探索者互助組織
「いらっしゃいませ、なにか御用でしょうか」
「探索者として登録したいんだけど、この子らも一緒にお願いするよ」
「身分を証明できるものはお持ちでしょうか?」
「マイナンバーカードでもいいですかねぇ?」
「はい、問題ありません。後ろの御二方もお持ちですか?」
探索者互助組織、それは世界中に根付いている国境を越えた組織。そのせいか警戒されまくっているのは当然の帰結だろう、国はあまり彼らを頼ることはまず無いらしい。そんなところにこれから所属しようとする俺たちは半分国という枠組みから外れることになる。そもそもそんなものに所属していない俺は関係ないけども。
おずおずと、なにかいけない事をしているような表情になりながらも偽造したマイナンバーカードを出す2人。ニヤニヤが止まらん、ここは割り切った方が楽なんだがねぇ。
「佐藤太郎様、佐藤早紀様、高澤流梨様。3名でよろしいですか?」
「はい」
「では次にこちらの用紙に各種情報を書き込んでください」
手渡された紙を見る。書き込む欄は名前に年齢、性別に住所、パーティ配置にこれまでの経歴。就職かな?と思ったがある意味探索者なんて命をかけた仕事か。それで、住所かぁ。ここで素直に月って書いたら頭いっちゃったパッパラパーだと思われるだろうな。まぁそこを疑われないために付近の一軒家をここに来る道中で購入したんだがな。
(え、どうして私の名字が佐藤なんすか?確か佐藤って太郎さんの名字だったすよね……?)
(バカ正直にそう書いてもいいけど探索者としてやるには、未成年は保護者同伴しないとダメなんだ。だから偽造する時に早紀の名字と戸籍を書き換えておいた。これで戸籍上はお前の両親とは関係なくなったぞ)
唖然とする顔に思わず笑ってしまう。はたから見たら多分悪い笑みなんだろう、どこか引くような視線を受けながらサラサラっと書いていく。
名前は佐藤太郎、年齢は35歳。性別はもちろん男、住所は東京都墨田区******っと。パーティ配置は|近中遠斥候何でもこなす《オールラウンダー》。経歴は適当に。
(早紀はどこの配置にした?)
(近距離っす、多分ゲームで言う避けタンクって部類っすね)
(流梨は?)
(私は遠距離ね、モンスターと接近して戦いたくないわ。それに和弓使えるし、丁度いいでしょ?)
和弓ってことは弓道かな?ちょっとそこら辺はよく分からんが使えるならなんでもいいや。次いでにこいつらを鍛える方針も決まったな。
……流れでこいつらを鍛えるって決めたけど……いや、うん。気にしないことにしよう。どうせ俺は不老で寿命なんてないようなもんだしな、この程度些細なことだろう。
「書き終えました」
「確認致します……はい、特に問題ありませんが太郎さん」
「なんです?」
「オールラウンダーで本当によろしいのでしょうか?」
懐疑的な視線を向けられるがどういうことだろうか。なにか悪かったのか?
「そうですが……?」
「……まぁよろしいでしょう。では最後に登録料である30万円を頂きます、この料金はダンジョンに潜って期間中に帰ってこなかった場合、あなたたちを探しに行く為の依頼料になります」
「保険ってことですよね」
「そうです、次いでにお金を持たない一般人に無茶をさせないための保険金となります」
「3人分を電子マネーで」
「……はい、完了です。これで登録は全て終了致しました。ようこそ探索者互助組織へ」
そういいニコリと笑う受付嬢に苦笑を返してしまう。さっきまで無表情だったのにいきなり笑うとむしろギャグだ。