等価交換
「この天動説論者が」
「え、ここ中世? ひょっとして今から糾弾される?」
「ああ、ごめんなさい。本当は『自分中心に世界が回ってる人?』と言いたかったの」
「表現が婉曲的すぎる。地動説推進派だから安心してくれ」
結構周りに合わせる方なのだ。
「むしろ恒星は嫌いなくらいさ」
「太陽みたいな人って事かしら、まあ詰まるところ陽キャだものね。貴方なんか一番嫌いなタイプでしょう」
「わかってるじゃないか。僕には海王星辺りが適任なんだよ」
「いやいやいや・・・太陽と一番遠い惑星って言いたいんでしょうけれど、あなた惑星なんて立派なもんでも無いでしょう?」
「え、じゃあ何?」
「スペースデブリ」
「宇宙ゴミは言いすぎだろ!?」
思ったより評価が低かった。
「ともかく練習に緊張感が欲しいんだよ」
「・・・対花神戦に向けて、貴方は天与を使うタイミングを見極める必要があるとは言ったわよ? けれどね・・・」
「言ったんならいいだろう」
「練習内容が問題なのよ! 私のスマホが犠牲になるじゃない!!」
そう、この練習には犠牲が伴う。
というか、何かを得るには何か失わなければならない。
コレは遍く世界の理であるし、医学なんかはその代表格として挙げられる。
人類の要たる医学ですら。
だから、コレは致し方のない事なのだ。
僕の命の為なら、知り合いのスマホぐらい、犠牲にしなくてはならないのだ。
「だから! タイミングを見極める練習として! 君のスマホの上に石を落としてギリギリのタイミングで避けるチキンレースを! 僕はやらなくちゃいけないんだ!!!」
「この天動説論者が!!!!!!」
※
「貸してはくれるんだね」
「まあ言ったのは私だしね・・・・練習は一生懸命やってるみたいだし、最後の能力測定テストとして、一応は貸してあげるわよ」
との事である。
存分にバキバキスマホに改造しようじゃないか。
「グヒヒ・・・本当にいいのかなお嬢ちゃん?」
「構わないわ。わざと他人のスマホに傷をつけるほど、貴方が低俗な人間だとは思わないし」
「僕を殴れ! 二発殴れ!!」
低俗な人間だった。
・・・なんだか、急に恥ずかしくなってきたな。
「まだ何もしてないのに君を殴るなんて出来ないわよ! 意味もなく人に害を加える人間なんて、私が一番嫌いなタイプじゃない!」
「肘! 肘を入れろ! 僕のみぞおちに肘を入れろォ!!」
く、苦しいッ!
この世のどんな暴力より苦しいぞコレッ!
「ぼっ、僕のスマホ! 僕のスマホで代用するから! 今回だけはどうかお慈悲を!」
「なんで私が君を追い詰めてるみたいになってるのよ。普通逆よ、それも不可逆よ」
「い、いやっ! そのっ!」
「いいのよコレで。君の命の為なら、私のスマホくらい、犠牲にしなくちゃいけないのよ・・・・ハハ、いや、本当・・・気にしないで・・・」
「ギヌィピィィィィィィイイィィィィィ!!!」
※
最終的には僕のスマホでやる事になった。
バキバキになった。
今日も空が青い。
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