友好国とは名ばかりだったのか
「ほう?それで異端の方を連れ帰ってきたと。フェーリックス、そういう事だな?」
「ええ。アイーシャとか言う女は暗器で抵抗してきましたので。抵抗する女を抱えてアズィーム山脈を越えるのは一苦労ですから」
アズィーム王国を滅ぼした……私の家族を奪ったのは、アズィーム山脈を越えた西側にあるマニュス帝国だった。
私の誕生日パーティーという正式に本宮に入れる機会を利用して、皇帝の代理の使者として訪れていた皇子2人『フェーリックス』と『ウリクセス』を筆頭にした少数精鋭部隊により中枢から裂かれるように滅ぼされてしまった。この作戦は4年も前から練られていたらしく、友好国として事あるごとに宮を訪れ、地下の脱出通路まで念入りに調べられていたらしい。
疑う訳がない、私の祖父の妹にあたる人が輿入れした隣国なのだから。
どちらの皇子も、私の国よりは薄い小麦色の肌に、黒に近いダークブラウンの髪。彫りの深い濃い顔立ち。区別するなら、ふわっとした癖毛で、お姉様を殺した気の狂ってる方が兄のフェーリックス。真っ直ぐの髪をきっちり整えている物静かな方が弟のウリクセス、といった所だろうか。服装はよく似ているが、弟のウリクセスの方はいつも黒い手袋をしているので遠目でも判別がつきやすい。歳は、フェーリックスはアイーシャお姉様より年上、ウリクセスはアイーシャお姉様と私の間、くらいだと思う。
「妹の異端の姫を人質にすれば付いてくるだろうと助言したではないか!アズィーム王家の血を我が帝国へと何度も言ったであろう!」
溜息を吐きながらこめかみを押さえる皇帝。周りの黒ローブの人間達が「まぁそう仰いますな」「抵抗する人間なんぞ相応しくありませぬ」「フェーリックス様は正しい事をなさった」など皇帝を宥めている。
「しかし、こんな幼く弱い姫じゃ子孫を残せないだろうが!」
え?もしかしてこの皇帝、15歳のアイーシャお姉様をそういう目的で連れ帰ろうと思ってたわけ?いくらお姉様が美人だからって、好色家にも程がある。
「別に直系の姫でなくとも良いでしょう?アズィーム王家の血縁であればいい。ああいう気の強そうな女は邪魔なだけ、後が面倒だ」
「血筋というのも少しは考えろ!」
よく分からないが、とにかくお姉様を殺した事を正当化したいフェーリックスと非難する皇帝の言い争いが始まってしまった。
「父上、終わってしまった事を悔やむより次の手を打ちませんか。血筋にこだわるのなら、他にアズィーム王国の血筋をより濃く引く者を探させたら如何でしょう?」
「ふむ……ではウリクセス、この異端の姫はどうする?とりあえず後宮にでも入れておくか?いくら造形が整っていて珍しい色と言えども小娘では相手にも成らぬ。しかし他に置く場所も無い」
後宮、と聞いて背中に悪寒が走る。お姉様をソウイウ目で見た中年オヤジの後宮になんて行きなくない!
「この姫は私が責任を持って預かります。私が姫の口から情報を集めましょう」
「ハッ!年が近いし、珍しいから自分の物にしたいだけじゃ?異端の姫も殺さずにって初めに言い出したのもお前だしな」
「……それでは、情報は1人で集めてください。同じく異端の私が引き受けるのが、1番効率が良いと思って提案したまでです」
「……はいはい、分かったよ。では父上、我が異端の弟に異端の姫の世話は任せて、後は我々でどうにかしましょう」
よく分からないが、とりあえず後宮行きは避けれたらしい。どうやら私の口から王族関係者の情報を集めたいようだが、拷問でもされるのだろうか?
ただの好色家で、国を侵略するついでにアイーシャお姉様を求めたのかと思ったけど、違うようだ。
「ウリクセス、代わりが居ないとなればその姫が育つのを待つ事になる。くれぐれも殺さぬように」
「分かっております。……同じ異端同士仲良くしますよ」




