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87.中央広場の決戦3

「……」


 ……デウスト……


 そう言えば、こいつのお陰で大変な目に合った……

 ピアに迫られるわ、セラーラとピアの戦闘に巻き込まれるわ、砂漠に放りだされるわで散々だった……


「……トモカズ……どうやって地獄から出てきたか分からないが、次は確実に始末してやる……」


 殺意の籠ったデウストの視線が俺に突き刺さる。


「それはこっちのセリフだ。今度はお前を地獄に送ってやる」


 俺も負けじとデウストを睨みつけた。


「私を地獄に? 面白い冗談だ。前回、私に手も足も出なかった分際で何をほざく。身の程を弁えろ」


 ……偉そうにしやがって……


「デウスト様。あなた様が手を下す必要はありません。私にやらせてください」


 黒い鎧を纏った騎士が前に出てくる。


「……いいだろう、レーヴェ。トモカズを始末してこい」

「感謝いたします、デウスト様」

 

 レーヴェは意気揚々と処刑台から飛び降りて俺に近づいてきた。


「トモカズ。貴様と私が対峙するのはこれで三度目だな」

 

 ちっ、またこいつかよ。


「お前を相手にする暇なんてないんだけどな……」

「固い事を言うな。今度こそ決着を付けようではないか」


 レーヴェの全身から黒い生命気(オーラ)が立ち昇り始めた。


「……」


 あれってダーク何とかって言う生命気(オーラ)だったよね……


 少しでも触れると体力やらエネルギーやらが吸い取られるんだっけか。

 厄介なことだけは覚えているぞ。


「出し惜しみはしない。最初から全力で行かせてもらう」


 これはまずいな。


「アプリコット、少し離れていろ」


 俺は抱きかかえているアプリコットをゆっくりと地面に降ろした。


「ご主人様……」


 彼女は名残惜しそうに俺を見詰める。


「……」


 ……アプリコット……今は我慢してくれ……

 俺だって今のお前を一人にさせておくのは凄く心配なんだよ……

 

 そう不安を感じていると、彼女の足元に五体の人形が集まって来た。


「ん? スクウェイアの人形か?」


 人形たちはアプリコットの足を押して、どこかへ誘導しようとしている。


「アプリコットを安全な場所まで連れて行ってくれるのか?」


 俺の言葉に人形たちは揃って首肯した。


「そうか、それは有り難い。アプリコット。直ぐに終わらせるから、こいつらと一緒に避難していろ」

「……」


 彼女は少しばかり逡巡すると、素直に受け入れてくれた。


「……ご主人様……分かりました……」


 俺と一緒にいたいんだろうな。

 でも足手まといになるのが分かっているから、わがままを言わない。


 ……なんて健気なやつなんだ……可愛すぎるぞ。


「人形たち、アプリコットを頼んだぞ」


 五体の人形はアプリコットのふくらはぎを押してこの場から移動を始める。


「トモカズ。準備は出来たか」


 レーヴェの奴、ご丁寧に待っててくれたよ。

 こいつも根っからの悪党じゃないみたいだし、ここは穏便に済ませてくれないかな……


「行くぞ!!!」


 黒い生命気(オーラ)を纏う黒騎士が、俺との距離を一気に詰めてきた。

 心なしか、奴は高揚しているようだ。


「……」


 だよな。お前は俺と戦うのが好きみたいだしな……

 ホント、迷惑な奴だよ!!!

 

「〈クリンオーネ〉!」


 俺はクリオネに似た複数のモブ精霊を召喚してレーヴェの突撃に備えた。


「それで私の漆黒超闘気ダークネス・リィンフォース・オーラに耐えられると思っているのか!」


 接敵したレーヴェが長剣を抜き放つと同時に俺の首を撥ねようとする。


「ちぃっ!」


 〈クリンオーネ〉が剣の軌道を逸らそうと奴に殺到した。

 しかしモブ精霊たちはあっけなく黒いオーラに飲まれていく。


「その生命気(オーラ)! 本当に面倒だな!」


 俺は体を仰け反りレーヴェの斬撃を躱した。

 ところが剣にまとわりついていた生命気(オーラ)が俺の胸辺りを撫でていく。


「くっ!」


 体から力が抜けていくのを感じ、少し動きが鈍くなった。

 それをレーヴェが見逃すはずもなく、これ幸いとばかりに怒涛の攻めを開始する。


「どうしたトモカズ! 貴様の実力はこんなものではないはずだ!!!」


 レーヴェの斬撃が縦横無尽に俺を襲った。


「うおっ!」


 相変わらず強い!

 避けるのが精いっぱいだ!


