1話「よくワタシに追いつくことが出 来たね」って、お婆ちゃんが言ってた。
火葬場から家に帰って、遺骨になった人と対面する。
そんな経験、……皆さん無いですよね?
私は、今経験しています。
私のお婆ちゃん、幽霊状態で私との共存の生活がこれから始まりです。
◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇
なるほど、幽体離脱というものってあたんだね、宙に浮くワタシ病院のベッドの上に横たわるワタシ、息子夫婦に孫娘の三春、……
「みんな、ワタシの臨終の側に居てくれてありがとう」
ワタシにも、もうそろそろ迎えが来るだろうて、……
呟いていると、目の前が真っ暗になって聞き覚えのある曲がかかった。
曲名は「ロッキーのテーマ」⁈
不思議なくらいにやる気にする曲じゃな!
ワタシの大好きな曲、……
何より、ワタシの大好きな俳優の映画の曲、……でも何故?
「ブッシューー!!」
後ろからスモークが立ち込めて、大きな扉が現れて開きはじめた。
扉の向こうのは光に満ちており、眩しいこれが天国の扉かね?
やがて一人のシルエットが近づいてきて、まるで、舞台の上の演出のような光景じゃな、でも顔が見えんぞ!
「失礼、これでは紹介になりませんな」
シルエットが指をならしたんじゃが、…
すると、光が程よく屈折され、真上から照らされ、音楽も会話が出来るほどまで音量下げてくれた。
「私、冥界の王イザナミに仕えております死神203号と申します」
うわぁ〜〜
「シルベ○ター.ス○ローン!!」
いや彼を日本人にした感じ、しかも体格もピーク時の頃のマッチョさが、タキシードを着ていても分かった。
ワタシ好みのど真ん中のストレートじゃ!!
「桜井八重様、お迎えに参りました。
私に、ついて来てもらえますかな?」
はい!イエス!オフコース!!
野性味溢れる姿も好きだ けど、紳士的なスタローンも良いな〜、夢心地だよ、…
「はい、…」
エイド○アーンもこんな気持ちだったのかなぁ?
さあ、扉に入ろう、……
「わっちーーゃ!!」
背後で喚く声がした。
「なんじゃい!!」
嫌な予感しかしない状況で振り返ると、光に照らされて孫娘の三春がへたり込んでいるよ。
「あっれ、ここは何処?」
お互い、光に照らされているだけに、目と目がすぐに合ってしまう、短い夢は一瞬で終わったじゃろな。
「お婆ちゃん!!」
「三春!!」
「何と!!」
三人はシンクロする。
「お婆ちゃん、生きてるじゃん!!」
「いや、……」
死神さんを見ると、タブレットを開いて動画を見ていて、そこには倒れた三春の周りで看護婦と医師たちが右往左往している姿が映し出されていた。
「いや、事は重大なんだょ」
死神さんからタブレットを受け取ったワタシは三春に動画を見せてみた。
ワタシの横で、死神さんはスマホをかけて会話を始めている。
「私、死んだの?」
「いえ、貴方様の余命はまだまだ先でございます」
忙しいやりとりの中、死神は説明してくれる。
「じゃあ、お婆ちゃんも死んでないんじゃないの?」
「それが、……」
「私が冥界へお連れする事になっております」
「じゃあ、私もついていく」
死神さんは慌てて首を振る。
「それは出来ません、余命のある方を冥界へお連れする事は、硬く禁じられております!!
何卒、気を確かになされて、現世にお戻りなされますようお願い申し上げます」
「お婆ちゃんと一緒じゃなきゃいゃ!」
三春は座り込みを、はじめる。
ワタシは気づいたのじゃが、ここは広場なようでそうでないんじゃな、大勢の気配が感じるんだよ、つまり姿は見えないが、ワタシ達がここに居るだけで後が支えているのじゃろう。
「三春、…」
ごね倒す三春を説得しようと思うけど言葉が続かない、……
死神さんスマホを一旦切り、説得をしてくれる。
「今なら、軽い脳震盪で終わるのですよ、長引けば長引ほど貴女様の負担も大きくなるのです」
死神さんは、首を振る三春に溜息をついた。
死神さんすいません、……
それにしても三春は何故そこまでついて来ようとするのかね、……
三人が暫く沈黙していると、死神のスマホに着信がかかる。
「はい、203号、……何と!
それは誠ですか!!
はいっ!かしこまりました!」
何かが起こっていそうな感じを受けて、二人は見ていたが、死神は複雑な表情で説明を行ってくれた。
「八重さんの冥界入りは「暫く」延期になりました」
「やったー」
三春は喜ぶが、死神は首を振る。
「但し、魂だけでありますので、現世で
は亡くなります」
「はあ?」
二人は全く同じセリフでシンクロする。
「わかりにくいですね…、つまり体はありません、私の考えでは三春さんの体を共有することがベストですな」
「はあ?」
二人は再びシンクロする。
「仕方がありませんな、…」
死神は指をならすと、場所が病室にかわり、三春の姿があった。
「こういうことです」
ぽんと、ワタシの背中を押して三春に重ねた。
「あれ?」
ワタシは三春の中に入っている、
次に、ワタシを引っ張り出して三春の背中を押して三春に重ねた
「あれ?」
三春は三春だった。
死神は、三春を再び引っ張って取り出す。
「では、注意事項を申し上げます。
我々は一部の人を除いて見える事はございません、但し、我々同士は見えます。
そして、あまり体に入らないでいると、薄くなってしまいます。
最悪の場合には、悪霊となる事もあります。
ここで、厳重注意を二つ申し上げます。
一つ目は、他言無用。
二つ目は、悪霊にならないという事。
ただそれだけです。
お気を付け下さい、我々死神の仕事は悪霊を狩る事だという事をお忘れなきように」
最後の言葉を告げるときの死神の暗い光に二人はゾッとした。
スタローンの野性味溢れる眼光そのままだった。
察してか、死神は笑顔になってワタシだけに声をかけてくれた。
「そうですな、お迎えの頃合いは、三春さんの自立された頃が良いですかな?」
死神さんは、この話は三春には通じないと思ったのじゃろう、ワタシは目でうなづき、死神さんはウインクをした。
死神さんは続いて、三春の目の前で一枚のカードをワタシに手渡して、説明をしてくれる。
「このカードは呼び鈴の様な物です。
このカードのボタンを押してもらえますと、私が再びお迎えに、参りましょう」
三春は見たくなさそうに顔を背けていたが、死神さんがその三春の背中を押して、恭しくお辞儀をしてスーーッと、消えていった。
三春の魂は三春の身体に重なり、三春は気がつく、
「三春!!」
病室に、歓喜の声が響いた。
「ワタシは、どうなるのかね……」
本作品が初めての作品になります。
実は、この作品の元は香坂さんと蝦夷さんとの共同企画から始まりました。
まず、ネタを蝦夷さんが練って、三人で作品に仕上げていくという流れでしたが、そんな時に本筋からそれてしまった作品が、本作品になります。
不慣れなところがありますが、宜しくお願いします。