表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世代交代  作者: 砥左 じろう
85/92

Twitter

 お盆に入っていたが残っている仕事が山ほどあって、放置したままにするのは気分が悪いので、片付けたいと思い出勤して1人黙々と業務をこなしていたが、ひと段落したので席を外してTwitterを開いて現在の状況を見ようとトレンドをタップすると、1位に『一条昴』と入っているのが見えた。

 しかも5位に『一条司』とある……。何かあったのだろうか?

 やましいことをしているような気持になりながらも好奇心に抗えず、1番上に表示されている投稿を見てみる。

 画像じゃなくて動画?なんだろ?

 それは公式のマークが表示されたフェニックスカップのアカウントで、決勝戦の映像だった‼︎

 動画の中でセンターを守っている昴くんが驚異的な送球を見せていた。結果はサヨナラ負けだったけど……。

 これは…何か言葉をかける間柄でもなければ、必要性があるわけでもないのに、どこか気不味さを覚えてしまう。

 このプレーで勝敗が決まってしまったけど、凄いと繰り返し口にしていた。


 司はこの試合を観に行っていたんだろうな。

 とか考えているうちに気になってしまった私には引き返すという選択肢が浮かばなかったようで、気付いたら次々と関連する投稿を読み漁るという痛い行動に走っていた……。

『一条司』に関する投稿内容も息子の昴くんに負けず劣らず多くて、テレビ画面に数回映り込んだその姿からかつての甲子園を沸かせたアイドルの現在の姿を目ざといネット民が見逃すことなく発見し、投稿したところこんなに拡散してしまったようだ。

 私からしたら毎週見ているので、レアな人を見たような気持ちにはならないけど、世間は違うんだなと思う。


 昔の司本人のことは基本的に知っているので特に新鮮に思うところはないのだが、『奥さんが美人』という内容の投稿には猛烈に引き寄せられてしまう自分がいる……。

 司は秘密主義なわけではないと思うが、あまり自分の周囲のことについては話してくれない。

 転職してきた理由を訊いても「上司が嫌いだったから」なんて笑いながら冗談で返すだけで、真剣に答えてはくれなかった。

 それでも、本当の理由が昴くんにあるのは明らかなので深掘りはしなかった。


 歓迎会で奥さんについて聞かれてときも「専業主婦です」としか答えていなかった。

 そのさっぱりとしすぎた回答からは、これ以上奥さんに関する会話を広げる糸口を与えたくない、という司の意思が感じられた。

 それを周りも同じように感じたようで、踏み込めなくなり話題を変えたことをよく覚えている。

 昔はそんなに閉鎖的な人ではなかったと記憶しているが、彼の浴びてきた脚光を思えば、不用意に口を滑らせて家族の情報が漏れることを恐れてそうしているのかもしれない。

 決して人を信用していないわけではないが、所帯を持って以降家族を守る為にそういうスタンスで接するようになったのだろう。

 なので、この間初めて奥さんを見るまで美人であんなにスタイルがいいことも知らなかった。

 まぁ、「奥さん、スタイル良いの?」なんて訊けば一発退場の時代なので会ったことがなければ知らないのが普通だろう。顔を訊かれるのでも嫌悪感を示す人もいるくらいだからね……。

 改めて画像を凝視する。確かに美人だし敗北感が凄い…でも私がブ、なんじゃなくて奥さんが美人なだけ‼︎そう思っていないと何かに当たってしまいそうな気がした。

 一度だけ街中で見かけたことはあるが、ただスラッとして背が高いモデルさんみたいというよりは、男の子の外遊びにも応えられるアスリートのような体格だったことを思い出す。

 奥さんも昴くんたちの子育てをしていく過程で逞しくなったということなのだろうか?


 当たり前ではあるが、スクロールする度に2人に関する家族情報を含めた数々の投稿が私の目に飛び込んでくる。

 その中でも一際私の目を惹いたのが…『早ければあと2年後には一条司の遺伝子を受け継ぐ者が、再び聖地甲子園の舞台に現れるのか……。早いもんだなぁ』

 というおそらく私と近い年代のおじさんと思しき投稿だった。

 近い年代の人をおじさん、おばさんと思っていること自体、私がおばさんであることの証だ。

 そうか、もうそんなに月日が流れていたのね……。


 休憩から戻り雑務を終わらせた私は休憩室の自販機で150円のコーヒーを買って飲みながらスマホを見ていたが、飲み終えると息子の良太のことを考え出していた。

 仕事に明け暮れる日々で忘れていたけど、来年には良太も受験生だ…。

 特別な才能を付与してあげることができず申し訳ない気持ちはあるが、親として経済的な不自由はさせていないので許してもらいたい。


 このあとは駅前で大学の同級生たちと会うことになっている。

 それぞれキャリアは大きく異なるが、3人とも家庭を持ち子供がいることが共通点となっているので、今日まで関係性を保てているというのが私の見解だ。これはこれで子は鎹と言えるのではないか?

 時間がきたのでオフィスをあとにして、今がピークでこれからは気温が下がると願わずにはいられないほどの暑さの中、約束の場所へと向かう。

 お盆なので普段より人気は少ないが、それでも暑いことに変わりはない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