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気付けばホームルームが終わり休み時間だった。
……まずはゲームについてしっかり思い出そう。
正直授業とかどうでもいいし。
ヒロインの1人である私は猫がモチーフになっているキャラクターで、
無口な女の子だが何故か主人公にだけは自分をさらけ出せる……みたいな感じの女の子だった気がする。
……実はゲームの中ではかなり人気があるキャラクターだった気がする。
顔ももちろんの事だが声優さんが物凄い人気な人だったとか。攻略の難易度は普通で基本的には3番目くらいに攻略するのがいいと思う。
チラッと後ろを見る。
このゲーム、アニラブの主人公である人之間蓮は残念なことに私の後ろの席だった。
ゲームではどこにでもいる少年なんて書いてあったが、そんなことは無く普通にイケメンだった。
そりゃハーレムを作れるくらいの人なのだから顔は良くて当たり前か。
ゲームは基本的に人之間蓮がする行動で物語が変わる。
……あまり話しかけられないようにしないと。
そう思いながら周りを見渡す。
同じクラスで、おそらくゲーム内のメインヒロインである犬塚ひなたを見る。
そんな彼女はいま頬を可愛らしく赤く染めていてびっくりした様子だ。きっと私と同じように一目惚れをしたのだろう。(ゲームの中の私と、同じように)
彼女はとても明るい性格で誰からも好かれるタイプのヒロインで、犬がモチーフになっている。
ゲーム内では一番攻略がしやすい。
次は同じクラスの小仁熊雫、熊がモチーフになっていて、運動神経抜群である。けれどある理由があって部活には入れない、ショートカットのちょっと不器用な子で、彼女の攻略ストーリーは泣ける。
そんな彼女も犬塚ひなたのように主人公に一目惚れをしたのか可愛らしい顔をしている。
一気に2人の女の子を落とすなんて主人公、恐るべし……
そして3年生のミステリアスな雰囲気で亀がモチーフの亀遊 麦
大人びた雰囲気にとんでもないスタイルな彼女はゲーム内では会うことがかなり少なく、数少ない選択肢で攻略を上げないといけないので、攻略難易度がいっきに上がるキャラクターだった。
最後に1年生の兎モチーフの兎内美織。
寂しがり屋で甘えん坊の女の子だ。
意外なことにこのゲーム内で1番攻略するのが難しいキャラクターになっている。
会う回数も多く、選択肢も非常に簡単なのだが、彼女はシンプルに言うとメンヘラだった。褒めるだけでは幸せになれないという現実味溢れるキャラだった。
そしてそんな兎内美織の兄、
兎内伊織。私の推しである。
私の左斜め後ろにいて、主人公の隣の席だ。
今はずっと主人公と話しているので説明的なパート中だろう。不思議なことに声が全然聞き取れない。
ゲーム上の都合だろうか。
兎がモチーフになったキャラクターで
ブルーグレーな髪色に淡いブルーの瞳。
身長は主人公よりも少し高いくらいで、主人公のお助けキャラである。
……彼の情報はこれくらいしかなかった。
メインキャラですらないサブキャラになるので基本的には影が薄い。
でも私はそんな彼の顔が物凄く好みだった。
彼の妹の兎内美織が攻略が難しいということはきっと彼の攻略も難しいだろう。
でも絶対に攻略してみせる、、友達になりたい。
出来れば付き合いたい!!
そんなことを思っていたら、授業が始まった。
そして1時間目からゲームで見た内容だった。
先生から紙が配られ、紙には好きな物や趣味などを書くマスがある。
自己紹介としてクラスの人と話す、という時間だった。
たしかここで主人公の選択パートだったはずだ。
誰と話をする?と。
ここで主人公がクラスメイトの中の誰を攻略するのかが分かるのだ。
先生は明るい声で言う。
好きな人、話してみたい人に声をかけてくださいね。と。
そして自由な時間が始まり、私は推しである伊織くんに声をかけようと思った。
絶対に攻略するのだ。積極的に行かなきゃ!
後ろを向こうとした瞬間声をかけられた。
「猫宮さん」
その声の正体は、
………………推しである伊織くんだった。
私は思わずドキリとして裏返った声ではい、と答える。
ドキドキしたまま後ろを振り向く。
わー!!!!目が合った!!!
サブキャラとは思えないかっこよさだ。彼が主人公でも良かったのではないか。
だってあまりにも顔が良すぎる。
「良かったら僕たちと一緒に自己紹介しない?」
そう言いながら優しく微笑んでくれる。
……かっこいい、と思いながらもそれを表に出さないようにこくりと頷く。
そっか自己紹介の相手に私を選んでくれたんだ。
僕たち………………ん?今なんて言った?
僕たちと一緒に!?!?
びっくりしながら伊織くんの隣をみるとこれはまたかっこいい主人公である人之間蓮が私のことを見た。
彼は軽く微笑んで「よろしくな。」と笑った。
気がつけば同じクラスのヒロイン2人も呼ばれ、5人で自己紹介をすることになっていた。
ゲームと違ってはいたが、メインキャラクターが話をするということは変わって居なかった。
ここで私がすることはひとつ、主人公には嫌われる自己紹介を、伊織くんには好かれる自己紹介をする事!
猫宮乃愛は元々ツンデレというか、クーデレキャラである。
2人きりの時は可愛い感じの雰囲気で普段は気まぐれな、まるで猫のようなキャラクターだ。
もし主人公の人之間蓮が私を選ぶ時はきっと元々のゲームの中の猫宮乃愛の性格を好きになるはずだ。
つまり全く逆のいつもニコニコしてる性格になれば、主人公には好かれないはず。
伊織くんの好きな性格は正直分からないので
愛想だけ良い自己紹介をしようと思った。
さすがサポート役と言った感じで伊織くんがナチュラルに司会を始めた。
「じゃあまずは人之間から始めようか」と
主人公の事を指定した。
「わかった。
北関東の方から引っ越してきた人之間蓮です。」
と言いながら紙をずっと私たちに見せる。
漫画やゲームが好き。
なんというか偏見だがよくある主人公の性格だな、思った。
「この学校のことまだまだ分からないから
良かったら教えて欲しい。
よろしくお願いします」
と爽やかな笑顔で微笑むと犬塚ひなたと小仁熊雫は可愛らしい笑顔でよろしくと言った。