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115.ポンコツ精霊の真価

 俺たちは、歪曲門(ワープ・ゲート)を通ってぺリア・ロ・サイモンへとやって来た。


「お待ちしておりました、トモカズ様」


 イザイラが慇懃に出迎えてくれる。


「領城の周辺はどんな様子だ?」

「以前と変わらず衛兵が巡回しております。そこまで数が多いいという訳ではないのですが、手薄でもありません」


 ……警備は強化していないな……

 ……シルベスターの魔力場があるからか……?


 そうこう考えていると、歪曲門(ワープ・ゲート)からパーシヴァリーが出てきた。

 次いでピア、エルテ、クラリーサ、ゼクトと続き、最後にキャロラインが登場する。


「皆様方、ようこそいらっしゃいました」


 イザイラは俺の時と同じ様に、腰を折って丁寧な挨拶をした。


「よし、全員そろったな」


 俺の言葉に七人は頷く。


「キャロライン、分かっているな」

「……う、うん、大丈夫……主君さま……」

「……」


 こいつは俺の事をいつの間にか主君さまと呼ぶようになっていた。

 ……セラーラたちに強要されたんだろうね…… 


「いいかキャロライン。領城の周りをそれとなくうろつくんだ。そしてわざと掴まって中に入れ。打ち合わせ通りにやれば、そんなに難しい事じゃない」

「……がんばる……」


 キャロラインは表情を引き締めた。


 良い面構えだね。


「パーシヴァリー、始めてくれ」

「了解だ、マスター」


 パーシヴァリーは意識を集中させて、キャロラインの肩に手を置いた。


「聖騎士スキル、〈献身代(エミネムド・スタン)〉」


 言葉と共に、パーシヴァリーの身体から白い靄のようなものが発生する。

 そしてそれはキャロラインへと移って行き、彼女に溶け込んでいった。


「これでキャロラインに危害が加われば、私のスキルが自動的に発動する」


 よし、準備は整った。


「イザイラ。キャロラインを人目に付かぬよう、表通りまで送ってやれ」


ぺリア・ロ・サイモンから出たところを騎士や衛兵なんかに見られたら、作戦実行前に俺との繋がりがバレちゃうからね。


「承知いたしました、トモカズ様」


 首肯したイザイラは、キャロラインを連れて直ぐに部屋から退出する。


 二人がいなくなった後、俺はパーシヴァリーに念押しした。


「事前に言ってあるが、お前がキャロラインに乗り移ったら、俺たちは急いで領城に向かう」

「打ち合わせ通りだな、マスター」


 パーシヴァリーは不敵に笑う。


「……」


 ……こいつ、楽しんでないか……?


「……いいかパーシヴァリー。狙いはシルベスターただ一人。他の奴らには構うな」

「分かっているのだ。確実に標的の首級を上げて見せるのだ」


 パーシヴァリーの瞳が爛々と輝く。


「可能ならその場で倒せ。もし梃子摺るようなら、奴を領城の外に引っ張り出すんだ」

「任せるのだ、マスター」

「……」


 ……まあ、大丈夫か……それを実行できる実力もあるし、そこまで心配する必要もないか。


「よし、俺たちはここで待機だ」


 そこでピアが麗しい口を開いた。


「旦那様」

「どうしたピア」

「キャロラインさんを監視してもよろしいでしょうか? 無事に領城へ入ったかどうか、見届けさせてくださいませ」


 ピアの奴、キャロラインに不安を感じているのか?

 俺は大丈夫だと思うんだが……


「キャロラインが領城に入るまでは無用な行動は控えろ。万が一にも俺たちの存在が悟られてしまえば、計画が全て破綻する。ここは細心の注意を払い、全員が待ちに徹するんだ」

「畏まりました」


 俺たちの影を見せなければ、奴らはキャロラインがこちらと繋がっているとは思わないだろう。


 さらには念を入れてイザイラにも指示してある。

 諜報役を領城から離れさせろってな。


「よしキャロライン、あとは任せた」

「……うん、頑張る……」


 キャロラインはイザイラと共に部屋から退出していった。


 さあてと、後はパーシヴァリーのスキルが発動するのを待つだけだ。






 それから二時間が経過した。

 

「……遅い……遅すぎる……」


 パーシヴァリーのスキルが発動する気配は一向に見えず、俺は焦り始めていた。


「……パーシヴァリー……何か異変を感じたか?」

「今のところ、キャロラインに危害が加わった様子はないのだ」

「……」


 ぺリア・ロ・サイモンから領城までは、歩いても一時間は掛からねえ……

 ……これだけ時間が経てば、何らかのアクションが起きるはず……


「……」


 ……これは失敗したかもしれん……

 ……ピアの言う通り、領城に入るまでは監視を付けるべきだったか……?


「トモカズ、これは不測の事態が起こったと考えるべきだ」


 ……やっぱりクラリーサもそう思うよね……


「今からでも遅くはない。誰かに様子を見に行かせた方がいいんじゃないのか?」


 ……そうだなゼクト……


「……分かった……」


 俺はピアに命令を出そうとした。


 とそこで、扉がゆっくりと開かれる。


「え?」


 俺は間抜け面を浮かべあんぐりと口を開いた。

 なぜなら姿を現したのは、キャロラインであったからだ。


「どうしたのキャロちゃん!? 何かあったの!?」

「……」


 エルテが逸早く事情を尋ねるが、キャロラインは黙ったまま俯いている。


 そんな彼女にエルテは再び問いかけた。


「パーシーちゃんのスキルが発動しないから、みんながキャロちゃんのことを心配してたんだよ。何があったか話してごらん」


 優しいその言葉に絆されたキャロラインは、ゆっくりと顔を上げるとおもむろに口を開いた。


「……領城の近くまで行ったところで、兵士に捕まった……それで城門のところまで連れて行かれた……そしたら門の向こう側にぺリアムドが居たの……」

「なにぃ!?」


 なんでぺリアムドがそこにいる!?


