世代交代

サラブレッド

初球はアウトコースへの１３５kmだった。

手元のスピードガンで一条昴の球速を測っている俺をはじめとするスカウトたちが、その球速に驚いている。

しっかし驚いたな。彼のことは以前から知っていたしずっと注目し続けてはいたが、春に見た時よりもまた一回りデカくなったな。

彼に関する情報を振り返るため手元のノートパソコンを開いた。

一条昴。身長177cm。体重66㎏。左投げ左打ち。最速は137キロで球種は縦のカーブとチェンジアップ。父親は元甲子園のアイドルで母親は元実業団バレーの選手。

アスリート夫婦の間に生まれ育ったサラブレッド。野球界の王道を歩むことを約束された天才。そういった表現がよく似合う選手であることは間違いない。

父親そっくりの美しい投球フォームから放たれる速球に誰一人かすりもせず攻撃は終わった。

1球も変化球を投げなかったな。相手を見下してるのかな？可愛い顔してるくせに強情そうな一面があるんだな。

投手にはそういう性格が望ましいって言われることも多いし、そういうところも含めてやっぱりいい投手なんだな。

おっ、今度は打席か。

先週の試合の映像ではホームランを打ってたし、打者としてのセンスも間違いなくある。

ボールの見送り方もいい。

2球目をセンター前に弾き返し出塁した。

投手が無理になっても野手としてやれるだけの素材の良さを感じる。