懐かしき地球
「よぉ、ジェリー。来たぞー」
転移した先は太平洋のど真ん中に生成されたダンジョンだ。つまり水中にあるのだが、そもそも俺のダンジョンは宇宙にあるので酸素がない。そのため俺も酸素が必要のない身体なのだ。正直水中は動きずらいが。
「やっと来たか、例の品は?」
そう言って触手を伸ばしてきたのはこの太平洋ダンジョンのダンジョンマスターであるジェリーだ。こいつはクラゲの魔物で異世界生まれらしく、最初は未知の場所で戸惑っていたらしいのだが普通に適応した図太いやつだ。ちなみに個人としては水中を大暴れするクラーケンを簡単に潰せるくらいには強い。種族全体は弱いのにな。
「あいよ、これ何に使うんだ?」
今回の転移に関して協力を取り付ける代わりにとある物を用意して欲しかったらしいが、一体何に使うのか分からない。それでとある物ってのは宇宙船型モンスター共からランダムに手に入る赤い石だ。いまいち用途がわからんのよな。
「これか?これは俺らクラゲ一族が進化するために必要なものなんだよ」
どっから喋ってるのか謎だが触手がワキワキ動いているので喜んでいるのだろう、声も弾んでるし。
「へぇ……進化ねぇ。そんな情報ダンジョンになかったが」
「そりゃダンジョンにゃ関係ない話だからな。それで……一応人族も進化できるが……人外要素の混ざったお前じゃ真っ当な進化は出来んだろうなぁ」
異世界生まれだけあって異世界に関する知識が豊富だから、たまに交流をするだけでも情報が貰える。それにしても進化か、気になるが真っ当な進化が出来ないってどういうことだ。
「真っ当な進化が何か聞いてもいいか?」
「人族が進化すると大体が天人族になるな。あっちだと確か信仰の対象にもなってたはずだ」
「真っ当じゃないのは?」
「魔人族、ちなみにこの先もあるが天人族も魔人族もまだ進化したやつがいないから不明らしいぞ」
いい情報を聞いたが、これ多分俺魔人族になるんだよな……って話し込んじまったな。これは後々考える。データにして一応データベースに保存しとくか。
「そうなのか。いや、話してくれてありがたいがそろそろ行くわ。今度またなんか土産持ってくるから酒のつまみに教えてくれ」
「おういいぞー、魚介類の土産期待しとくわ」
「こっち宇宙にいるんだぞ……?」
「培養してんだろ?そっから持ってこいよ、美味いんだからさ」
いや確かに地球上の生き物のほとんどはもう生命の方舟に乗せて育てているが……まぁいっか。それで話してくれるならありがたい。
「じゃあな、言われた通りに魚介類持ってくるから」
「おういってらー」
このダンジョンは海中にあるので、アイテムインベントリから潜水艦を取り出して浮上する。SF系列だとこういった便利アイテムが多いからいいよ。
「ビバ!地上!」
日本に上陸した俺は両手を上げて全身で喜びを表現しているだろう。正直地面が懐かしい。砂浜に頬ずりしちゃう。うりうりうりうり……いや何してんだ俺。
「それよりここどこだァ?太平洋から来たんだが……」
マップによると青森らしい、北海道かと思ったら違った。今の目標は東京だから北海道より近いから良いけども。
「とりま車出して行きますか」
燃料な己の魔力の車で行きましょう。最大時速はスポーツカーより早い軽でな……!