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113.有意義な情報

 グラハムは深々とソファーに座り、茶を啜りながら寛いでいた。


「……」


 まるで一仕事終えたみたいにリラックスしてるよ。

 きっと俺の傘下に入って安心したんだろうな。

 何かがあれば、助けてもらえると思ってるんだろう。


「……」


 まあ、助けるけどね。

 その代わり情報と金は頼んだぞ。


「さあてと、早速なんだが教えてくれ」

「何が知りたい?」


 グラハムの口元が吊り上がる。


「以前、ギルド委員会議であんたは言ってたよな。ドミナンテが持つ固有(ユニーク)魔力が相当強力だとか何とか」


 顎に手を当てたグラハムは、当時を思い返した。


「……ああ、あの事か……覚えておるぞ」

「だったら話が早い。俺は奴の固有(ユニーク)魔力がどんな物か知りたいんだ」

「儂の知り得る限りであれば話してやる」


 そう言ったグラハムは、茶を一口だけ飲んで揚々と口を開いた。

 

「一昔前、当時のドミナンテは頻繁に戦場へ出ておった。そのうちの幾つかの戦の中で、たった一言だけで軍を屈服させたことが何度かある。そこから付いた渾名が【絶対領主】。その名はゼルディオン帝国を含めた他国でも知られておる」


 ……ドミナンテの奴、そんなに有名人だったのかよ……

 

「……」


 にしても、服従ってなんだ?


「誰も歯向かえないのか?」

「やつの能力を受けた者の話では、どうしてもその言葉に抗えなかったそうだ」


 ……なるほど……


「無条件で屈服させることが奴の固有(ユニーク)魔力の正体なのか……」

「実を言うと、その力が固有(ユニーク)魔力かどうかすらも分かってはおらんのだ」

「どういう事だ?」

「ドミナンテと戦った者が勝手に推測して固有(ユニーク)魔力だと位置づけしただけだ」

「……」

「それに服従と言っても、その力を使うには条件があるらしい。全ての戦場において使っていた訳ではないようだからな」

「……」


 ……条件が整わなければ発動できない、か……


「……」


 ……それでも厄介なのは確かだ……


「儂が知り得るドミナンテの固有ユニーク魔力に関しての情報はここまでだ」


 ……グラハムですらも能力の全貌は知らないのか……


「……」


 だが、中々にして良い情報だった。

 

「ところで小僧はどうしてそんな事を訪ねる? 貴様の方がよく知っているのではないのか?」

「なんで?」

「イスタルカの奴がドミナンテの能力を知っているとほざいておったではないか。当然吐かせたのだろう?」

「……」


 ……イスタルカ……


 誰だっけ?


「……」


 ああ、思い出した。


 俺の大事な配下のユージスを陥れた男だった。


「爺さん、あいつはダメだ。口から出まかせの男だと俺の娘たちが言っていた」


 セラーラたちが口を割らせたところ、ドミナンテの秘密は何一つ知らなかったんだよな。


「アーハッハッ! それは面白い! やはり小物であったか!」

「とんでもない詐欺師だよ! あれには俺も参ったね!」


 俺たちは互いにイスタルカを思い出しながら笑い合った。


「そうそう爺さん。まだ聞きたい事があるんだよ」

「なんだ? 何でも答えてやるぞ」

「ヘルムーツェン、こいつはどんな男だ?」


 奴はドミナンテの腹心で右腕だ。

 しかも漆黒騎士団の団長でもあり、レーヴェを鍛えた男。

 超要注意人物だ。


「……あの男か……あ奴は二十年位前にドミナンテが迎え入れた男だ。そこで奴は漆黒騎士団を設立し、並み居る王国の有名騎士団と肩を並べるまでに漆黒騎士団を強くした。今ではブリエンセニア五大騎士団と呼ばれるまでにな……」

「……」


 ……マジで……?


「それくらいの事しかあ奴については知らんのだ……だが、これだけは言える。ヘルムーツェンは強い」


 グラハムはサナレに目を向けて彼女の意見を仰いだ。


「私も数えるくらいしか会ったこと無いけど、彼からは得体の知れない何かを感じたよ……あれは人の強さを超えてるかも……」

「……」


 ……そういやあいつと初めて会ったとき、チェームの〈遭遇希薄エンカウント・ディリュート〉を見破ったっけ……


「ヘルムーツェンには注意しろ。奴はドミナンテ以上に危険かもしれん」

「……ああ……肝に銘じておくよ……」


 ……なんだよおい……まさかあいつが裏ボスとかっていう落ちじゃねえだろうな……

 

「……」


 まあいい。

 どちらにしろ、倒さなければならない相手だ。

 嫌だけど、やるしかねえ。


「小僧、他に知りたい事は無いか?」

「……」


 ……そうだな……


「……確かシルベスターだっけか? 領城の魔力場をいじったのは……こいつの事を教えてくれ」


 グラハムは淀むことなく口を開いた。


「先ほども言ったが、シルベスターは魔力場操作マギカ・マニピュレーターの使い手だ。しかしそれだけではない。奴は凄腕の暗殺者(アサッシン)で変装の達人でもある。その技術を生かしてデウストと【蝋燭会】の繋ぎ役をしておった」

「なんだと?」

「デウストは貴様が倒したから、今の【蝋燭会】の首領はドミナンテになっておる。だが繋ぎ役は未だにシルベスターだ」

「……」


 ……となると、もしかして……?


