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世代交代  作者: 砥左 じろう
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バックネット裏の思惑

俺、志多見淳はフェニックスのスカウトをしている。

ただここに至るまでは決して順風満帆ではなかった。

35歳で現役を引退し、その後富山の独立リーグで監督として3年間采配を振るって、昨年から古巣フェニックスのスカウトに就任したのだ。

今だから言えることだが独立リーグで過ごした3年間は本当にシンドかった。

担当は主に関東の中学生なのだが、将来的には高校生のスカウトをするのが目標だ。


投打に渡って躍動する彼を何としてもうちのチームに加えたいけど、まだ数年先の話なのか……。

現在、我がフェニックスは首位にいる。その主な理由となっているのが主力選手の大半が20代半ばで年齢的には1番活躍が見込める時期だからだ。

だが5年後には多くの選手がピークを過ぎて下降線を辿り始めることになるだろう。

それにFAで移籍の可能性を持つ選手が続出することになる。

何人かは引き留められるだろうけど、全員はまず無理だろう。

俺はその時を迎えることを見据えてスカウトしていかなくてはならない。


もちろん全てが予想通りに成長するとは限らないが、少しでもプロ野球選手として活躍しそうな可能性を見逃さないようにしていくつもりだ。

一条昴の他にも支倉シニアにはいい選手がたくさんいるので、単なる強豪としてだけでなく逸材の宝庫としても知られている。

今年の3年生で言えば間違いなくキャッチャーの能勢拓哉とピッチャーの小田嶋零はいい。

あと気になるのがセカンドの本多璉とファーストの板谷宗一郎。彼らも今後の成長次第では非常に楽しみな存在であるので注目はしている。


ただ、最も充実しているのはその下の学年だと春に食事を共にさせてもらった際に監督の中野さんに言われた。

何でも、支倉シニア史上最高のメンバーだと胸を張って言い切れるほど充実しているのだという。

と言うのも、ショートの畑下颯馬、レフトの富岡倭、キャッチャーの迫田守、ライトの蓬莱巧、サードの佐藤誉、ピッチャーの松原俊、そして言わずもがな一条昴と、非常に充実した陣容となるのだ。

もちろん今年も楽しみだが、来年はもっと楽しみだと監督は語っていた。


特に評価していたのが捕手の迫田守だった。彼に関しては我々スカウトの間ではあまり話題に上ることがなかったので意外だった。

なぜ、あまり知られていないのかと言うと能勢という存在が大きすぎて出番が少ないからだ。

だが、監督の評価によると守備面では能勢より迫田のほうが明らかに優れていると断言するほどいいらしい。


その理由は何なのか?彼の父親が元プロ野球選手の迫田哲也捕手だったからで、指導の賜物なのか遺伝なのかは分からないが、彼はすでにプロ野球選手顔負けのフレーミングとスローイングを持っているのだ。

因みに彼の父親は現在セイレーン2軍のバッテリーコーチを務めているという。

能勢の存在が大きすぎて打撃に課題があると言われがちだが、中学2年生としては十分だたし、能勢がいなければ間違いなくレギュラーに抜擢していただろうと語っていた。


試合はすでに3回を終えたところで11対0となっていた。完全なワンサイドゲームだ。しかも一条昴はノーヒットノーランを継続中だ。

さっきの回に1つ四球を与えてしまったのは残念だったが十分な投球内容だと思う。

コールドゲーム成立で最終回になってしまう可能性のある4回の表、遂にあの選手を観る機会が訪れた‼


「キャッチャー能勢くんに代わりまして迫田くん」

場内アナウンスに戸惑うお客さんをよそにその選手はマスクを抱えて一条昴と共にマウンドへ向かい話し込んでいた。

ほーぉ。彼が迫田守か。どんなプレーを見せてくれるのか楽しみだな。


初球、高めへのストレート。一瞬抜け球かと思ったが意図的な配球だった。結果は空振りだった。

2球目はアウトコースやや甘めのストレートだった。今度は見逃しで簡単に追い込んだ。

そして今の球が今日最速の136kmだった。

最後は低めへの得意の縦カーブで空振りの三振に斬って取る。

印象に残った2球目の攻めは、絶対に打ちに来ないと分かっていたからわざと一条がストライクを取りやすいところに投げさせたんだなと思う。

それだけでもかなり鋭い洞察力の持ち主であることが分かる。

その後も最後の抵抗をしようとする相手の打者に慈悲の欠片も感じさせない投球で試合を締め括った。

迫田守か。リードの上手さに加えに一条への返球も驚くほど正確だったな。

こりゃあ帰ったら上層部に伝えなくてはならないな。

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