初級で怯える探索者が居るってマ?
「怖い怖い怖い!」
「はっはっは、だから怖がるなって。どうせ初級のモンスターなんだ、攻撃力なんてたかが知れてるぞー」
「……良かった、弓を選択しておいて」
「そこ突っ立ってると死ぬぞ」
「え?」
──ビシッ
「ひっ!?」
朝飯を食いダンジョンに来たのはいいが素人のせいか命のやり取りにビビりまくっている2人。ちなみにここは亜人ダンジョンと呼ばれているダンジョンで、ゴブリンやオーク、オーガにコボルトばかりと言った人型モンスターしか出てこない場所だ。一応まだ一層目なのだが不幸なことに小隊のゴブリン共に遭遇してしまい、戦闘中だ。
それで現状なんだが早紀がゴブリンに追いかけ回されて、流梨はその後ろから飛んでくるゴブリンたちの矢にビビっているという状況だ。
「早紀!目の前の光景から目を離すな!ちゃんと前を見据えろ、その装備なら生半可な攻撃は受け止めてくれる!多少のダメージは最初無視しろ!」
「そうは言っても怖いっす!!」
「慣れろ!それに流梨!攻撃にビビるな!お前は主に前線を援護することが仕事だぞ、そのままだと使い物にならん!」
「手が震えて矢が震えるわ、無理よ」
……あー、やっぱり一対一から始めた方が良かったかぁ。いきなり無茶をさせてしまったな。仕方がないから俺がやりますかね。
「早紀、こっちに走ってこい!俺がやる!」
その言葉を聞いた瞬間まっすぐこっちに走ってくる早紀。こいつ躊躇いもなく判断しやがった、そういう判断だけは思い切りがいいんだな。
俺の脇をすり抜け走り去る早紀を見て呆れながらこちらに向かってくるゴブリン共を見据える。そのまま突撃してくるので横薙ぎで先頭のゴブリンを切りながら退かす。
「ぜぁっ!」
久しぶりの近接戦闘だ、なまってるかと思ったらそんなことは無かったな。人外の体だからだろうか?かもしれないな。
振り切った槍を、石突の方を突き出して目の前にいるゴブリンの喉に突き刺し、持ち上げて他のゴブリンに叩きつけ、2体同時に先端で突き刺す。後ろで弓を構えている二匹の弓兵ゴブリン共には槍を投げつけ一匹仕留め、動揺している他のゴブリンに接近し首を折って終わり。さすがは初級だ、とてつもなく弱い。すぐに戦闘が終わってしまう。
さて、と後ろの2人に振り返るとすごく引き気味の顔をしていた。何故だ。
「何故そこまで引く」
「か、考えるっす……私達は元々一般人なのに、目の前でスプラッタが発生した気持ちを」
「あー」
確かにそうだな、慣れている探索者ならともかく成り立てならこういったグロいのは無理か。
「それに顔に血をつけたまま割と楽しそうな笑顔を見せられると怖いわよ」
顔に血?頬についてたか。腕で拭いながら苦笑する、笑顔に血が着いてるってサイコパスってことだなぁ……
「いやぁ、すまんすまん。慣れきってたからなぁ……」
「で、次はどうするのかしら」
「次は一対一でモンスターを殺すことに慣れてもらう」
「ほ、ほんとにやるんすか……?」
「強くなりたいと言ったのは早紀だけど、別に辞めたいならそれでもいいぞ?」
そういうと悩む素振りを見せる早紀と流梨。でもまぁ悩む時ってだいたい自分の中では答えが決まってるようなものだからなぁ。
「……やるっす、強くなって1人で暮らせるようになりたいっすから」
「それまで俺が負担する訳だけども」
「うっ……それは借金ってことでお願いするっす」
「いつ返せるようになるのかなぁ」
ふむ……後でステータス見せてもらいましょうかね。それでどれくらい鍛えるか決めますかね。
【亜人ダンジョン】
千代田区の一角にある初級探索者向けの洞窟型ダンジョン。なお初心者向けなのは最初の方だけ、奥に入れば入るほどやはりモンスターが強くなり、最終的には軍隊規模の亜人と戦闘しなければならず、オーガキングが率いる2つ名付きの軍隊〝鬼神の先鋭〟は凄まじい強さを誇る。ちなみにそこまでたどり着いたのは世界最強のパーティだけである。
【探索者のクラス】
初級──E・D
中級──B・C
上級──A・X
最上級──EX
となっている。ランクの上げ方は探索者互助組織に対する貢献度、依頼達成率。そして潜れるダンジョンの等級により決まる。
【ダンジョンの等級】
主に階層ごとに分けられている。亜人ダンジョンの場合
1~3──E
4~6──D
7~8──C
9──B
10~12──A
13──X
14~?──EX
となっている