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私と君で勝ち取った平和  作者: 荒川三橋
一章・振り回される日々
3/5

新しい体

体の主導権が少しずつ戻ってくると、手のひらについた勇者の血から目が離せない。なぜこんなことになってしまったんだ。俺は一体何になってしまったんだ。「君の名前は?」私の思考を遮るように先ほどまで死にかけていた悪魔が問う。

「俺の……名前」頭がぼーっとする。名前なんてノータイムで答えられるはずなのに、頭にモヤがかかって上手く思考が回らない。

「そう、名前はなんというのかな? 教えてくれるか?」

「俺の名前は…後藤」「ゴトウ? 珍しい響きの名前だね。私は名前がたくさんあるのだが、ジンと呼ばれている」

ジンはその後長々と私を褒めた。「よく私を守ってくれたね」「よくできたね」「君のおかげでたくさんの人が不幸な目に遭わずに済んだんだよ」と犬を褒めるように褒めた。今の姿は人より犬の方が近いからそう感じるだけかもしれないが。

私の意識が少し回復して来てので「あんたはいったいなんなんだ?」と尋ねる。

「私か、 私は魔王だそうだよ。始まりとも呼ばれてるし、私を父と呼ぶ人たちもいる」ジンは少し恥ずかしげに笑う。

この自称魔王は何を言ってるんだろう? そもそもこいつは本当に魔王なのか?それに何で俺たちはここに閉じ込められていたんだ。奴隷として売られるんじゃないのか? 疑問が次々に湧き上がってくるが、質問する気力が残ってなかった。

ジンの手招きに誘われてフラフラと近づいていく。体が言うことを聞かないのだ。ジンはそんな俺を見てクスリと笑いながら手を伸ばす。

そして俺の首筋に触れる。触れたところから全身に何かが流れ込んでくる感覚がある。首に触れられただけなのにまるで体の中に手を突っ込まれてかき回されているような感じだった。気持ち悪いはずなのだが不思議と心地良い。

その感覚もすぐに消え去り、身体中にあった痛みや怠さが嘘のように消えた。変貌した体が少しずつ元の姿へ戻っていく。「ありがとうございます……」自然とお礼の言葉が出てしまう。

「いいんだよ。君はもう私の家族みたいなものだからね」

家族? そういえばずっと昔に同じようなことを言われた気がするが誰に言われたんだろうか……。思い出そうとするが頭がぼんやりしてうまく考えられない。体が人間のものに戻り切る頃には意識がスーッと遠くなっていった。

人は地面に転がっている私を見て、次に勇者の亡骸へ、そして半壊した自分の城に視線を移す。「全くこれを立てるのにどれだけの時間とーー」ジンはそこまでいうと私の体を持ってその場をさった。


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