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誘蛾灯


 月夜野は黙ってテーブルにお茶を置く……そしてそのまま俺が座っていた対面に座った。


 ベットの脇で呆然としている俺を見る、そしてそのまま目線を外し自分の前、先ほど座っていたクッションを見る……目線で俺にとりあえず前に座れと言った。


 無言の圧力、何か言ってくれれば言い訳出来る可能性もあるのに……このままだと何も言い訳出来ない状況に追い込まれる……。

 しかし何も言わないわけには……どうしよう……このままじゃただの変態だ……いや、まあただの変態なんだけど……と、りあえず虫でもいた事にすれば……。

 俺の脳が高速で思考する……ゆっくりと立ち上がり月夜野の前までの数歩で会話シミュレーションをした……よし! 行ける!


 言い訳シミュレーションが終わり、俺が座ったと同時に月夜野が口を開いた。


「何してたの? まさか虫が出たとか言わないよね?」

 笑顔でそう言う月夜野……うわーーい、今のシミュレーションが一瞬で終わた……。

 ニッコリ微笑む月夜野……どうする、それでも押すか押し通すか……しかし俺は見逃さなかった……月夜野の目を……笑っていない……顔は笑っているけど……目は笑っていない……。

 月夜野の(さげず)んだ目、ゴミを見る様な目……ああ、懐かしい……そうだ去年まではこの目をしていた。そうだった……これが今まで俺を見ていた月夜野の目だ。

 あの目から月夜野は変わったんだ……俺を好きとまで言ってくれる様に……だったら言うしかない……正直に言うしか……俺は覚悟を決めた。


「……えっと……月夜野の……匂いが嗅ぎたくて……ごめん……」


「うーーわ……引く……」

 正直に言った……ここで誤魔化しても月夜野は見破るだろう……だったら月夜野を信じるしか……許してくれるだろうと信じるしかない。


「だ、だって……仕方ないだろ! お前が……お前がいい匂い過ぎるんだから、海の帰り……お前が俺に寄りかかって寝たんだ。可愛い寝顔でお前がもっと好きになった……そしてその時お前の髪の毛が俺の肩にかかったんだ、その時の月夜野の匂いが髪の毛の匂いが忘れられなかったんだ」


「つつつっ…………また……そ、そんな事言って……最低」


「……ごめん……で、でも仕方ない……本当の事なんだから……でも……本当にごめん……」

 恋心、出来心だとはいえ、月夜野の信頼を裏切ってしまった事には変わりない……俺は最低な男だ。

 下を向き反省する……そして俺は月夜野の判決を待った……最悪別れる事も……怖い……その死刑判決だけは……俺は下を向いたまま願っていた、月夜野を信じて待った。


「…………そんなに……いい匂いだった?」


「え? あ、うん……」

 目を開けて月夜野を見る……月夜野は真剣な表情で俺を見ていた……ああ、何か決めた顔だ……終わった……瞬殺だった……。


「そ……」

 そう言うと月夜野が立ち上がる……立って判決文を読むのか……確か死刑判決は主文後回しだったよな……。

 俺は再び目をつむり月夜野の判決を待った……しかし月夜野何も言わない……焦らさないでくれ……俺は覚悟を決めた……何を言われても月夜野に従おうと……。


 そしてゆっくりと月夜野の気配が動く……歩く気配……え? 俺は目を開けて月夜野の位置を確認する。までもなく思った通り俺の隣に座っていた。


「……いいよ」


「…………え?」


「……匂い」


「……は?」


「…………だから…………嗅いでいいよ……直接」


「…………ええええええええ!」


「い、嫌なら別に」


「い、嫌じゃない!!」


「じゃ、じゃあ……」

 月夜野は俺の隣に正座して目をギュッと閉じている……手は握りこぶしを作って膝の上に置いている……身体は小刻みに震えていて……物凄い緊張が伝わって来る。

 断るか……いや……ここで断るのは悪手だ……断ったら逆に怒るだろう……月夜野はそういう奴だ。

 彼女の勇気に応えなければ……俺は勇気を出して月夜野の髪に手を伸ばした。


「……ふぇ……」

 髪を触ると一瞬月夜野の声が漏れた……俺はその声で髪の毛から手を離してしまう……駄目だ触っちゃ駄目だ……。

 もうこれは、直接行くしか無い! 俺は顔を月夜野の頭に顔を近付け髪の匂いを嗅いだ。


 …………あああああああああ……俺の脳から麻薬の様な物が溢れ出す。この間よりも強烈な匂いが、シャンプーとリンスと月夜野の匂いがする……甘い……とてつもななく甘い匂いが、香りが、俺の脳を刺激する……ヤバイよヤバい……これはヤバすぎる……。


「えっと……その……髪……持ち上げて貰っても……」


「……い、いいけど……」

 そう言うと月夜野は髪を両手でかき上げる……海で見たうなじが俺の前に現れる……その綺麗な首筋とうなじに俺は再度顔を近付けた。


「ふお……」


「ひ!」

 その強烈な香りに俺はつい声を上げてしまう……シャンプーの香り、リンスの香り、ボディーソープの香り、月夜野の汗の香り、ああ、こんな香水があったら絶対買う……いくらでも出す……そう思わされた。

 

 そのまま数分、触らずに俺はじっくり匂いを嗅いだ……堪能した。


 十分満足した俺は月夜野から少し身体を離す……月夜野は髪を上げたまま動かない……小刻みに震えつつ俺にされるがままだ……ああ、可愛い……小動物の様な可愛さ…………。


「あ!」


「へ!?」

 俺はまた声を出してしまった……だって……言ったよね……月夜野格好……着ている物、近付き過ぎて気が付かなかった……月夜野は今、ノースリーブで髪を持ち上げている……そう……今、月夜野の脇が、白い脇が俺の目の前に……。


「あ、あのさ……わ、脇……も……いい?」


「……えええええ!」


 俺は月夜野の返事を待たずに、その綺麗な脇に顔を近付ける……誘蛾灯に近付く虫の様に、いざわなわれるかの様に月夜野の白く美しい脇の下に近付く……。


「……だ、だ、駄目えええええええ」


「ぐええええええ!」


 月夜野は俺の頬を思い切り叩いた……変な態勢だった俺はそのまま床に倒れ込む……い、痛いいいい……。

 

 俺は文字通り誘蛾灯に誘われた虫だった……さっき虫を言い分けにしようとした罰か……。


 でも……いつか作ろう……月夜野の香りという名の香水を……俺はそう心に決めながら床ペロした。




剥がれなかったので調子に乗りましたm(_ _)m


評価、ブクマ、感想等を是非ともよろしくお願い致します。(笑)


特に評価が、まだな方是非とも評価を宜しくお願い致しますm(_ _)m


ブクマもあわせて宜しくお願いします。


評価は最終話の下から入れられます↓文章評価と物語評価のポイントをクリックして評価するを押してください。


後で変更もできます。


是非ともよろしくお願い致します。m(_ _)m


いつか月夜野の香りという香水が販売される! と良いなあ(笑)

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     新作!         
  同情と恋の違い 元アイドルの美少女が責任を取りたいと僕の前に現れた。          
  宜しくお願いします。(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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