110.やっとみんなが揃いました
第四章、最終話です。
俺は三人の少女たちと共にバンジョーナ城塞へと帰還した。
精霊界に行く時と同様、帰るときも一瞬であり、気づいた頃には元の部屋に戻っていた。
「……」
……外は暗いな……一日くらいか? 留守にしてた時間は……
おもむろに部屋の中を見渡してみる。
「誰もいない」
それでも燭台に火が灯っているところからして、先ほどまでは人が居たようであった。
「……」
……まだ明かりが付いているから、ここで待ってれば誰かが戻って来るのか?
俺は三人に視線を向ける。
セラーラとピアは微笑みながら俺を見ていた。
方やキャロラインはぼーっとしており、普段の眠たそうな眼がより一層と眠た気になっている。
「……」
そりゃそうなるわな。
昨日は誓約するために電撃を流され、三本も注射を打たれ、廃人にさせられ、精霊界に言って散々馬鹿にされ、その後は地獄のような光景を見せつけられた。
疲れるなという方が無理な話だ。
「主様、姉妹たちは何処にいるのでしょうか?」
不意にセラーラが言葉を発し、それにピアが続く。
「わたくしたちの所為で皆様に迷惑をかけてしまいました。直ぐにでも誤りたいのです」
「……」
そうだよな。早くパーシヴァリーたちに会いたいもんな。
「分かった。お前たちはここに居ろ」
俺は足早に扉へと向かった。
「主様、どちらへ?」
「何処に行かれるのですか旦那様?」
二人が俺に付いて来ようとする。
「良いからそこで待ってろ」
二人を制止させた俺は部屋から出ると、そこら辺を巡回している骸骨騎士を捕まえて、四人の乙女精霊を連れてくるよう命令した。
そして部屋に戻り、彼女たちとここで待つことにする。
「直ぐにパーシヴァリーたちが来る。さっき呼びに行かせたからな」
その言葉に二人は動揺を見せた。
「旦那様が先ほど退出したのは、誰かに指示を出すためだったのでしょうか? もしそうなら、そのようなこと、わたくしにお申し付けくださいませ」
「なりません主様。雑用は私たちがします。主様はゆっくりとしていてください」
「……」
……こいつら相変わらずだな……
「お前たちは目覚めたばかりだ。ここは俺の言う通りにして大人しく待ってろ」
……精霊界で嫌というほど暴れまくったからな……少しはじっとしててくれ……
「……主様はこのセラーラをそこまで心配なさってくださるのですね……」
「……旦那様の愛、深く感じます……ピアは幸せ者でございます……」
二人はうっとりと俺を見詰めた。
「……」
……それはそうと、キャロラインのやつ、限界みたいだな……
眠たいのを我慢している子供みたいに目をこすってるよ……
「キャロライン、お前は少し横になってろ」
「そうですね、キャロラインは頑張りました。寝ていても大丈夫ですよ」
「遠慮しないでくださいませ」
「……うん……」
キャロラインは気怠そうにベッドへ上がると、倒れるように横たわった。
そして数秒後には、穏やかな寝息を立て始める。
「もう寝てしまいました。よっぽど疲れていたのでしょうね」
「旦那様、セラーラさん。キャロラインさんの寝顔を見てくださいませ。何と可愛らしいことでしょうか」
俺たち三人はキャロラインの寝姿に相好を崩す。
そうしていると、廊下の方から何やら慌ただしい気配が近づいて来るのを感じた。
「おいでなすった」
扉が勢いよく開けられる。
「セラーラ! ピア! 良く帰って来たのだ!」
「会いたかったぞ! セラーラにピアよ! 我を心配させるでない!」
「セラーラちゃん! ピアちゃん! 無事でよかったよ! あのまま目覚めなかったらどうしようかと思ったんだからね!」
「お帰りなさい、セラーラお姉ちゃん! ピアお姉ちゃん! もう無茶はしないでください!」
四人の乙女精霊は満面の笑みでセラーラとピアに駆け寄った。
「……皆さん、心配かけてすみませんでした……」
「……ご迷惑をお掛けして申し訳ございません……」
六人は抱き合って互いに無事を確認する。
「……」
感動の再会だな……俺までうるっと来ちまうじゃねえか……
そこでユージスとフレイが部屋に入って来た。
「トモカズ様! 無事にセラーラ様とピア様を目覚めさせたのですね! おめでとうございます!」
「皆様が揃って私は嬉しく思います!」
彼らはセラーラとピアを見て自分の事のように喜んでいる。
「お陰様でな。お前たち夫妻にも心配をかけさせたよ。ありがとう」
その言葉に何故だか分からないが、二人は感銘を受けた。
「……何ともったいなきお言葉……」
「……私たち夫婦は幸せにございます……」
「……」
……最近のこいつらは俺を神のように崇めている……
……少し怖いんですけど……
「トモカズ、帰って来たんだ!」
いきなりティンクファーニが部屋に飛び込んできた。
その後ろから、クラリーサとスクウェイアとカセットラフが順次、入室して来る。
「目が覚めたんだな。良かったじゃないか、トモカズ」
「これで一息付けるな。お前さんもしっかり休めよ」
「……」
クラリーサとスクウェイアは俺に祝意を示してくれた。
そしてカセットラフだけは何時ものように黙って頷いている。
「……」
やっぱり無言だな。
と思っていると、急に重低音の声を響かせた。
「トモカズたちは疲れている。休ませてやれ」
乙女精霊たちは今もなお互いの再開を喜んでいる。
そんな彼女たちにカセットラフは配慮してくれた。
「そうですね、カセットラフ様」
「私たちが野暮でした」
「トモカズ、また明日ね」
エルフたちは素直に退出していく。
「トモカズ様、これは失礼しました。フレイ、僕らも行こう」
「そうですね、折角の再会を邪魔してはトモカズ様たちにご迷惑ですものね」
ユージスとフレイも気を利かせて部屋から出て行った。
「トモカズ、あとで食事を運ばせる。今夜は水入らずで過ごすがいい」
カセットラフもそう言い残し、皆に続きその場を後にした。
「……」
……何だよカセットラフの奴……余計な気遣いしやがって……
「……」
ありがとうカセットラフ!
「よし、今夜は俺たちだけで楽しく食事をしよう」
喜び合っていた乙女精霊たちは、俺の言葉に素早い反応を見せる。
「それは良い考えです」
「私も大賛成なのだ」
「素晴らしいです」
「うむ、再会を皆で喜び合おうぞ」
「久しぶりにみんな揃っての食事だね」
「この世界に来た最初の頃を思い出します!」
六人は一様に笑みを浮かべていた。
「もちろんキャロラインも一緒だ。何せ新しい姉妹だからな」
皆がキャロラインに目を向ける。
「主様、気持ちよく眠っています」
「起こすのがちょっと可哀想かも」
彼女は深い眠りに落ちていた。
「そうだな。キャロラインはこのまま寝かせてやるか」
そこで六人が恍惚とした表情でこちらを見詰めてきた。
俺も全員に温かい視線を送る。
「……」
やっとみんなが揃った。
ここからがドミナンテとの本当の勝負だ。
「……」
だが、それは明日からだ。
……今はこの時を大切にしよう……
次回からは週一投稿に戻らせていただきます。
ここまで目を通して頂き有難うございました。