「〈ライトニング・フライジャル〉!」


 俺は何とかレーヴェの攻撃を躱しつつも、次のモブ精霊を召喚する。


「食らえ!」


 無理な態勢から放たれた金色のイガグリが、不規則な動きを見せながらレーヴェにぶち当たった。

 しかし案の定と言うべきか、無情にも〈ライトニング・フライジャル〉は黒い生命気(オーラ)に飲まれていく。


 ですよねー。

 この前も無効化されたし……


「……」


 こうなったら物理で殴りつけるしかなさそうだな。

 多少のエネルギーは吸い取られるが、俺の体力は莫大だ。

 そうそう尽きる事はない。


 方針を決めた俺は、奴の隙を窺う。


「ここだ!」


 レーヴェが繰り出した突きを半身で躱し、無防備になった胴に思いっきり拳を叩きつけた。


――ガガガガアアアアァンンンン――


 鈍い音が響き渡り、漆黒の鎧、その腹部が酷く凹む。


「ぐぅっ!!?」


 レーヴェの身体が少しだけ宙に浮き、後ろに吹っ飛んだ。

 しかし奴は、透かさず地面に両足を付けると思いっきり力を込めて踏みとどまる。


「……流石はトモカズ……今のは効いたぞ……」


 ……何だよこいつ……すげえタフだ……あれを食らって倒れないのかよ……


「……」


 ……ていうか、倦怠感が半端ない。

 直接レーヴェに触れたから、膨大な体力を持ってかれちまったぞ。


「……トモカズ……貴様の生命力は大したものだ……普通の者ならあれで昏倒するというのに……だが、それでこそ私の好敵手(ライバル)に相応しい」


 いつから俺はお前の好敵手(ライバル)になったんだよ。


「さあ、続きをしようか!!!」


 レーヴェが嬉々として踊り掛かって来た。


「……」


 物理が有効なのはわかった。

 だが、殴りつけるとなると直に触れないといけない。


「……」


 嫌だなあ……殴ると尋常でないほどの体力を奪われちまうからなあ…… 

 もうこいつには触りたくねえよ……


「……」


 ……となると、何らかの鈍器で殴り倒すか。


 俺は自分の内にある在庫目録(インベントリ)に意識を向け、手ごろな武器を探し始めた。


「ん!!?」


 そこで嫌な気配を感じとる。


 咄嗟に下を見てみれば、足場から不可解な文字が浮き出ていた。


地獄の扉(ダルヴァザ)か!!!」


 慌てた俺は、透かさず飛び退いてその場から離脱する。


「さすがに二番煎じは通じないか」


 デウストの野郎……機会を窺ってやがったな……


 だがボンゴ村の時と同じ方法だ。

 もうお前の地獄の扉(ダルヴァザ)には飲まれないぞ。


「デウスト様! 手出しは無用です!」

「レーヴェ、私は早期決着を望んでいる。このままでは時間が掛かりそうだから、手を出したのだ」

「ですがデウスト様……」

「諄いぞレーヴェ」

「……」


 強く言われたレーヴェは黙り込んでしまう。


「トモカズ、お前と遊ぶのは飽きた。ここら辺で終いにする」


 相変わらずの上から目線だな。


「だが、地獄の扉(ダルヴァザ)でお前を倒せるとは思っていない。どうやら地獄から戻って来れるみたいだからな」


 分かっているじゃないか。


「地獄に落ちた先にはバティスモレという君主(ロード)級の悪魔がいる。お前はそいつからも逃げ出す術を持っているようだ」


 バティスモレ……あの三つ首の化け物か。

 そういや、あいつとデウストは契約を交わしてたんだっけか。


「だから今回はこうする」


 デウストは両手を上に掲げて魔力を放出させた。

 すると奴の頭上に不可解な文字が出現し、幾何学模様を形成していく。


「クックックッ、お前たちはもう全滅したも同然」


 何をする気だ……?

 邪魔しようにも、レーヴェが牽制しているから迂闊には動けないぞ。


 俺が蹈鞴を踏んでいると、デウストの声が高らかと発せられた。


「私の名はデウスト・ラ・ヴァンヘイム! エベネーベを支配する君主(ロード)、大悪魔バティスモレよ! 契約に従い私の呼びかけに応じよ!」


 そう言う事か!

 バティスモレを呼び出して俺を始末する気だな!


「さあバティスモレよ! 私の前に姿を現すのだ!!!」


 しかしながら、デウストの頭上の魔方陣は何の反応も見せず、ただただ赤黒く明滅しているだけであった。


「何をしているバティスモレ! 早く来い!!!」


 馬鹿だなあ、来る訳ねえよ。

 だってあいつはピアに瞬殺されたんだから。


「どうしたデウスト。早くそのバティスモレとかいう大悪魔を見せてくれよ」

「くっ!」

 

 俺は薄ら笑いを浮かべ、さらにデウストを煽る。


「おいおい何だよ、君主ロード級の悪魔だって? 実は嘘なんじゃないの? その魔方陣もただのハッタリなんだろ。あれだけ威張り散らしておいて、パフォーマンスだけは一流だな。無能なボンボンさんよ」

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!!!」


 奴は血の涙を流す勢いで歯を食いしばった。


「おのれえ……こうなったら、一段劣るが別の悪魔を召喚する!!!」


 そう言うと、デウストは再び叫ぶ。


「私の名はデウスト・ラ・ヴァンヘイム!!! エベネーベの悪魔を統率する地獄の大元帥ロメアよ!!! 契約に従い私の呼びかけに応じよ!!!」


 え。


 ……デウストの奴……今なんつった……?

 

「さあ、我が召喚に応じるのだ!!!」


 不可解な文字で出来た魔方陣から、一人の人物が姿を現した。


「来たか!!!」


 その者は、男性用の貴族服に身を包み、金色の長い髪に切れ長の目が特徴的なたいそう麗しい美女だった。

 

 しかしながら、一番に目を引くのは頭から生えている二対の凛々しい黄金色の角と、腰裏に付いた黒く美しい尾である。


「デウスト。私を呼び出すとは如何様な用件か。つまらんことならただではおかぬぞ」






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