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101.待ち望んだ復活

 俺とキャロラインは、何とか精霊たちの悪意を凌いだ。

 そして再び歩みを再開させて、一本道をひた進む。


「あとどれくらいで着くんだ?」

「……一時間も掛からない……」


 そう言うキャロラインの足取りは重く、元気がなかった。


「どうした、まださっきの事を気にしているのか?」

「……」


 彼女は黙ったまま暗い影を落としている。


「……」


 ……ここはひとつ元気づけてやるか……


「何時までもくよくよ(・・・・)するな。そんな姿をパーシヴァリーたちにでも見られてみろ。どうなるか分かるだろう」

「!!?」


 その言葉でキャロラインの背筋がシャキンと伸びて、元気よく歩き出した。


「そうそう、それでいいんだよ」


 彼女の変わりように俺は自然と笑みになり、二人して気持ちを切り替え先を進んだ。






 歩くこと約一時間。

 キャロラインの予想した定刻通りに目的地へと辿り着く。


「……おお、これは凄い……」


 そこは森の中の開けた場所で、美しい花が余すことなく咲き乱れる花畑であった。

 その花びらは一枚一枚が七色に煌めいており、広場全体を優しい光で包み込んでいる。


「……幻想的で美しい風景だ……」


 あまりの美しさに思わず感嘆の言葉が洩れた。

 

「……ここは虹の広場と言われてる……」

「虹の広場か……凄いところまで来たもんだ……」


 花畑に魅入っていた俺は、ふと引っかかりを感じる。


「そういやフランワージュたち、あいつらもここへ来てたのか?」


 森の中は一本道だったから、広場に来ていたのは間違いない。


「……虹の花は香りが良い……紅茶とかに入れると香りが引き立つから、摘みに来たんだと思う……」


 そうなのか。俺も虹の花を入れた紅茶を飲んでみたいな……


 と、余計な考えはここまでにしとこう。

 今はもっと重要なことがある。


「セラーラとピアを復活させるぞ」


 俺は慎重に二人を降ろす。

 そこは虹色の花が最も乱れ咲き誇っている場所であり、彼女たちを柔らかく包み込んでくれた。


「キャロライン、これからどうするんだ?」

「……香りを嗅がせるだけ……」


 キャロラインは一凛だけ虹の花を摘むと、セラーラの整った鼻にそっと近づける。


 するとくっきりとした彼女の瞼が徐々に開かれていった。


「セラーラ! 俺が分かるか!!?」


 俺は思わず至近距離で彼女の顔を覗き込む。


「……あ……(あるじ)、さま……?」


 可憐な口元から澄んだ声が紡がれた。


 よっしゃあああああああああああああ!!!

 セラーラの意識が回復したぞぉおおおおおおおおおお!!!


「……ここは……どこなのですか……?」


 彼女はゆっくりと起き上がりると周囲を見回す。


「ここは虹の広場だ」

「……虹の広場ですか……奇麗な場所です……」

「そうだな、綺麗なところだな……」


 よし!!!

 セラーラは完全に目を覚ました!!!

 次はピアだ!!!


 俺は白髪の美少女に視線を移す。


「待ってろよ、直ぐに起こしてやるからな」


 焦燥感に駆られた俺は、虹の花を束ごと引っこ抜くと、彼女のすらりとした鼻先に近づけた。


「ピア、これを嗅ぐんだ」

「……う……ん……」


 心地よい香りがピアを深い眠りから解放していく。


「……旦那様……いつ見ても素敵なお顔です……」


 目を覚ましたピアは柔和な笑みを浮かべ、徐々に体を起こした。


 やった!!!  

 ピアも目を覚ました!!!


