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よくリサーチされたプレゼント

 とりあえず今の所ウリクセス様は私を害するつもりが無い事は、その後の待遇でよく分かった。

 あの謝罪の後、長く拘束されていた縄が解かれ、温かい湯船が用意された。侍女達によりチューリップの花弁が大量に浮べられ、部屋中が良い匂いに包まれる。......あ、もちろんウリクセス様は入浴前に退室されました!

 侍女達によれば岩盤浴やサウナの様な蒸し風呂が帝国では一般的な物らしいが、私は部屋から基本出さないように言われているため部屋に湯船を用意してくれたらしい。そして赤い拘束痕に、深く謝罪されながら香油を塗り込まれ......入浴後には紺色に近い青色に金の刺繍が入ったカフタンのようなドレスを着せられた。

 綺麗になった後は、アズィーム王国で食べていた物に近いレンズ豆のスープや、バターでしっかり焼かれた羊肉と新鮮な野菜のラップサンドなど、私が食べやすいように気を遣って用意してくれたと分かる食事が並んだ。捕らえられてからは基本薬で眠らされ、薬が切れ泣いている時に無理矢理口にパサつくパンを詰め込まれながら運搬されていたので、こんなまともな食事は久しぶりだ。


「……どうして、命に背いてでもなんて考えていらっしゃるのかしら」


 もぐもぐとジューシーな羊肉を頬張りながらつい独り言が出てしまう。

 何かしら国としての事情があって侵略したのだろうとは思う。侵略の際に王族を皆殺しにするのや、戦利品として女性を連れ去るのも理解出来る。前世は戦争とは無縁の生活だったし、今世も平和な日常に慣れすぎていたが、戦とはそういう物だ。

 今回の場合戦ではなく奇襲による侵略だったが……許す許さないは別として、この世で生きていく以上受け入れて動かなければ。アイーシャお姉様が、自分の安全を捨ててでも助けようとしてくれたこの命を粗末になんてできないし……この後のアズィーム王国が真っ当な扱いを受けられるよう動けるのは、きっと私だけ。

 でも……アズィーム王家の血が必要とされていたり、皇帝に従順に見えたのに背くのも厭わないというウリクセス様の言動がよく分からない。十代前半の子供が父親兼皇帝に背くなんてよっぽどだと思う。仮に私がこのような物語を書くとしたら、大抵は『昔から貴女の事が好きでした。』パターンだと思うんだけど……生憎引きこもり生活だった私はウリクセス様にお会いした事は無い。


「それは、是非ウリクセス様本人に聞いてあげてください」


 ライラーという20歳くらいの侍女が、空になったグラスに水を注ぎながら私の独り言に応えてくれる。

 ライラーは濃い褐色の肌に黒い髪。懐かしく思って聞いてみると、どうやらアズィーム王国からの移民夫婦の子として帝国で生まれ育ったらしい。いつか来るアズィーム王国の姫の為にと、当時まだ10歳だったウリクセス様本人が集めた人材の1人だと教えて貰った。


「ライラー?フェーリックス様がウリクセス様の事を異端だと言っていたけど、どの辺りが異端なのかしら?見た目はいたって普通なのだけど……」


 見た目でないなら特殊な嗜好の持ち主とか?真面目そうに見える人ほど実は……みたいな展開はよくある話だ。


「タルジュ様、フェーリックス様とは違ってウリクセス様は本当に根がお優しいのですよ。そういう事は当人同士で話すべきです。数年後には結婚されるのですから」


 ......ん?今のは、空耳?


「待って待って待って、結婚?......誰と、誰が?」


「勿論、ウリクセス様とタルジュ様がですよ。婚約者として近いうちに正式発表するから準備を進めておくようにと、ウリクセス様から命を受けております」


 ……誰かこの急展開を止めてくださーい!!

 思わず頭を抱えてしまう。誰か私に状況を1から10まで丁寧に説明して!?

 守るとは言われたけど婚約するなんて初耳……あぁ守る為に婚約者という立場にするとかそういう系?いやいや、だからそこまでして守られる理由が分からないんだってば!!

 私はただの10歳の小娘。アルビノの姫という珍しさはあるかもしれないけれども、そのせいで基本的にはただの引き篭もり。急いで婚約しなければいけないような価値も理由も無い。


「そういえばタルジュ様が退屈しないようにと、ウリクセス様が沢山プレゼントを用意されているのですよ。ご覧になられますか?」


「……後で見るわ」


 正直、もう情報がいっぱいいっぱいで疲れてきた。お腹も膨れたし、ちょっと休んで頭の中を整理したい。


「タルジュ様が好きな羊皮紙を沢山用意したと聞いております」


「羊皮紙ー!?」


 え!?羊皮紙ってあのお高い紙の羊皮紙よね?そんな良い物くれるの!?


「自由に好きなように使え、と。やはりご覧になりますか?」


「勿論!!」


 持って来てもらった上等な箱の中には、沢山の羊皮紙がびっしりと入っていた。これだけの量を買うにはかなりのお金が掛かったに違いない!……思わず息を呑む。


 むしろここまで良くされると何か裏がありそうで怖いと思ったが、怖さより羊皮紙だ。自由に使える紙があれば絵も小説も書ける!

 何故私が服より宝石より紙が好きな事を知っているのか不思議だが、とにかくウリクセス様ありがとう!!

 現金なやつだと思われるかもしれないが、このプレゼントでウリクセス様の株は爆上がりした。

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