「爺さん。シルベスターさえ倒してしまえば、領城の魔力場は元に戻るんだよな?」

「そうだ。奴は自分の魔力を定期的に城の魔力場に注入しておる。それが切れれば魔力場は元通りだ」


 よし、突破口が見えてきた。


「だとしたら、奴と三幹部が接触する時を狙えばいいんじゃないのか? その時ばかりは流石にシルベスターも領城から出るはずだろう」

「それは難しいな」

「なんで?」

「もう一度言おう、奴は変装の名人で手練れの暗殺者(アサッシン)。だから後を付けること事体が難しい」

「……」


 ……やっぱそう簡単にはいかないか……


「……」


 ……ピアなら何とかできるか……?

 あいつのメイン職業(クラス)は奴と同じ暗殺者(アサッシン)……

 もしかしたら、シルベスターの変装を見破るかもしれない。


「だが問題はそこではない」

「他にも何かあるのか?」

「最近の奴は、領城の外には出ておらんのだ」

「……」


 そういやイザイラが言っていたな。

 ここ二週間ばかり、首領との繋ぎ役が接触してこないって……


「ドミナンテは防備を固めておる……恐らくシルベスターは、小僧を始末するまで領城の外には出てこないだろう」

「……」


 ……おいおいおい、勘弁してくれよ……

 これじゃあ完全に手詰まりじゃねえかよ……


「もう聞きたい事は無いか?」

「……そうだな、今のところ、それくらいか……」


 しかし爺さん、やたら情報を持っていたな。


「なんでそんなに詳しいんだ?」

「儂は半世紀以上もこのオルステンに住んでおる。大体はお見通しだ。それに、【泥狩り】の中で諜報に長けた者がおる。そ奴に儂の伝手を利用させ、いざというときのために情報を集めさせていた」


 そう言う事か。

 爺さんは商人ギルドでも古株の委員だったからな。


「……」


 ……にしても、弱った……

 ……先ずはシルベスター、こいつを何とかしないと攻めるに攻められねえ……


「小僧、ここからが正念場だ。貴様がやられてしまえば次は儂だ。何としてでもドミナンテを倒してくれ」

「……分かってるよ……俺たちは一蓮托生だからな……」


 その言葉にグラハムは頷いて、ゆっくりと立ち上がった。


「では、儂らはここでお暇する」

「もう帰るのか? 折角来たんだ、もう少しゆっくりしてもいいんだぞ」

「そうはいかん。あまり長居をしてドミナンテに悟られでもしたら厄介だからな」

「それもそうか」

「小僧。何かしらの情報が入ったら早急に報せる。貴様の方も資金に困ったら使いを寄越してくれ。直ぐに用意してやろう」

「ああ、了解だ。アプリコット、二人を目立たないよう城塞の外まで送ってやってくれ」

「はい! ご主人様!」


 アプリコットは部屋の出口まで駆け寄ると、二人のために扉を開けた。


「小僧、後は頼んだぞ」

「トモカズさん、気を付けてね」

「ああ、爺さんたちも注意を怠るなよ」


 こうしてグラハムとサナレは俺との同盟を取り付けると、足取り軽く部屋から退出していった。






 二人が帰った後、俺は賓客室で一人考えに耽っていた。


「……」


 グラハムが仲間になった。

 これはとんだ儲けものだ。


 しかし爺さんも相当に危機感を感じてるな。

 何せ仲間に入れてくれなんて言ってくるほどだから。


「……」


 外堀は確実に埋まっている……


 よし、この勢いでドミナンテを倒してやる。


「……」


 ……問題はシルベスターだ……


 ……そいつさえ何とかすれば、領城に攻め込む事が出来る……

 ……だがその肝心のシルベスターは領城の中……


 ……さあどうする……?


 しばしの間、俺は考え込んだ。






「……」


 ……そう簡単に妙案が浮かぶわけねえよ……

 ……何せ俺はただのリーマンだ……

 ……天才軍師でも優秀な将軍でもねえ……


「トモカズ様、いらっしゃいますか?」


 俺が項垂れていると、部屋の外から声が聞こえてきた。


「ああ、いるよ。入って来い」


 扉を開けて入室した人物はユージスだった。


「グラハムさんは帰られたそうですね。トモカズ様、皆が待っていますが……もう会議はお開きにしますか?」

「……」


 ……そういやこいつ、領城にしょっ引かれた事があったっけ……

 あの時は、パーシヴァリーのスキルで脱出を果たしたんだよな……


「……」


 ……ん……?


 俺はユージスの顔をじっと見据えた。


「ど、どうしたのですかトモカズ様……もしかして、私が何か粗相をしましたでしょうか……? でしたら直ぐにでも謝ります……」


 睨まれたと思ったユージスは泣きそうな顔になる。

 そんな彼を無視し、俺はより一層と考えに没頭した。


「……」


 ……あの時のユージスは何事もなく領城に入った。それは許可が下りたという事だ……

 ……だがその後に、パーシヴァリーがスキルを発動させてユージスに憑依した……


 ……普通に考えるなら、許可を得ていないパーシヴァリーの力が暴走するはず……

 ……しかしあいつはユージスの身体を乗っ取ったまま、何事もなく領城から脱出した……


 ……となると……


 俺に天啓が舞い降りた。


「……そうか……そういう事かよ……」


 俺はユージスを見たまま不気味に嗤う。


「お許しくださいトモカズ様! 私が悪うございました!!!」


 恐怖に耐えかねたユージスが、堪らず謝罪の言葉を口にした。


「でかしたユージス! 直ぐに会議を再開させるぞ!」

「えっ!? えっ!?」


 俺は狼狽えるユージスの肩を掴むと、急ぎ皆の元へと向かうのであった。






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