「……」


 ……そうか……キャロラインが捕まった際、兵士は複数人だったんだ……

 それでその内の一人が一足先に領城へと戻り、ぺリアムドに報せたんだ……


 その報告を聞いたぺリアムドは、精霊選戦を離脱したキャロラインが未だ精霊界へ送還されていない事に疑問を抱き、門のところで待っていた……


「……ぺリアムドは私を見て驚いた……でも、直ぐに私をじっくりと見て、何故か納得していた……」


 ……何だよおい……嫌な予感しかしないんですけど……


「……キャロラインよ……ぺリアムドは、その納得した理由を言ったのか……?」

「……たぶん……」

 

 ……たぶんって何だよ、たぶんって……


「思い当たるなら言ってくれ」


 キャロラインは勿体つけるように言葉を紡ぐ。


「……彼女はこう言った……トモカズと手を組んだのね、て……」


 えっ!!?


 なんで俺とキャロラインが繋がってるって分かったんだ!!?

 こちら側に内通者でも居るのか!!?


「……」


 ……待て俺よ……結論を急ぐな……

 ……冷静に考えれば分かるはずだ……


「……」


 ……そうだ……キャロラインの話では、ぺリアムドはあいつを見たとき驚いていたと言っていた。

 ……という事は……それまではキャロラインが精霊界に送還されたと思っていたはずだ。


「……」


 そしてそのあとぺリアムドは、キャロラインをじっくり見たと言った。


「……」


 ……おいおいおい……それだけで看破したの?


「……」


 そういや精霊界に行ったとき、神官長のジャスティリオスが、キャロラインを見ただけで誓約が出来たことを見抜いていたな……

 他にもジャスティリオスの奴、ぺリアムドはフェレーアンの庭始まって以来の天才児だとぬかしてた……


「……」


 ……もしかしてぺリアムドは、ジャスティリオスのように見ただけで誓約したかどうか分かるのか……?


「……」


 他にも色んな情報とかを組み合わせて、キャロラインが俺の誓約者だと結論付けた可能性もあるぞ……


「……」


 ……これはまずい……(すこぶ)るまずい……


 俺とキャロラインの関係が見破られた今、作戦は完全に失敗だ。

 こうなってしまっては、あいつを領城には入れてくれない。


 俺が悩んでいると、再びキャロラインが言葉を加えた。


「……ぺリアムドはこうも言った……ドミナンテが主君さまと話がしたいから、連れて来いって……」

「なんだと!?」


 俺と話がしたいって!?

 今になって何の話なんだよ!


 俺は混乱状態となる。


 とそこで、店の女中がものすごい勢いで部屋に飛び込んできた。


「イザイラ様! 大変です!!!」

「何ごと? そんなに血相を変えて」


 その言葉通り、彼女の顔は真っ青であった。


「店が!!! ぺリア・ロ・サイモンが衛兵たちに囲まれております!!!」

「何ですってっ!!?」


 イザイラを筆頭に、俺、ゼクト、クラリーサが動揺を見せる。


「ピア!」

「畏まりました、旦那様」

 

 俺の意図を汲んだピアが、霞むようにすぅっと消えていった。


 そして一分もしないうちに戻って来る。


「どうだった!?」

「ネズミ一匹通れないほど完全に包囲されております。構成は、数名の漆黒騎士と、多数の騎士、そして数えきれないほどの兵士です」

「……」

 

 ……マジかよ……なんで今さら俺たちのアジトが分かったんだよ……


「……」


 俺は咄嗟にキャロラインを見た。


 ……間違いなく原因はこいつだろうな……


「……お前、付けられたな……」


 彼女は怖じ怖じと答える。


「……主君さまを丁重に出迎えたいから、居場所を案内しろって……だから連れてきたの……」


 え。


「……キャ、キャロライン。ちょっと理解できなかった……済まないが、もう一度言ってくれないか……」


 キャロラインは上目遣いで俺を見ながら口を開いた。


「……ぺリアムドは主君さまを持て成したいって言ってた……賓客だから、大勢で迎えに行かなきゃならないって……私もそうだと思った………」

「……」


 はい?


「……」


 そんな理由で敵を連れて戻って来る奴があるかぁああああああああああああああああああああああ!!!


 俺が心の中で叫んでいると、再びキャロラインが血圧上昇の燃料を投下してきた。


「……あのぺリアムドが私に頭を下げたの……それで、今までの行為を謝ってくれて、私を見直したって……だからつい……」

「……」


 ん?


「……」


 ……いかん……俺とした事が、一瞬どこかにトリップしたよ……


「……」


 ……ふぅー……


「……」


 こいつは馬鹿かぁああァアアああアあァアア゛ああ嗚呼あああああァあア゛あ嗚呼アあア゛あ゛!!!


 簡単に絆されてんじゃねえっ!!!


「……」


 そこで俺は、ふとある事を思い出した。


「……」


 そういやこいつ、精霊界ではポンコツ精霊って呼ばれてたっけ……






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