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第8話:初めての報酬

どもどもべべでございます!

なんとも物語のペースはスローリィに進んでございますが、個人的には時間が一気に飛ぶのは控えめにしたいのです(苦笑)

これからも、宿屋の描写や今後の話など、冒険に関係ない話が続くかと存じますが、むしろそっちに力いれてますが! 平にご容赦お願いいたします!

という訳でご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~

 

 日が落ち、夜の帳が下りる。

 グランアインの町は、一部の高級住宅街だったり、各ギルド付近には魔法ランプが点灯しているが、基本的には光源など無いに等しい。

 故に、夜の時間帯となれば自ずと人はいなくなる。せいぜい、油を指したランプ片手に周囲を見回る衛兵か、一日の終わりに甘美な安酒をあおる野郎共くらいなものだろう。


 だが、その暗がりの中であろうと衰えない活気を放つ場所が、酒屋と娼館以外にも存在する。

 それがここ、冒険者ギルドである。

 夜にしか受けられない依頼の為に、メンバーの待ち合わせ場所に使うパーティもいれば、酒に酔ってふらりと立ち寄り、椅子を占領してイビキをかく奴もいる。


 冒険者達の心を僅かでも癒やさんと青々茂る、健気な観葉植物に水をあげる受付嬢も、深夜のシフトは当然のように存在していた。

 勝手知ったるというのは非常に居心地が良いのだ。故に、ここから人がいなくなるという事態はそうそう無いと言っていい。

 そして俺たちもまた、そんな冒険者ギルドに足を運んでいた。


「はい、こちら報酬の銀貨40枚です! お納めください♪」


「おぉぉぉ……!」


「……フスゥ」


 俺とハノンの目の前には、10枚一括りで筒状になった入れ物に入った銀貨が差し出されている。

 新人が一人で稼ぐには、中々に凄まじい額だというのは想像に難くない。俺もぶっちゃけ、全額は無理だろうと思っていたしな。

 だからこそ、素直にこいつに感心しよう。この金は、間違いなくハノンの稼いだ金だ。


「いやぁ、町役場の職員さんが驚いていましたよ! まさか、あの依頼を一日でこなしてしまうなんて思わなかったと! しかも一人でっ」


「あ、いえ、その、一人という訳では……」


「ご謙遜しないでくださいよぉ。んふふ、ホント、痛快な思いをさせてもらいましたので。こっそり自分の懐からがめようとしてた分取り出してるの見た時にゃあ、腹がよじれそうになったもんさね」


 ふん、そんなこったろうと思ったぜ。

 この依頼は、役人にとってもいい小遣い稼ぎだからな。途中までしか終わらなかった分を少しだけ懐に入れて、役場には25とは別に一部達成報酬を払ったとか言ってごまかす奴がいるんだ。

