表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女地獄  作者: ちぇりーアントワネット
2/4

レッツストーキング(前編)

勢いつけて飛び出したはいいけど先生は一体どっちにいっただろう。


先生が私の家を出てやがて十分程経つ。家の前には既に先生の姿はなく、早矢峰さんの家を私は知らない。



一体、どこをどう探せばいいのだろう?



その時、ふと思い出した。そういえば、翔子ちゃんが早矢峰さんの家に遊びに行ったと以前昼休みにいっていた事を思い出す。


翔子ちゃんは私が幼等部に通っていた頃からの仲良しの友達だ。


そのふくよかな体と全てを包み込む様な貫禄からクラスメイトはママショウコと呼んでいる。


その時は、どうでもいい話だったから、そうなんだーよかったねーと軽く流していたけどもっと詳しく聞いていればよかった。


私は部屋から飛び出すときに引っ掴んだ、ママが選んでくれた可愛くてお洒落なポシェットの中から携帯電話を取り出すと急いで翔子ちゃんに電話をかける。


プルルと二回程呼び出し音が鳴ると聞き慣れたおっとりとした声で翔子ちゃんが電話に出た。



「もしもし、恵梨香ちゃん。どうしたのー?平日はいつも家庭教師や習い事があるから忙しいのに珍しいねー?」



私もどちらかというとのんびりした性格だけど、翔子ちゃんは更におっとりとした子だ。


普段なら気にならない間延びした声に急いでいた私は少々腹ただしさを感じながら私は尋ねた。



「翔子ちゃん。以前、早矢峰さんの家に遊びに行ったことがあるっていってたよね。」



「うん。早矢峰さんのお家も恵梨香ちゃんのお家位大きくてビックリしちゃったよー。確か、お父さんはすごく有名な建築家だったよねー。テレビにも出てたしー。恵梨香ちゃんも凜ちゃんもお家が大きくて羨ましいなー。私の家なんて…」



「あー、ごめんね。翔子ちゃん。明日ゆっくり聞くから、それで早矢峰さんの家ってどこにあるか知ってる?教えて欲しいんだけど。」



「えー。いいけど、恵梨香ちゃん、普段からあんまり凜ちゃんとお喋りしたりしてないよねー。急にどうしたのー?」



「訳は明日学校で話すからごめんけど教えてくれない?」



「うーん、わかったー。いいよー。恵梨香ちゃんの携帯に地図情報送るからちょっと待っててねー。明日その訳を教えてねー。」



そういって通話が切れた携帯を耳から離し、明日までに面倒な言い訳を考えないといけない事に溜息をつきつつ翔子ちゃんからの連絡を待つ。

すると、携帯に新着メッセージが届き、すぐさま開いて地図アプリを起動させる。



なるほど、走ればここから二十分位かな?



私は地図を頭にインプットしてポシェットに携帯を放りこんで見慣れた住宅街を駆け出す。

時間はやがて四時半を過ぎようとしている。

いつもなら六時まで右代宮先生に勉強を教わっているが、私の体調が悪いと思った右代宮先生はかなり早く切り上げている。


頭の中で色々思案しながら走っていると私はとある事に気が付く。


ん…待って。確か、右代宮先生は七時から早矢峰さんの家に勉強を教えに行くと言っていた。

それならば、この時間にいっても右代宮先生もまだ早矢峰さんの家に行っているわけじゃないんじゃ…


私は走るペースを緩めて、やがて立ち止まり息を整えながら周りの景色を眺めると私の住んでいる閑静な住宅街から離れ、未来都市をイメージして作られたというお洒落な繁華街まで来ている事に気づいた。



七時まではまだ大分時間がある。



確か少し先に可愛い小物を扱うアクセサリーショップがあったはずだ。



そこで時間まで暇を潰そう。



記憶を頼りにアクセサリーショップに向かっていると、私の歩く反対側の遊歩道から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


