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私と君で勝ち取った平和  作者: 荒川三橋
一章・振り回される日々
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重罪と戦果

「外だ」晴天の空と焼けた瓦礫の匂い。痛みが全身を駆け巡る。頭も強く打ったせいか、頭が回らない。何が起こったのか?なぜこんなことになったのか?記憶を辿るように自分の身に起こったことを思い返す。ゴロゴロとうまく動かせない目に光が強く当たる。


目が眩むような感覚に襲われる。徐々に目が見えてきたとき、目の前には晴天とそれを遮る男の背中が目の前にあった。「誰だと」声をかけても男はこっちを振り向くことはしない。ただただ前を見据えている。彼の視線を追うとそこにはツノの生えた顔なしの化け物がいた。その化け物がちらっとこっちを見たような気がして私は動かせない体を必死に動かそうとした。どうしようもない恐怖に襲われながら、私は何もできずにいた。すると突然化け物は一瞬にして姿を消した。


「あぁ……」安堵感から思わずため息をつく。だが次の瞬間私の目の前にいた勇者は宙を浮いていた。地面に叩きつけられ、衝撃によって激しく咳き込む。勇者が苦しそうにもがきながらも素早く起き上がる。彼の体が黄金の輝きをまとい始め、やがてそれは大きな剣へと姿を変えた。そして彼は先程までの苦しみが嘘のように悠々と剣を構えていた。化け物が再び姿を消すと、予知するように勇者は先ほどと同じ攻撃を今度は受け流す。だが、またすぐに別の場所に現れると、今度は蹴りを入れられ、地面へ押し戻される。それでもなお立ち上がろうとする勇者に向かって化け物がまた消えたと思うと、次は腹部に強い一撃が入る。再び地面へと打ち付けられても立ち上がる彼を見て化け物は驚いたようだった。


「これだけの攻撃を受けて死なないどころか立ち上がるとはな。何を捨てた?何年捨てた?」と化け物は問う。しかし勇者は何も答えずただ剣を構える。「時間がないんだな」と化け物は呆れたように呟く。目にも止まらない速さで両者がぶつかり合う瞬間に飛び散る光と衝撃が辺りの瓦礫をも吹き飛ばす。両者互角の激しい攻防の末、勇者は化け物の腹を引き裂いた。


血を吹き出しながら倒れ込んだ化け物をじっと見つめると、私の右胸に彫られてる紋章が脈を打ち始めた。体に激しい痛みが再び描きめぐると指先が歪に膨らみ始める。私はすぐに人の形と呼べなくなる姿へとみるみる変わっていく。何倍、何十倍と体が膨れ上がり獣の体毛が生えていく。やがて頭があった場所から鋭い牙を持つ口が現れてそこから大きく長い舌が出る。


目は真っ赤に染まり瞳孔が縦長になる。鼻筋が伸びていき頭部が大きくなっていくと同時に耳の形状が変化していき垂れ下がっていく。やがて完全に狼の姿になると、巨大な口から長く赤い舌を出し入れし、空気を大きく吸い込み吐き出す。勇者の体を筒でいた光が掠れ始める。彼はこちらをただ黙って見てる。おそらくこの状況を打破する力が彼には残ってないのだろう。私の体は、魔獣になってしまった私の体は腕を振り上げ勇者を目掛けて腕を力一杯振り下ろしていた。

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