 この確認作業は役人共通の仕事だからな。自分もおこぼれに預かりたくて告発もしない。暗黙の了解みたいになってる訳だ。

 しかし、今回はハノンの粘り勝ちだ。その役人には涙を呑んでもらうことにしよう。


「さて、ここに報酬があるんだが……どうするね坊や? この金を全部渡してもいいんだけど、ギルドで管理してもらうって選択肢もあるよ?」


「管理、ですか?」


『まぁ、貯金だな。冒険者カードあるだろ? あのカードに貯蓄情報を覚えさせて、財布を持たずに買い物できたりするんだよ』


「便利ですねぇ……」


『場所は限られるけどな。下町の市場とか、屋台とかは対応してねぇ。けど、冒険者御用達の宿屋とか、武具屋。神殿なんかでは問題なく使えるぞ』


 ハノンはしばらく考えた後、銀貨5枚だけを懐に入れることにして、後は全額管理して貰うことにした。中々クレバーな選択じゃないか。


「えへへ……僕の、お金……」


『おう、お前が稼いだ、お前だけの金だ』


「……ありがとうございます。これで明日、カイル達に串焼き買ってあげれる……」


 ふわりと花が咲いたような笑顔じゃないか。見てくれが可愛らしいだけに、絵になる光景ではある。

 待ち合わせをしていたであろう女性冒険者が、じっくりと生暖かい視線を向けるくらいだからな。というかアイツ、朝も見てなかった? え、怖……。


「あ、そ、その。できれば、この辺で情報屋さん、とか、いませんか?」


『あ? 情報屋か』


「は、はい……この国から、東にある土地について知りたくて……」


 ふむ、東の土地か。極東の島国とかは聞いた事あるけど、俺個人は詳しくないな。

 とはいえ、情報屋ねぇ……うん、いるにはいるんだが、今のハノンに合わせたくはないな。後ろ暗い連中だし、なんの準備もない幼い少年に向かわせる場所じゃない。

 せめて装備を整えて、冒険者として最低限の経験を積んでから紹介した方がいいだろう。

 その意思をハノンに伝えると、ハノンは素直に従ってくれた。自分がどのくらいの実力なのかを、ちゃんと把握してくれいるようである。なによりだ。


『ま、それよりお前は、湯に浸かって臭いを落とせ。沁みついてるぞ?』


「っ……ヴ、ヴォルさんだってそうじゃないですかぁっ」


『おうよ。だから契約獣として正当なケアを所望する!』


「あ、あうぅ……宿代、いくらくらいするんだろう」


 んはは、そうそう悩め。手持ちの資金と市場しじょうの金額を比べ、いかに自分が得をしていくかが生きるコツだ。しかしまぁ、こいつは今日俺の予想以上に頑張ってくれたからなぁ……何かしらご褒美をやってもいいだろうさ。

 俺はパメラに目配せする。するとパメラもそれを察したようで、一枚の紹介状を取り出してくれた。


「坊や、宿屋ならここを使うといいさ」


「ふぇ? ……【竜の息吹亭】?」


「坊やみたいな、どっか訳ありで冒険者やってる子にはお勧めの宿屋さね。色々口が堅いのさ」


「へぇ……一泊で、いくらするんです?」


「安心しなよ。既に20日分、三食付きで支払われてるからさ」


「!?」


 よしよし、アルバートがちゃんと手配してくれてたみたいだな。

 竜の吐息亭は、この町で最も信頼の置ける宿屋である。

 元冒険者の旦那と肝っ玉母ちゃんが営むその宿に泊まることは、冒険者として一種のステータスと言ってもいい。徹底した個人情報厳守を貫く、安心と信頼の揺りかごだ。


「え、ぁ、その、なんで、え?」


「そこの兎の粋な計らいさ。乗っかっておきな?」


「ヴォル、さん?」


『……俺の事がばれない為に、しっかりした宿屋を選ぶ必要があっただけだよ』


「で、でも、ヴォルさんの貯金は、使えないって……」


 まぁな。本来、俺の生前の金はもう使えない。

 なぜなら、俺の死体の腐食防止と蘇生、そして精神入替が可能な魔法使いの捜索に使われるからだ。

 ギルドには余裕がないからな。自分の為にもそこは渋っていられねぇ。


 しかし、俺にも一枚だけ切れる手札がある。俺の頭ん中にしかない、とっておきの情報だ。

 ズバリ、死ぬ前に受けていた依頼。ソロ冒険者しか狙わないモンスターの情報である。

 こればかりは、俺に教えてもらうしか情報がない訳だからな。つまり、契約獣である俺が握っている情報は、ハノンの手柄って訳だ。


 これをネタにしてアルバートに話を通し、この竜の吐息亭に滞在する金を、依頼報酬で賄ったのさ。仮にハノンが25枚しか銀貨を稼げなかったとしても、この保険は生きていただろうし、ハノンの金が浮くことは良い事だしな。


「そうだったんですか……ありがとうございますっ」


『まぁ、頑張ったご褒美みてぇなもんだな。さっさと行って体を休めようぜ? 限界だろお前』


「っ……は、はぃっ」


 なんかハノン、感極まって泣きそうなんだけど……やめてくれ。オジサンそういう少年の涙とか間近で見たくないお年頃なの!

 なんかむず痒い感じになっちゃうの!


「クック、しっかりお礼してあげなぁ? 角兎は首の付け根をコスコスしてあげると気持ちいいらしいよ?」


「は、はい! 宿屋でいっぱいしてあげますね?」


「フシッ!? フ、フスッ!」


 いいから! そういうのいいから!

 なんか背徳感とかそういうの感じちゃうからぁ!?

 

ハノンくんの目的や、パーソナルについて少しだけ触れています。

とはいえ、東の情報を知りたい、くらいですが。

大筋に変更はございません。よろしくお願いいたします。

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