その聞き覚えのある声の方に顔だけ向けると、そこには早矢峰さんの姿があった。

平均よりもやや低い身長に、黒髪を両サイドで束ねたツインテール、勝気な切れ長な目、笑った顔が小悪魔っぽい可愛く整った顔立ち。



あれは間違いなく私が知っている早矢峰 凜だ。



そして、その隣には何故か先程まで私に勉強を教えてくれていた右代宮先生の姿もあった。


楽しそうにお喋りしながら歩く二人の姿を遠目に見た私は思わず近くの物陰に隠れてしまった。



えっ、なんで右代宮先生が早矢峰さんと一緒にいるの。



授業は七時からじゃないの



それに何で二人共こんな所にいるの



そして、何で二人は手を繋いで歩いているの



今見た光景に脳の情報処理が追い付かず物陰にしゃがみこんでしまった私を道行く大人達は訝しげに見てくる。


その視線にいたたまれなくなった私は胸の奥から湧き上がる痛みとも怒りともつかない変な感情を抑えつつ何度か深呼吸をして私は立ち上がった。


再度、大きく深呼吸をした私は今見た光景を理解するにはなによりも情報が足りないと思って二人に隠れながら尾行することにした。


ママと見たドラマで確か元恋人に付きまとっている人の話を見たことがある。

ママも昔モデルの時にしつこく付きまとわれた経験があるらしく、すごく苦々しい顔をしながらドラマを見ていたのを思い出す。


確か、そういう人の事をストーカーとかいってたかな。


でも、私は右代宮先生の元恋人でもないし、単純に早矢峰さんが気になるだけだからセーフだよね。と自分の中で無理矢理に納得させて二人の尾行を続けた。


二人の後をこっそり尾行するけれど距離が微妙に離れていて話がよく聞こえない。


もどかしさを感じているうちに二人はゲームセンターに入っていった。


ここなら人も多いし障害物も多いから絶好の尾行スポットだね。


二人に見つからないように入店する人に紛れて中に入ると、私は二人の姿を探した。

物陰からこっそりと店内を観察するとガンシューティングのエリアに二人がいてプレイしている。


傍に近づきたいけどバレたくない私は二人の場所を今一度確認した後、店の外に出て向かいのコンビニエンスストアに入った。



どこにあるかな?



私が探していた物はすぐに見つかった。


何の変哲もないけれど顔を隠す必需品のマスクである。


そして、購入したマスクをすぐに装着すると、隣の女性向け洋服店に入った。


始めて入った店で、恐らく店の購買層とは違うであろう私だったが、なるべく顔を隠せるような帽子が欲しくて女性店員に場所を尋ねると、貴女みたいな可愛い子にはもっと似合うものがありますよと今年の新作を勧められた。

しかし、私は顔を隠せればいいだけなので近くにあったなるべく地味で顔を隠せるものを選んだ。


結果、洋服は元モデルのママが選んでくれたお洒落なガーリッシュ系のミニワンピース。頭は地味な色合いのキャスケット帽と顔はマスクというなんともチグハグで目立つ恰好になってしまった。


変装した結果、逆にバレるという阿呆な結果になりそうだったので素直に店員になるべく顔を露出したくない旨を伝えて、店員の選んだツバが大きめの白いハットを選んだ。


支払いをしようとレジに行くとハットはそこそこ高額な値段だった。

普通の小学生ならお年玉をはたいて支払うような金額で、店員も自分で選んだけれど本当にこんな子供に支払えるのかしらと訝しげな目でこちらを見る。


しかし、娘である私を溺愛するパパにより、私の財布の中には常に、ママが選んでくれたブランド物の財布と同価値以上の金額が入っているので問題ない。


支払いをする際、恐らく私の財布の中身をチラリと見たであろう女性店員はギョッとした顔をしたが私はそれを無視して手早く支払いを済ませた。


店員は帽子を丁寧に包装しようしたが、すぐに使うので結構ですと断りをいれ急いで店を出た。


ここまでの所要時間十分。



まだ二人はさっきの場所にいるかな?



私は急いでゲームセンターに戻るとこっそりと二人がいた場所を覗く。


すると、早矢峰さんは途中でやられてしまったのか、右代宮先生の隣で既に観戦モードに入りながら時折、危ないとか凄いとか黄色い歓声を上げていた。


私が到着して数分経った頃、どうやら右代宮先生は最後のボスを倒したのであろう。

画面にはエンドクレジットが流れていた。



凄い。流石、右代宮先生。素敵だよ!!



しばらく、早矢峰さんはその場で右代宮先生を褒めちぎるように賞賛の声をかけていたが、突然二人は私のいる場所に向かって歩き始めた。



まっ...まずい。



どこかに隠れる時間はない。



私はポシェットから携帯を取り出すと下を向いて帽子を一層深く被って携帯を触る動作を行う。


二人は私の事に全く気付かず私の横を通り過ぎて行った。


気づかれなかった事は喜ばしい事だけど、ついさっきまで一緒にいた私に全く気づいてくれない右代宮先生に少し悲しい気持ちになったが、その感情は心の片隅に追いやって再度尾行を行う。


二人はクレーンゲームの集まったエリアを眺めながら歩いていると熊のぬいぐるみの前で立ち止まりそのまま一言二言交わすとゲームを開始した。

最初は早矢峰さんが挑戦するけれどぬいぐるみの体勢を少し変えただけだった。


取れないよ―と言いつつ右代宮先生の片手に抱き着く早矢峰さん。



ちょっと早矢峰さん、やたらボディタッチが多い気がするよ。



私は恨めしい目で早矢峰さんを睨みつつ二人の観察を続行する。

次は右代宮先生が投入口にお金を入れてゲームを行った。


一回目は熊のぬいぐるみの座った姿勢を横に倒すだけだった。

しかし、二回目はアームが横に倒れた熊の頭と股を挟むような位置になり熊はなんなく持ち上がり、そのまま商品取り出し口にぬいぐるみは吸い込まれていった。


それを右代宮先生が取り出し早矢峰さんにニッコリと微笑みながら渡した。


早矢峰さんは熊のぬいぐるみを受け取り、一生大事にするといって右代宮先生に正面から抱き着いた。身長が平均より低いのでお腹あたりに抱き着く形になったが。



あー、間違いない。



早矢峰さんのあの蕩けたような表情は間違いなく右代宮先生に対して恋愛感情を抱いていることを私はすぐに理解した。


元々、私に対してつっけんどんな態度で接してきて苦手なタイプであったことに拍車をかけ、今回の出来事である。


私の中で早矢峰さんの苦手ポイントがさらに上昇した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