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救われねばならない者達

「さあ、これを」

「ありがとう……ございます」

「お礼はいいから、まずは食事を」

「はい、ありがとう……、ありがとう……」

 貧困地域に建てられた、仮設療養所。

 そこは、一般的な怪我や病気の治療を旨にした者ではない。

 どちらかというと、生活困窮者の救済が主な活動になっている。



 それだけ貧困地域の状況は悪い。

 怪我や病気以前に、上による栄養失調が死亡原因になっている。

 それをまずは救わねば、治療どころではない。

 療養所の設置者もそれは分かっている。

 だからこそ、収容した者にまずは食事を与えている。

 薬などより、そちらの方が必要な者達が多いのだ。



 とはいえ、与えられるものは大したものではない。

 野菜や肉をまとめて煮込んだスープ。

 それにパンや米がつく程度だ。

 味付けも一応はされてるが、それもかなり雑なものだ。

 それも仕方ないものではある。

 大量にいる困窮者に配らねばならないのだ。

 味などは二の次になる。

 とにもかくにもまず栄養。

 そういう段階なのだ。



 恐ろしい事に。

 悲しい事に。

 そんな料理とも言えない簡素な食事。

 それですら「美味い、美味い!」と言って食べている。

 まともな料理にありつけなかったからなのだろう。

 そもそもとして、味がついて一応は調理がされてる料理。

 それを口にするのも始めてという者がほとんどだ。



 空腹は最高の調味料。

 この言葉が最も悲しい状態で証明されてしまっている。



 そんな状況を救う為に、療養所の設置者達は何とか手を打とうとしている。

 しかし、物事というのはそう思うようには進まない。

「どうにかせねば……」

 療養所の設置者とその協力者や賛同者。

 彼等は常にその事に胸を痛め心を砕いている。

「何とかしないと」



 目の前にある貧困・困窮。

 それに目を向け、実際に手をさしのべる。

 そんな気持ちを実現させる事がどれだけ難しいか。

 その事を彼等はいやというほど思い知った。



 こうして苦しい思いをしてる者達がいる。

 しかし、世の中はそういった現実を無視している。

 多くの人はそうした問題に目を向けない。

 誰も悲惨な人間の事などどうでもいい。

 そういった現実が立ちはだかっている。



 そんな状況に待ったをかけたい。

 問題がある事をしらしめたい。

 そこにいる困窮した者達を見せねばならない。

 何より、それらを救わねばならない。

 そう思って設置者達は立ち上がった。



 困難な道だった。

 歩みは遅々として進まない。

 金も人も物も簡単には集まらない。

 それでもどうにか活動を続け、困窮地を救ってきた。



 おかげで世界各地に療養所を設置。

 貧困地域にほんのわずかな救いの手をさしのべる事が出来るようになった。

 それでも望んだ状態にはほど遠い。

 貧困は消えておらず、困窮する者はまだ存在する。

 それでも、小さな一歩であっても前に進んではいる。



「もっとこれを進めていかないと」

 設置者達は止まらない。

 止まるつもりはない。

 やらねばならない事、救わねばならない人がいる。

 その人達の為にも、するべき事を進めねばならない。

 この世界から貧困や困窮が消えるその時まで。



 ほんのわずかな食事。

 粗末で粗雑な食べ物。

 そんなものすら口に出来ない者達がいる。

 まずその者達に料理を。

 そこから世界を救っていく。

 その為の場所を設置者達は増やしていく。

 これからも、ずっと。

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