 俺は嬉しさのあまり、反射的に彼女たちを抱き寄せ熱い抱擁をする。


「……あ、主様……どうなされたのですか……?」


 セラーラは顔を真っ赤にさせて恥ずかしがるが、満更でもないようで頬が緩んでいた。


「……旦那様……遂にわたくしと契りを交わしていただけるのですね……」


 ピアは何か勘違いをしている。


「……」


 ……セラーラもピアも相変わらずだ……


 俺は彼女たちを強く抱き締めた。


「……」

「……」


 二人も俺の気持ちに気づいたのか、黙って身を委ねている。


 そして数分ののち、セラーラとピアの存在を十分に噛み締めた俺は、彼女たちを解放した。


「……あ……」

「……もう終わりなのですか……?」


 二人は名残惜しそうに俺を見ている。


「……」


 よし、感傷に浸るのはここまでにしとこう。

 今まで起こった出来事を二人に説明しないとな。






「……主様……申し訳ございませんでした……常に冷静であるべきはずの長女たる私が、後先考えずに行動してしまいました……」

「……旦那様……お許しくださいませ……旦那様の魅力にどうしても抗う事が出来ませんでした……」


 来た道を戻りながら、俺は彼女たちが眠っていた間の経緯を話してやった。

 その後はしっかりと説教をしたから、今こうして二人は反省をしているという訳だ。


「分かってくれればそれでいい。今後は気を付けるんだぞ」

「はい。そのお言葉、しっかりと胸に刻み込んでおきます」

「二度とあのような真似は致しません」


 うんうん、素直でよろしい。


「ところでだ。話は変わるがさっきも言った通り、キャロラインがお前たちの姉妹となった。仲良くしてやってくれ」


 二人はキャロラインに柔和な笑みを向ける。


「キャロライン、よろしくお願いしますね」

「キャロラインさん、困った事があれば何でも言ってくださいませ」


 美少女二人の言葉に彼女は体を硬直させた。


「……はい……セラーラお姉さま、ピアお姉さま……」


 キャロラインのやつ、緊張してるよ。


「可愛いですね。これから私が色々と教えてあげます」

「恥ずかしがる必要はありません。わたくしたちは姉妹なのですから、遠慮なく甘えてくださいませ」


 二人もキャロラインを受け入れた様だ。

 仲良きことは美しきかな。


 ……でも、キャロラインの方が遥かに年上なんだけどね……


 それから彼女たちは談笑を始めた。

 後ろからついて歩く俺は、三人の微笑ましい姿に相好を崩すのであった。






 それからしばらく歩き、気づいた頃にはもう森から出ようかと言うところまで来ていた。


「……」


 そろそろだな……


「話の腰を折るようで悪いが、セラーラ、ピア」


 俺の言葉に二人はピタリと足を止める。


「はい、主様」

「何でございましょう、旦那様」


 彼女たちは速攻で応え、次に俺が何を言うのか目を輝かせて待っていた。


「もうすぐ森を出る。お前たちは隠蔽(ハインディング)スキルで身を隠して付いてくるんだ」


 その言葉に二人は可愛らしく首を傾げる。


「どうして隠れる必要があるのですか?」

「何か問題でも……? 差し支えなければ教えて頂けますでしょうか」


 俺は腕を組みながら口を開いた。


「ここの精霊はお前たちを人間として見ている。人間は誓約者でしか精霊界に入れないから、他の精霊に見られると説明が面倒だ」


 マーシェリが二人に興味を示したからな。

 あいつはセラーラとピアを人間だと思い込んで誓約者だと勘違いした。


 実際のところ二人は精霊だから、そこを突っ込まれると余計厄介なことになる。

 何せ着ている服も違うし髪もピンク色じゃない。

 根掘り葉掘り聞かれるのは火を見るよりも明らかだ。


 それに、だ。

 ただでさえキャロラインは難癖を付けられやすい。

 絡まれる要素を少しでも減らしておかないと。


「分かりました、主様」

「旦那様、畏まりました」


 返事と共に、二人の姿が背景に溶け込んでいく。


「……え……?」


 突然の事で、キャロラインは驚き目をぱちくりとさせた。


「安心しろ。セラーラとピアは俺たちの直ぐ傍に居る。姿を隠しているだけだ」

「……そ、そうなの……?」

「ああ、そうだ。こっそり後を付いてくるから、何の心配もいらない」


 そう言った俺は足早に歩みを再開させる。


「さっさと神官長に会ってバンジョーナ城塞に帰るぞ」

「……う、うん……」


 キャロラインは慌てて俺の後を追った。






 当分の間、俺たちは広大な花畑を進み、今は黄色の花で埋め尽くされている緩やかな高台を上に向かって歩いていた。


「ここを越えた先に精霊神殿があるんだな?」

「……うん……」


 俺はキャロラインから神官長の話を聞いた。

 そいつはこのフェレーアンの庭を取り仕切っている精霊たちの長で、精霊神殿という所に居るらしい。

 神官長はそこで誓約精霊が連れてきた誓約者に激励を贈り、二人の門出を祝うそうだ。


「……」


 ……それは良いとして、森を出てからここまでの間、非常に不愉快な思いをした。

 擦れ違う精霊すべてに嫌というほど陰口を叩かれたのだ。



 いや、陰口じゃないな。

 わざと俺たちに聞こえるように言っていた。

 キャロラインは役立たずで無能だの、誓約者の俺もゴミのような人間だの、散々だった。


 お陰でセラーラとピアの機嫌が悪くなっていくのを背後からヒシヒシと感じたよ……

 あいつらを宥めるのは苦労するんだからな……

 

 まあ、因縁を付けられなかっただけでも良しとするか。


「……見えた……」


 先を歩いていたキャロラインが、いち早く頂上へと辿り着いた。

 続いて俺も高台に登り、そこからの景色を一望する。


「絶景だな」


 美しい広大な花畑が俺の視界に飛び込んできた。

 その中に、小高い丘が一つだけ存在し、頂きには巨大で荘厳な建物が鎮座している。


「あれがフェレーアンの精霊神殿か。想像以上に凄いな」


 それは幾つもの大きな円柱に支えられた神殿で、神々しさが感じられた。


「みんな、行くぞ」


 俺は三人と共に意気揚々と精霊神殿に向かった。






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