喋れないように喉を逝きますか?』
作『……今日は天気がいいな~』
フー『見えないですよね?』