表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世代交代  作者: 砥左 じろう
79/92

スカウトの眼

先頭の拓哉さんは三振した前の打席とは違い、慎重にボールを選びその中で粘りを見せていた。

カウントは2ストライク3ボール。長谷川さんとしても先頭打者への四球は避けたいはずだ。

キィーン‼

静かなドームに快音が響き打球はワンバウンドで右中間フェンスに直撃した。打ったのは多分横のスライダー。

軽打でカットしていたのは、球筋をしっかりと脳裏に焼き付けるためだったのか。なるほどね。

0アウト2塁。この試合初めて良い当たりが飛び出して生まれたチャンス。

ここで追いつけないと俺たちの勝利は厳しくなりそうだ。


打席のトミーは普段通りのスイングで長谷川さんに向かって行ったがスプリットに空振り三振だった。

それでも今の打席だけで6球投げさせたことには価値があると思う。

おかげでなんとなくだけどタイミングはつかめた気がする。


支倉シニアが初めて迎えたこのチャンスをモノにできるのか?

俺、フェニックスのスカウトである志多見淳と他球団のプロ野球関係者スカウトたちは静かに見守っていた。

長谷川に対してタイミングが合っているように見えるのは能勢と一条しかいない。

そしてその能勢が初めてのチャンスを作り出した。

前の打席で詰まらされているにも関わらず、対応してくるあたりはさすが全国トップクラスの選手だ。


問題はここの一条だ。初めてスプリットを投げた相手がこの一条だったが、プライドの高そうな長谷川としては本当はスプリットを使わずに抑えるつもりだったように見えた。

だけど使わざるを得なくなった。つまりバッテリーは一条のことを警戒している。

さっきの打席で見せたスプリットにどう対応するか?

おそらくピンチのこの場面でも投げてくる可能性が高い。


「6番センター一条くん」

とウグイス嬢のキレイな声でコールされ気分よく打席に立つ。

マウンドの長谷川さんはこの回かなり心身共に疲労感を感じているはずだ。

それでも動揺が表に出ないのは立派だ。


狙うなら……初球のこのカウントを取りにくるスライダーを……だが、外れてボールとなったので見送った。

スライダーの軌道はイメージしていた通り。

2球目にスプリットがきたがこれにも手を出さず見極めた。


すごいな、この子……。長谷川クラスのボールをしっかりと見極めている。

そして3球目のインコースへのストレートに迷いなくバットを出した。

完璧に捉えた打球が一塁側を襲う…がファースト喜連の正面を突くライナーで2アウト。

歓声が沸きかけたドームに沈黙が生まれる。

7番の藤田が見逃し三振に倒れて、このチャンスをモノにはできなかった。

終わった……。

俺を含んだほぼ全員が同じ感想を抱いたに違いない。

このまま進むと残り2回で最後の打者は能勢か。

長谷川の状態に変化がないようなら決まりだな。


それに支倉のエース小田嶋はそろそろ限界だろうから、継投に入る。

2番手で投げるピッチャーが無失点で攻撃に望みを繋げられる確証もない。

俺の見立てでは8対2では世良が優勢だ。余程のことがない限りこのまま優勝は決まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