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 放課後になり、私はひなたちゃんと人之間 蓮が一緒に帰っている姿を見てから席を立った。

 たしか帰り下駄箱でバッタリ会いそのまま一緒に帰りお互いのことを話す。そんな内容だった気がする。


 アニラブは学園がメインのゲームなので基本的に放課後がメインだ。

 そこにたまに文化祭などのイベントがあり、どんどんストーリーが進んでいくゲームだった。

 主人公の選択によって出会うキャラや仲良くなるキャラ、好感度が上がるキャラが変わる。

ここから暫くは順番にヒロインと話していき、そこからどんどん気になる子を絞っていくっていう感じだった。

前世であまりゲームをやって来なかったけどきっと定番な内容だと思う。

 家に帰ったら色々思い出してメモしないと……


 


 そんなこんなで次の日の2人目のヒロイン小仁熊 雫とのイベントが始まっていた。

これも昨日と同じ放課後のイベントで主人公が部活に入ろうか悩んでいるところに小仁熊雫が声をかけてふたりで部活を回るという話だ。

 ここでちょっとシリアスな話が入ってくるはずだった……

 


 今日も私は関わらないでおこうと思い2人の姿が消えてから立ち上がり帰ろうとした。


 なのに……

 なんで目の前に推しの伊織くんがいるんだろう!!


さて、帰ろう。と思った時に肩をつんつんされて、後ろを振り向くと、伊織くんがいた。

びっくりして思わず飛び上がった私をみて伊織くんはふふ、と笑った。

「いきなりでびっくりさせちゃったかな?」

 なんて言いながらもちょっと意地悪な笑顔な伊織くんにドキドキが止まらない。

 え、何カッコよすぎるんだけど?

「……ご、ごめんなさい、

 ちゃんと話したのが、初めてだったから………」

「たしかに、自己紹介では話したけどこういう風に2人で話すのは初めてだよね。

 なんだか1年生の時と雰囲気が変わったよね。」

ゲームの主人公と会う前の私と今の私ではたしかに雰囲気が全然違うと思う。

クラスメイトもビックリだろうなぁ。

 たぶん伊織くんは1年生の時も同じクラスだった。でも全然関わりが無かったし、なんならほとんど記憶にない。

 これもゲーム的都合だと思う。悔しい。

「そ、そうかな……」

 上手く喋れているか心配になる。大丈夫かな。今前髪大丈夫かな。

「蓮に会ったから変わったのかな」

「……え?」

「同じクラスの子達はみんな蓮のことを気になってるみたいなんだ。そりゃああんなにカッコイイもんね。」

「そうなんだ……」

「猫宮さんもそうじゃないの?」


……もしかしてゲームの裏側ではこういうことを常に伊織くんはやってたのかな。

 主人公視点でしかゲームなんてやったことが無いので分からないけど、伊織くんは主人公のサポートも、そしてヒロインたちのサポートも裏でやっていたのかな。

そうじゃないとこんな質問してくるのはおかしい。

 いま思うと伊織くんはヒロインたちの事をたくさん知っていたし、アドバイスとかもしてくれていた。

 ゲームだしあまり気にしていなかったけど、主人公が知らないところで沢山情報収集みたいなことをしていたのかな。

 私が人之間 蓮に興味があるだろうと思って話しかけてくれた伊織くんには申し訳ないけど私は全く人之間 蓮に興味が無い。

「私は別に、興味ないかな……」

「そうなの?

 もし猫宮さんが気になることがあったらなんでも聞いてね。」

 サポート役として関わってくれているんだ……かなしい……どうすればこの人からみて気になる女の子になれるんだろう。

 せっかく可愛いヒロインになれたのだ。そして目の前に推しがいるんだから私は目の前の彼と仲良くなりたい。

「……私はい、兎内くんと友達になりたい」

 私にとっても精一杯の告白。

今、顔が真っ赤だと思う。顔が焼けそうなくらいあつい。

 てか危ない伊織くんって言いそうになった。


「だから私と友達になってほしい」

 ……心の中ではまずは、を付けているけど。

意識してもらうためにもまずは友達からだ!


伊織くんはビックリしたような顔をしたあと、いつも通りの優しい笑顔になった。

「もちろん、友達になろう。」

 


「……あの、伊織くんって呼んでもいいですか……」

 緊張しすぎて敬語になってしまった。コミュ障か。

 でもこのままだといつか普通に伊織くんって言いそうになってしまうと思ったので先に伊織くんって呼びます宣言をしといた方がいい。

 友達っぽいし意識して貰えるんじゃない……?


「全然いいよ。

 ……でも僕は緊張するからまだ猫宮さんでもいい?」


 恥ずかしそうな顔をしながら伊織くんは自分の首元を触ってる。

「全然大丈夫です……」

むしろそうしてください。推しに乃愛ちゃんなんて言われたら溶けてしまいます。


 そして伊織くんは妹の所にいくね、と行って手を振って階段を降りた。


……推しを攻略したいと思ってから2日目で友達になれた。

 正直に言うと、絶対に自分から話しかけることは出来ないから一生関われないと思っていた。

 胸のドキドキが止まらないし、思い出しただけで話が出そう。今日はウキウキした気持ちで帰ることが出来るだろう。


 明日もいい日になるといいな。

……なんて思っていたけど私は忘れていた。


 明日は3人目のヒロインである私と人之間 蓮とのイベントがあるんだった!

 どうしよう……今が楽しすぎてすっかり忘れていた。

 どうにか回避したいけど、今はこの幸せな気持ちに浸っていたい。

 明日考えることにしよう。


そんなことを考えながら教室を後にし、家に着くとバッグについていたはずのストラップが無かったことに気づいた。


「どうしよう……」



 

 

 


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