地球が恋しいよ
2025年某月某日、唐突に世界は狂った。
それは言うなれば天変地異と言える現象だろう。
それは地球上に様々なものをもたらした。
魔法、未知の素材、新しい技術、新しい人種、ステータス。
そして──ダンジョン。
それは人類に敵対する生物が管理する地獄のテーマパーク。一歩入れば死と隣合わせの物語が始まるだろう。
だがそれだけではなく、様々な資源をもたらす天国とも言えた。今地球では様々な資源が足り無くなっており、それを補うのがダンジョンであり、手に入れるのが探索者と呼ばれる者たちだった。
ダンジョンのせいで資源が足りず、ダンジョンのおかげで資源が豊富になる。どちらもダンジョンを起因としているが不思議なものである。敵と手を取り合っているようなものだからだ。
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「……いや、それはダンジョンマスター側の話だからなぁ……地上のヤツらなんてそんなこと微塵も思ったことないだろ」
こんなものを書いた自分を馬鹿にし、データを保存して目の前の画面を見る。
「そもそもダンジョンに管理人がいることさえ知らないんだからな」
9画面存在するモニターのうちひとつを見てため息を吐く。そこにはダンジョンをどう扱うか、そういった話を繰り返す政治家たちが映し出されていた。
「なんでダンジョンが世界に現れてから10年以上経つのに完全に扱いきれてねぇんだ?確かに危険っちゃ危険だがそれをこいつらが完全に分かってんのかね?」
ていうかダンジョンはダンジョンマスターの物だ。こいつらにどうこう言われるのは本当は違うってんだ。どちらにせよ地上のダンジョンマスター共はそんなこと知らないだろうが……
「いやまぁ俺がイレギュラーなのは分かるよ?確かに月と衛星軌道を完全に俺の領地としたのが悪いけどさ」
俺のダンジョンは月そのものだからな。その中身はデス・スター顔負けの巨大な空間となっているが。せめてもの救いとして衛星を抑えなかっただけマシだと思って欲しい。俺のダンジョンの存在は知らないんだろうけど。
「……そろそろ暇だな」
ちょっとコーヒーブレイクを……っと思ったが、また奴らが来た。
「またか、ポイントが増えるから別にいいが良くも飽きずに攻めてくるな……」
先程とは別のモニターには宇宙が映し出されており、そこにはいわゆる宇宙船と言えるような奴らが来ていた。こいつらは言ってしまえば宇宙活動型の魔物、モンスターであり自意識の無いAI共だ。
「お前らのおかげでこのダンジョンは巨大化したので、お礼としてエネルギー砲の雨をくれてやる」
月の裏側の機能を始動させる。すると月の地表が割れ口を開けるように広がり、そこに誘導した宇宙船共を取り込んで……掃射。
「グッドラック、生き残れたらダンジョンの始まりだ」
今回も無理そうだがな。
俺こと、----は……おっと生前の名前は無いんだったな。忘れていた。適当にダンジョンマスターとでも呼んでくれ。
それで今の状況か……そうだな。最初から話そうか。
まずどうしてこうなったのか、だな。一言で言えるのであれば異世界が地球に侵食し始めたんだ。この事実は我々ダンジョンマスターしか知らない、体を構成する過半数が異世界側のものに変わっているからな。
それでなぜ異世界が地球を侵食したか、それは勇者と魔王の殺し合いの余波らしい。強者同士の争いは時に世界と世界の境を曖昧にさせるから今回の出来事が起こった。
そのせいで地球に住む人類は侵食された日に数百万人の犠牲を産んでしまった。ダンジョンに飲み込まれたものとか、ダンジョンから溢れた魔物によってな。まぁ別にそこは気にしない、俺やってないし。
お陰様で地球人類は大混乱、国が対処してもしきれない異世界ファンタジー、魔法が発見されてからは犯罪増加に民衆の暴走。オマケに未知の素材を巡った争いまでぼっ発。一年をすぎる頃には世界中で異世界産の物を扱う方法などの話し合いがされ落ち着いたが、次に出たのはダンジョンの問題と資源の問題。
特に深刻なのは資源だな。今まで輸送船などで輸送できていたことが海の魔物により簡単に出来なくなったり、鉄鉱があった鉱脈がダンジョン化したりして、世界全体的に資源不足に陥る。そこでダンジョンから産出される資源に世界は目をつけたのだが、これがまた簡単に行かない。
人の生き死にをかけた争いをダンジョン内のモンスターと繰り広げなければならないのだ。そりゃ一般人は行きたがらない、軍人でも普通に死ぬ場所だからな。そこで活躍するのが魔法の力それにプラスして発見されたステータス。まぁいわゆる超強い人物の登場だ、そいつらに目をつけた世界はそいつらを援助することを決めたのだ。
装備はもちろん食料や住処、金、などなどありとあらゆる方法で援助をしていたら誕生したのが探索者互助組織。こぞってお金が欲しい奴や英雄志願のアホどもが集まりダンジョン攻略が進んだのだが……
ここで登場するのが我々ダンジョンマスターだ。俺らダンジョンマスターは元々普通の人間だったんだが、不幸にも異世界と地球の世界間に呑まれた人間なんだ。その間で肉体が変化し人外のものへ、そしてダンジョンマスターを必要とするダンジョンが続々と適正のある世界間に呑まれた人間を召喚し、ダンジョンマスターとした。召喚時にある程度の知識が埋め込まれるのは知能の低いモンスターがダンジョンマスターになった場合のためらしいな。ちょっと話ズレたな。
要は俺らダンジョンマスターも死にたくないんだ。つまり抵抗する。その結果ダンジョンが攻略されない、そりゃひとつも攻略されない。そして躍起になった人類は続々と戦力を送るけど返り討ち、そして人間を倒したダンジョンマスターはポイントゲット、配下の魔物が他の魔物を倒してもポイントゲット。それにつれ強化されるダンジョン……
そんな状況が今の地球だ。
え?お前のダンジョンはどこにあるダンジョンなんだって?俺の所有するダンジョンは月だ。月そのものが俺のダンジョンなんだよね。それで別の目的がこのダンジョンにある、それが地球の守護……まぁそれは俺が勝手に決めただけでダンジョンそのものは無関心だが。ちなみにSFチックなダンジョンだ。
それでなんでこんな話をしたか、だが。
ぶっちゃけよう。10年以上人と話さなかったら俺は人が恋しいのだ。人肌が……足りぬ!つまりぼっちは嫌。だから俺は地球に一度帰る、帰るったら帰るんだ。
帰るための転移装置はある。ポイントが数億単位で必要だったけどな!転移する場所も決めてる、太平洋のど真ん中だだ。そこにあるダンジョンマスターの協力を得てそこから日本に帰る。
ということで実行。宇宙からくる侵略者共は自動防衛機構がになってくれるからね、心配無用だね。
レッツゴー